「最初に見たときは、まるで観光地の湖と山の風景だと思った。実際は洪水に囲まれた広西チワン族自治区百色市(ひゃくしょくし)の村だったんだ!」と、あるネットユーザーは述べました。

 ここ数週間、広西チワン族自治区の各地で大規模な洪水が発生し、特に百色市や崇左(チョンゾオ)市などで深刻な被害が出ています。いくつかの村では水位が15メートルを超え、住民は半月以上にわたり孤立状態に置かれています。現在も一部地域では電気・水道・食料が途絶えたままです。ネット上では「政府が見て見ぬふりをしている」との声も上がり、村民たちは自力で救助活動を行いながらSNSで助けを求めています。

 被害の深刻さにもかかわらず、現地の国営メディアではほとんど報道が見られません。SNS上に出回っている動画では、10月14日時点で百色市の一部地域が依然として洪水に浸かり、水域が青緑色に変わっている様子が確認できます。

 広西省のある個人メディア関係者はこう語りました。「無数の家が濁流にのまれ、道路沿いには水没した車がびっしりと並んでいる。これほど大きな洪水なのに、どうしてどのメディアも報じないのか、なぜ動画もほとんど出回っていないのか、本当に理解できない」

 また、ある被災者もSNSで問いかけています。「広西でこんな大洪水が起きているのに、どうしてトレンドにすら上がらないのか」

広西で複数の貯水池が同時放流 洪水被害が急拡大

 台風20号「ボロイ」と21号「マットゥ」が相次いで上陸した影響で、9月末から10月上旬にかけて広西省の各地で河川が急激に増水し、百色市や崇左市周辺では2度目の大洪水に見舞われました。特に百色市では複数の貯水池が同時に放流されたため、被害はさらに深刻化しました。現在も多くの村が水に囲まれ、家屋が水没し、道路や橋が流され、住民の損失は甚大です。

 広西省のある個人メディア関係者はこう話しています。「ここは黄河ではない、広西省の南寧(ナンニン)市だ。中秋節や大型連休で他の地域の人々が遊びに出かけている間、広西自治区だけが懸命に自力で復旧している」

 10月14日、百色市の村民は新唐人テレビの取材に対し、「多くの地域では今も電気も水も食料もない。助けを求める術がない。洪水が来て以来、水が一向に引かない。住民は家を失い、政府は見て見ぬふりをしている」と訴えています。

外部支援なし 村民の自力救助が続く

 百色市の多くの村では、洪水に浸かってからすでに数日が経過しても水が引かず、街全体が内水氾濫に覆われています。水は青緑色に濁り、2階から3階にまで達している家もあります。

 別の複数の動画では、住民がゴムボートで移動し、子どもたちは登校のために「建設用の足場」で作った仮設の浮き橋を渡っている様子が映されています。動画の中で、ある女性が語ります。「9月28日から今まで、一度も政府の救援隊を見ていない。軍隊の姿もまったくない」

 別の救助要請動画では、家々が水に浸かり、村全体が停電・断水に陥っている様子が映っています。学校も水に沈み、校舎の2メートル以上まで水が達し、授業は中止されています。動画の中の男性はこう訴えました。「水に浸かっているのは広西靖西(ジンシー)市の新甲(シンジャー)小学校だ。子どもたちはどうやって通学しているのか分からない。洪水を排水できる専門家や社会の支援団体がこの動画を見て、被災者を助ける方法を考えてほしい」

水位上昇中 住民は屋上で避難生活

 百色市那坡(ナーポー)県の被災者・暁明(シャオミン)さんによると、「このあたりは山間部で、今もなお水位が上がり続けている。集落の中央にある運動場は完全に水没し、運動場の下にある家屋の列はすでに3階部分まで浸水している。住む場所がない」と話しています。

 暁明さんは、山間部の被災者が今も救助を受けられず、食事や移動すら困難な状況だと明かしました。「飲み水も食料も確保できない。水位が高すぎて水道も止まった。すでに水深はおよそ8メートル。作物は全滅し、家の中のものもすべて水に浸かった。周辺の村も同じように増水しており、逃げ場がなく、屋上で暮らすしかない」と語ります。

