中国南部・広東省湛江(たんこう)市にあるドイツの化学大手バスフの統合生産基地で、最近、数百人規模の労働者ストライキが発生しました。請負企業による長期的な賃金未払いに抗議して、作業員たちは現場で一斉に作業を停止。当局は警察を派遣して復職を促しましたが、労働者たちはこれを拒否しました。関係先は大手国有建設会社とみられています。

 民間の労働権益団体の関係者は「企業が5か月間も賃金を支払っていないのは重大な違法行為にあたる」と指摘し、「労働者は労働仲裁制度を通じて法的に権利を主張できる」と述べています。

 近ごろ、中国各地で賃金未払いをめぐる抗議やストライキが相次いでいます。民間の監視プロジェクト「昨日」の統計によると、11月1日から4日までのわずか4日間に、全国で14件の製造業関連のストライキや集団的な賃金請求行動が確認されました。広東、浙江、江西、湖南、安徽、湖北など複数の省に広がっています。

 14件のうち1件は「賃金の差し引き」が原因でしたが、残る13件はすべて「長期的な未払い」が理由で、期間は2か月から最長1年に及ぶとされています。こうした状況は、企業の資金繰りの悪化と賃金遅配の拡大という中国経済の深刻な実情を浮き彫りにしています。

 広東省の弁護士・劉氏は『大紀元』の取材に対し、「今回のようにストライキや賃金請求が短期間に集中するのは、製造業の資金難を反映している。輸出注文の減少、融資制限、地方政府による工事代金の未払いなどが重なり、労働者の賃金リスクが急速に高まっている」と分析しました。

 報道によると、10月30日から31日にかけて、中国化学工程第十一建設有限公司(以下、中化十一建)が請け負うバスフ湛江統合基地プロジェクトで集団ストライキが発生しました。

 11月7日には複数の労働者がSNSを通じて『大紀元』に現状を訴え、「会社が5か月間も賃金を支払っておらず、生活が立ち行かなくなったため、やむを得ず作業を中断した」と語りました。

 湖南省出身のある工員は次のように話しています。
 「今回のストには、すでに退職した工員も加わっています。江蘇や河南から湛江に戻ってきて賃金を求めていますが、会社は『資金を集めている』と言うばかりで、5か月も経っても支払いがありません。仕事を続けてもお金がもらえないのです」。

 彼はまた、「地方政府にも何度も訴えましたが、誰も対応してくれません。最近になってようやく一部の給料が支払われたものの、下請け責任者の中にはすでに逃げた人もいる」と付け加えました。

 ネット上に投稿された映像には、青い作業服と黄色いヘルメットを着けた労働者たちが工場敷地内や会議室に集まり、「賃金を支払え」と声を上げる様子が映っています。警察が現場に入り、復職を促す姿や、管理側との口論の場面も確認されています。

 今回のストライキに関わる中化十一建は、中国化学工程集団有限公司に所属する国有施工企業です。

 ドイツのバスフが建設を進めている湛江統合生産基地は、中国における同社最大規模の投資プロジェクトで、総投資額はおよそ100億ユーロに上ります。2018年7月に計画が発表され、翌2019年に着工。バスフが独自に建設・運営を行い、中化十一建が主要装置の一部建設を担当しています。

 ある溶接工は「家に2人の子どもがいて、借金で生活を支えている。毎日、現場で上からの連絡を待っているが、『資金が下りていない』というばかりで、もう食べることさえ難しい」と訴え、「会社は何度も賃金を補填すると約束したが、まだ実現していない」と語りました。

 一部のネット利用者は「中化十一建の賃金遅配は今回が初めてではない」と指摘しています。外注や再委託の多層構造により資金の流れが滞りやすいとの声もあり、業界関係者は「この事件は大型建設プロジェクトにおける労務資金の逼迫を象徴しており、最もリスクを背負っているのは末端の労働者だ」と話しました。

 全国的に相次ぐ賃金未払いストについて、すでに当局により解散させられた深圳の民間団体「春風労働サービス関心グループ」の王氏は、「労働契約法第30条では、雇用主は賃金を期日通り全額支払う義務があると定められている。5か月の未払いは明白な違法行為だ」と指摘しました。
また、「請負企業が資金難を理由に支払いを遅らせている場合でも、労働者は労働仲裁を申し立て、労働・社会保障部門に通報することができる」と説明しました。

 王氏はさらに、「現実には多くの労働者が分包契約や臨時雇用契約を結んでおり、法的責任の所在が曖昧なため、賃金請求の難易度が非常に高い」と指摘しました。

 「こうした大型プロジェクトは、国有企業から民間企業へ、さらに下請けの労務チームへと再委託が繰り返される構造になっており、実際に賃金を支払う側が契約主体でないことも多い。そのため監督が行き届かない」と述べ、地方政府に対し、労働者保護のための特別基金を設け、賃金未払い問題の再発を防ぐよう呼びかけました。

 現時点で、湛江市政府およびバスフ中国法人のいずれも公式な声明を出しておらず、賃金の支払い時期についても説明していません。労働者たちは現場にとどまり、事態の進展を待ちながら、集団での法的措置も視野に入れているということです。

(翻訳・吉原木子)