近日、雲南省昆明市の第一人民病院が「1日で31件の人体臓器移植手術を実施した」と大々的に発表しました。この事は中国国内で大きな議論を呼んでいます。病院側は、これらの臓器がすべて「若い脳死ドナー2名」から提供されたものだと説明しています。しかし、この「異例の記録」に対して、ネット上では強い疑問が噴出し、「背後に中共が長年批判されてきた強制的な臓器摘出が潜んでいるのではないか」と指摘する声が相次いでいます。
報道によると、この大規模な移植手術は11月6日の午前8時から深夜0時まで、約16時間連続で行われました。病院は30以上の診療科と100人を超える医療スタッフを動員し、肝臓、腎臓、心臓、角膜などを含む31件の移植手術を完了したといいます。肝胆膵外科の趙英鵬主任は、提供された臓器は「不慮の事故で脳死となった2人の若者」からのもので、2つの心臓、4つの腎臓、2つの肝臓、複数の角膜や軟部組織が提供され、計11人の患者が救われたと説明しました。さらに、「手術の準備は1週間前から進めていた」とも述べています。
しかし、まさにこの「1週間前からの準備」という点が、最も大きな疑問として注目されています。海外の中国人権弁護士・呉紹平氏は、「脳死は予測不能の事であり、発生時刻も人数も事前に把握することは不可能だ」とした上で、「一週間前に準備できるということは、ドナーがすでに確保されていた。つまり人為的に管理されている可能性を示す」と強い懸念を示しました。
近年、中国では脳死判定の件数が急増しており、軽い病気や交通事故で入院した若者が突然「脳死」とされ、短時間で臓器摘出に進む事例が相次いでいます。家族が納得できないまま手術が進められるケースもあり、社会不安の原因となっています。こうした流れから、「脳死提供」という説明に対する、実際には強制的な臓器摘出を覆い隠すための、名目なのではないか、という疑念が絶えません。
中共による臓器強制摘出の問題は、すでに20年近く国際社会で議論されてきました。2006年には、法輪功学習者が臓器を摘出されていたとの証言が複数の証人から提出され、軍関係者や病院が関与していたとされています。以降、各国議会や国連の特別報告者が調査を続けてきました。
2017年には、中国中央テレビ(CCTV)が、臓器分配システム「COTRS」は「数秒でマッチングできる」と誇らしげに紹介しました。しかし、一般的な自発的ドナー制度では絶対に不可能な速度であり、異常な供給源の存在を逆に裏付けるものだと、海外の専門家から強い批判が寄せられました。
同時期、中国全土で行方不明者が急増していることも問題視されています。統計によれば、今年10月の22日間だけで107人が失踪し、最年少は5歳でした。これは公表されている数字にすぎず、把握されていないケースはさらに多いと見られています。
元中共高官の子息であるエリック氏は、「中国で失踪した青少年の多くは、臓器目的で殺害されている」と証言し、「若い臓器は価値が最も高いため、国家レベルで組織的に行われている」と述べています。
本来、医学の根幹にあるべき「生命の尊厳」と「自発的な提供」という原則は、民主国家では当然の倫理基準とされています。しかし、中国では権力構造そのものが不透明であるため、医療倫理が制度として機能せず、「治療のための医学」が「利益のための臓器産業」へと変質してしまっています。国家が真実を隠しながら臓器を取引する構図は、人権問題の範囲を超え、人間性と社会文明の崩壊そのものだと言えます。
今回の「1日に31件の移植」は、氷山の一角に過ぎない可能性があります。その背後には、中国の医療制度だけではなく、中共体制に内在する構造的な闇が横たわっています。「脳死」という名目の下で、どれほど多くの命が静かに消されているのか──裁判も記録もなく、ただ痕跡も残さず消えていく現実があるのです。
さらに最近、復旦大学の黄有光教授が「臓器提供をデフォルト同意制にすべきだ」と主張したことも、国民の不安を増大させています。これは、生前に明確な拒否をしていない限り、死亡後は自動的に臓器提供者として扱われる制度です。この提案はSNSで瞬く間に広まり、「国家が国民の臓器を自由自在に扱えるようになるのではないか」という強い懸念が広がっています。
デフォルト同意制は、透明性が十分に確保され、第三者による監視が機能している社会でなければ成立しません。しかし、中国のように情報公開が制限され、権力の集中が強い体制では、制度がそのまま国民の身体的権利の侵害につながる危険性があります。国民の身体は政策の実験材料ではなく、生命の尊厳は決して権力のために犠牲にされてはならないのです。
(翻訳・吉原木子)
