中国各地で政府機関の食堂が「安くておいしい」と人気を集める一方、学校給食では子どもたちや保護者が「まずいか、もっとまずいかの二択しかない」と嘆いています。上海では業者が変わっても給食の質は一向に改善されず、腐敗肉や異物混入が相次ぐなど、保護者の怒りが高まっています。「まずい給食」の裏には、莫大な利権と管理の甘さが潜んでいます。

機関食堂は安くておいしい

 重慶市栄昌区(えいしょうく)にある「謎の機関食堂」が再びオープンしました。オープンのたびに長蛇の列ができ、10月1日から8日までの期間限定で一般にも開放されました。「少ない出費で幹部と同じ食事を体験できる。味も最高だ」と評判です。

 このような「政府食堂」は、10月上旬の大型連休中、各地で大盛況となりました。重慶市では、栄昌区の政府機関食堂に3200人が昼食をとりに殺到ました。ある観光客によると、3人で9品を注文してもたった約1200円(58元)しかかからず、一人当たりわずか約400円(20元)以下だったといいます。用意された約330キロ(550斤)のご飯と約150キロ(250斤)の煮込みガチョウはあっという間に売り切れました。

 同時期、湖北省黄岡市(こうこうし)や甘粛省敦煌市(とんこうし)の機関食堂も相次いで「ネット映えスポット」となりました。

 湖北省黄岡区委員会の機関食堂は10月上旬の連休中、一般に開放され、4品とスープの定食が約310円(15元)。さらに803台分の駐車場を無料で利用できました。政府の広報資料には「市民や観光客に温かさを感じてもらうため」と記されています。

 甘粛省敦煌市の機関食堂では約420円(20元)のビュッフェが提供され、メニューには温菜・冷菜18品、果物、スープ、飲み物、主食が食べ放題で、栄養バランスも完璧だと宣伝されています。

 皮肉なことに、こうした機関食堂が称賛される一方で、中国各地の学校食堂は「まずいか、もっとまずいかの二択しかない」とまで嘆かれるほど悲惨な状況に陥っています。

子どもたちの食事があまりにも哀れ

 9月15日、上海市の複数の小中学校で、緑捷(リュージェ)という業者が提供する給食においてエビと卵の炒めものが酸っぱい臭いを放ち、食べた生徒が次々と嘔吐する症状があらわれ、保護者の怒りを買い、メディアでも大きく取り上げられました。

 事件の後、上海の保護者は「どうか西貝(シーベイ)を学校に入れてください。少なくとも虫も髪の毛も、腐った臭いもしないはずだ」と請願しました。西貝とは、中国全土に展開する大手外食チェーンで、品質管理が厳しく「安心して食べられる店」として知られています。いまや調理済み食品(プリメード食品)でさえ「救い」とされるほど、状況は絶望的です。

 このようなまずい給食の問題は、実は十年以上も前から続いています。上海の学校給食に関する話題をネット上で探しても、「おいしい」と評価する声は一つもなく、不満と皮肉ばかりです。掲載された写真には、見た目も味も香りもすべて劣悪な料理が並び、まったく食欲をそそりません。

 この給食は1食あたり約370円(18元)で、政府補助約100円(5元)を加えると約470円(23元)の基準で提供されています。

 保護者の声:
 「上海のABメニューは『まずい』と『さらにまずい』の二択しかない。子どもは毎日満足に食べられない。うちの子は好き嫌いのない方なのに、家に帰るとまるで飢えたオオカミのように食べる」

 また、別の保護者もこう嘆きます。「まさか2025年の上海で、子どもたちがまともな昼食すら食べられないなんて」
 「あまりにまずくて、娘の学校ではABメニューを選ばない子が増えた。味の違いがあるだけで、どちらを選んでも同じ。肉が好きな子なのに、昼食には野菜だけ少し食べるだけ」

 その後、緑捷が使用していたのは、賞味期限が2年以上も過ぎた冷凍の「ゾンビ肉」だったことが判明しました。「1食約370円の給食だけど、原価はおそらく60円(3元)にも満たない」と、ある母親は試算しています。緑捷は1日あたり50万食を提供しており、食材を不正に削減することで年間約18億円(9000万元)もの利益を得ている計算になります。

 さらに皮肉なことに、ネットユーザーたちは緑捷と給食の品質検査を担当する会社が同じメールアドレスを使っていることを突き止めました。しかも、その検査会社の代表者は緑捷創業者の実の妹だったのです。つまり、「自社で作って自社で検査する」仕組みだったのです。

 9月18日、上游新聞の記者が政府の調達情報サイト「上海クラウドプラットフォーム(上海雲平台)」と「中国入札・応札公共サービスプラットフォーム(中国招標投標公共服務平台)」を調べたところ、2025年8月だけで、緑捷社は上海市内の22の小中学校および職業学校の給食サービス事業を落札していたことが判明しました。
同社の公式サイトによれば、緑捷社は主に学生向けの栄養ランチ事業を手がけており、市内16区にある600校以上の小中学校や幼稚園にサービスを提供し、1日あたり60万食以上を供給しているといいます。

光明集団が引き継いでも、子どもたちは空腹のまま

 上海の緑捷事件の発覚後、学校給食事業は上海市が出資する国有企業「光明集団」が引き継ぎました。保護者は「これでようやく安心できる」と思いましたが、その結果は変わりませんでした。

 10月の大型連休明けに学校が再開すると、黄浦区のある保護者が子どもに弁当を届けに行きました。すると、食堂のスタッフは光明集団の制服を着た職員に変わっていたものの、調理台に並ぶのは加熱するだけの食材ばかりで、以前とまったく同じ、「子どもが言うには、味も前と同じで、ご飯は相変わらず硬くて歯が痛くなるほどだった」と話します。

 静安区の母親は、子どもの昼食の写真をSNSに投稿しました。皿の上には、小さなじゃがいもの煮物が一切れと、わずかな青菜だけ。まともな肉料理は一つもなく、「以前の緑捷のときより量が少ない。子どもは家に帰ると、まずはどんぶりいっぱいの麺をかき込む」と嘆きます。

 メニューも業者も変わっていないのに、「全員が集団給食に戻るように」と通知を出す学校もあります。

 上海は中国でも最も近代的な都市の一つです。そんな都市で、子どもたちが望むのはただ一つ。お腹いっぱい、安全に食べられる給食です。それすら叶わないのなら、子どもの食を守る責任を果たしていると言えるでしょうか。

 では、なぜ学校給食がこうなっているのでしょうか。答えは簡単です。学校給食は想像以上に利益率が高いからです。

 もし子どもたちの給食すら守れないのなら、未来について語る資格はあるのでしょうか。

(翻訳・藍彧)