 ようやく13日になって、少量の米や油、数束の麺などの救援物資を受け取ったといいます。「政府からの避難指示はまだない。村民が自分たちで作った仮の船だけが唯一の交通手段だ。私たちの願いは安全な場所に移動することだ。高齢者も多く、身動きが取れない人たちの避難を急いでほしい」と訴えました。

洪水は最大15メートルに 農作物と家財が全滅

 百色市地州鎮の村民・陸(ルー)さんは、「1週間のうちに2度の台風に見舞われ、大雨と貯水池の放流が重なって大災害になった。一帯は一面が水に覆われ、2階まで水没した。家電製品はすべて壊れ、稲やトウモロコシも収穫できない。魚の養殖池も壊れて魚が川に流れ出た。道路も寸断され、今では多くの村で竹筏を使って出入りしている」と話しています。

 百色市の下にある靖西市でも、複数の村が10日以上洪水に囲まれ、救助の手が届いていません。靖西市康和村の被災者・韋(ウェイ)さんは「雨が降るたびに貯水池も放流するので、作物をまったく収穫できない。稲はすべて水没し、電気も止まった。冷蔵庫の中はすでに腐敗している。誰も救助に来ない。完全に放置されている」と話しています。

中越国境の村々も浸水 二度目の洪水被害

 ベトナム国境に近い崇左市でも二度目の洪水が発生し、龍州(ロンジョウ)県や寧明(ニンミン)県の一部村落では水が2階の高さまで達しました。

 百色市徳保(ドゥーバオ)県の住民・楊さんは、「百色市も崇左市も洪水で大きな被害を受けている。河川の水位が上昇し続け、多くの村では家財や電化製品が水に浸かり、養殖していた魚や鶏、アヒルも流されてしまった」と語ります。

 靖西市孔造(コンザオ)村の村民・黄さんは、「村ではここ十日以上インスタントラーメンばかり食べている。船で外に出て物資を運んでいるが、水は引かず、今も水位が上がり続けている」と現状を訴えました。

当局も一部村の孤立を認める 10日以上浸水続く地域も

 10月16日、中国の経済メディア「第一財経」の記者が靖西市政府に確認したところ、新甲郷の一部の村がいまだに洪水に囲まれていることを当局が認めました。現地政府関係者によると、水位は完全には下がっておらず、一部の住民が依然として孤立状態にあり、電力も復旧していません。村に設置されていた発電機も浸水して故障し、使用できない状況だといいます。

 靖西市政府の担当者は次のように述べました。「いくつかの村はすでに10日以上孤立している。内水氾濫が深刻で、食事・生活・移動すべてに支障が出ている」

 「第一財経」の報道でも、新甲郷の大進(ダージン)村が9月30日以降、外部との連絡が途絶えたままで、約100世帯が洪水に取り残されていることが確認されています。

 実は、このような事態は今回が初めてではありません。2024年にも広西省では、複数の村が長期間洪水に浸かり続け、なかには数か月にわたって家屋が水没したままだった地域もありました。

中国各地で洪水災害が相次ぐ

 広西省と隣接する雲南省では、10月17日に記録的な豪雨により洪水が発生しました。現地では多くの地域で道路が流され、住宅が倒壊、自動車も濁流に押し流されるなど、住民は深刻な被害を受けています。

 また、複数の投稿者が公開した動画によると、9月下旬以降、陝西省と河南省でも広範囲にわたって豪雨が続きました。これにより、両省では洪水や浸水被害が発生しただけでなく、湖北省と河南省の境界に位置する丹江口(ダンジャンコウ)貯水池の水位が急激に上昇しました。10月12日時点で、この貯水池はすでに15日間連続で放流を続けており、その結果、下流域の河川では各地で水位が危険な水準に達しています。

(翻訳・藍彧)