中国の人気俳優・アランユー(于朦朧)氏の転落死事件から、すでに1か月以上が経ちました。しかし、事件の真相をめぐる議論と波紋はいまだに収まる気配がありません。発生直後、中国当局は「事故死」とだけ発表し、関連情報を徹底的に削除・封鎖しました。この異例の対応がかえって世論の疑念を呼び、多くの市民が「背後に政治的圧力や権力闘争があったのではないか」と考え始めています。
インターネット上では、事件当夜に撮影されたとされる映像や音声が拡散されました。その中には、殴打や監禁、強制的な供述など、衝撃的な内容が含まれているとの噂も広がっています。さらに、当日同席していた俳優や制作関係者に加え、中共高官との関係まで取り沙汰され、芸能界の闇やマネーロンダリング疑惑に発展しています。こうした憶測は次第に広がり、事件はもはや単なる「事故」ではなく、体制そのものの腐敗を象徴する出来事として受け止められるようになっています。
一部の霊能者が「アランユー氏の死に方は古代の『生贄』に似ている」と指摘したことから、「習近平国家主席の延命儀式のために犠牲にされたのではないか」といった、一見、荒唐無稽とも思える説まで飛び交っています。真偽は定かではありませんが、これほどの陰謀論が広がる背景には、中国社会に深く根付く「真相への不信感」があるといえるでしょう。
厳しい情報統制の中でも、民間では反発の動きが広がっています。9月20日、国際NGO「AVAAZ」で「アランユー氏に公正を!」と題したオンライン署名活動が始まり、10月16日時点で41万人以上が賛同しました。そしてこの事件は、さらなる社会的な連鎖を生み出します。中国国内外では、中共から離脱する「退党・退団・退隊の三退」運動が再び高まり、10月15日夜までに、世界で延べ約4億5,300万人が退党を表明しています。
多くの声明では、アランユー氏の事件が「覚醒のきっかけになった」と記されています。河南省南陽市の22歳の青年・張奇生さんは、「翻訳ソフトで海外のニュースを見て、中共が隠してきた悪事を知った。アランユー事件は国家権力が悪人を守る現実を照明した」と述べ、少先隊・共青団・共産党のすべてを脱退すると宣言しました。天津市の李帥さんも「私はずっと愛国者だったが、この事件で完全に目が覚めた。声を上げても投稿が削除され、言論が封殺されている。誰を死なせるかまで権力が決める国に、もはや愛情は持てない」と語っています。
同様に、山東省臨沂市の呉浩宇さんら13人は「胡鑫宇事件から法輪功学習者の臓器摘出、そして、アランユー転落死まで、すべてが共産党の腐敗と無能の結果だ。天が共産党を滅ぼす時が来た」と書きました。カナダ在住の李芳芳さんも「今の中国は巨大なミンチ機のような国。普通の人々が権力者の臓器供給源になっている。私はこの恐ろしい組織から完全に離れたい」とコメントしています。
さらに、広西出身の女性・暁儀さんは、「共産党は延命のために臓器を摘出し、赤ん坊まで犠牲にしている。これはもう人間ではなく悪魔の集団だ」と強く非難しています。
この事件の波紋は中国国内にとどまらず、台湾社会にも広がりました。アランユー氏の師である孫徳栄氏が台湾で繰り返し発言したことをきっかけに、複数の台湾メディアが一斉に報道。「中共がアランユー氏の死を封殺、逆に“三退”の大きな波を引き起こす!」「4.5億人が党を離脱」「アランユーの死がきっかけで中国人が覚醒」などの見出しが並びました。台湾社会もこの事件を通じて、中共体制の闇を改めて見つめ直しています。
法輪功迫害追跡国際調査団の責任者である汪志遠は、「中国国民はアランユー事件を通して中共の腐敗と邪悪を見た。かつて体制を信じていた若者たちも目を覚まし始めている。これは精神的な中共からの解放の現れだ」と述べました。また、元中国の弁護士・周君紅氏も「今の中国には真実も正義もない。中共の暴政があらゆる悲劇の根源だと気づいた人々が立ち上がり始めている」と指摘しています。
さらに彼女は、「共産党の支配から抜け出すことは、単なる政治的な選択ではない。自らの心を救済することでもある」と強調し、「共産党は人々の思想を支配することでしか生き残れない。その支配が崩れたとき、中共の崩壊は現実のものとなるだろう」と分析しました。
アランユー氏の転落死から始まったこの一連の動きは、もはや芸能ニュースの枠を超えています。体制の影の部分を浮き彫りにし、人々の良心と覚醒を呼び起こしたこの事件は、中国社会の深層に潜む良心を目覚めさせる為の「精神的な地震」として、今も静かに、確実に社会に広がり続けています。
(翻訳・吉原木子)
