中国国家統計局が9月30日に公表したデータによると、2025年9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.8%となり、6か月連続で景気の分かれ目とされる50%を下回りました。製造業は依然として収縮局面にあり、景気の低迷が続いています。外需の低迷と内需の弱さが重なり、産業チェーンへの圧力はいっそう強まっています。
10月の大型連休中、中国共産党の官製メディアは「中華民族の偉大な復興」を強調しましたが、その裏で民間資本は静かに国外へと撤退を進めています。浙江省、江蘇省、広東省などでは、政策上の圧力やコスト上昇、さらには欧米諸国による制裁などが重なり、多くの民間企業が産業拠点を東南アジアなどへ移転させる動きを加速させています。
民間企業家が次々と海外移住
江蘇省昆山市で家具工場を経営する許氏は次のように語りました。「経済環境が悪く、多くの企業は注文を取れなくなっている。私の倉庫は約6000坪(2万平方メートル)あり、アメリカ向けの完成品が山積みだが、なかなか出荷できない。浙江省の多くの工場はすでにベトナムへ移転しており、私もヨーロッパのビザを申請中だ。ここではまったく儲からない」
浙江省温州市の製造業者・周氏も、大紀元の取材に対しこう明かしました。「ヨーロッパと取引のある企業は今年初めから中国から撤退を加速させている。状況が比較的良い企業はすでに工場を移転し、私はすでに生産能力の半分以上をインドネシアとインドに移した」
周氏はもともと温州市で2つの工場を経営しており、1つはヨーロッパ向け、もう1つはアメリカ向けに輸出していました。しかし「政治環境の影響で、競争力のある企業はすでに海外へ移っている。ヨーロッパ投資移民のビザを取得した人もいれば、アメリカのグリーンカードを手にした人もいる。温州市の利益を出している工場の約2割はすでに撤退したか、閉鎖の準備を進めている」と語りました。
寧波市の繊維工場経営者は「国内では原材料費、環境規制、人件費、社会保険料のすべてが上昇し、利益率はわずか2~3%しか残っていない。これは世界的にも最低レベルで、とても持ちこたえられない。ベトナムで工場を借りれば人件費は半分、地代は2倍以上安くなる可能性があり、負担は大幅に軽くなる」と話しました。
台州市の金属加工工場の社長は家族を伴ってタイの工業区を視察しました。「国内ではあらゆる負担が重く、税金や費用が次々に積み重なっている。ここに残っても、今後3~5年の展望はまったく見えない」と語りました。
広東省東莞市の経営者・黄氏は「今年上半期だけで数十社が生産停止や倒産に追い込まれた。多くの中小企業がベトナムやインドへ移転している。ここでは経営者の大半がすでにヨーロッパのビザを取得している」と説明しました。黄氏自身も移民を決意しており、「東莞市はもう過去のようには戻らない。多くの工場が移転し、供給業者も去った。私一人が残っても意味がないので、私も一緒に出ていく」と語りました。
近年、多くの中国の製靴工場が東南アジア各国へ移転しています。広東省東莞市の鉅輝公司もカンボジアに移転し、現在では現地最大の靴工場となりました。これは同社の終業時の光景で、工場の入り口前には多くの露店商が集まり、従業員たちに商品を売り込んでいます。その様子は1990年代の東莞市を思わせるものでした。
ある民間企業家の本音が、多くの人の心を打ちました。
「実際、私たちは鶏より早く起き、犬より遅く寝ている。それでも暮らしぶりは鶏や犬以下だ。私たち民間企業家がこの社会で本当に尊重されたことがあるだろうか?実際には一度もない。国が本当に働いている人々に安全や保障を与えないのなら、どうしてここに留まる必要があるのか」
学者「企業は将来に不安」
企業規模別に見ると、国有企業が中心の大型企業のPMIは51.0%で安定した拡張を維持していますが、中型企業は48.8%に低下し、民間企業が主体の小型企業はわずか48.2%と、経営難が際立っています。
北京の金融学者・何氏はインタビューで「9月のPMIが景気判断の分かれ目を下回ったのは、収縮傾向が続いていることを示している。大型企業は政策支援に依存して一定の拡張を保っているが、中小企業は依然として大きな圧力にさらされている。現在は市場需要が不足し、融資環境も引き締まっている」と語りました。
何氏はまた、企業の新規受注や雇用などの主要指標が長期にわたり低水準にとどまっていることを指摘し、「企業が将来に対して期待できず、生産と消費の好循環が形成されていない」と述べました。また、不動産や飲食業などの産業が低迷を続けており、雇用や国民生活に直接的な影響を及ぼしているとも強調しました。
ロイター通信の分析でも、中国経済の長期的な停滞は「二重の圧力」を浮き彫りにしていると指摘しています。それは、コロナのパンデミック以降も内需が持続的に回復できなかったこと、そしてアメリカの関税政策が中国の製造業と海外サプライチェーンを圧迫していることです。
民間企業の国外移転は失業問題に拍車
浙江省の学者・魯氏は、中国製造業の苦境は単一の要因ではなく、複数の構造的な圧力が重なった結果だと指摘します。外需の減退、国際市場の不確実性、国内消費の停滞、融資環境の引き締め、労働力や環境対策コストの上昇――こうした要素が複合的に作用しているのです。さらに、民間企業は産業チェーンの中で重要な地位を占めており、その国外移転は雇用や社会の安定に直接的な打撃を与えると述べました。
南京で働く方さんは記者に「一番心配なのは仕事が見つかるかどうかだ。今は多くの工場が人員削減や操業停止に追い込まれ、飲食店も地元の人しか雇おうとしない。湖北の実家に帰っても、あちらでも仕事はないと聞いている」と語りました。彼によれば、周囲の友人の多くはすでに無職で、日雇いやフードデリバリーでなんとか暮らしをつないでいるといいます。
山東省浜州市の黄さんも、かつては企業で技術員を務めていましたが、「7月に工場が人員200人を削減して休業し、9月には完全閉鎖になった。100社以上履歴書を出したが、ほとんど返事はない。たまに面接を受けても月給はせいぜい約6万円(3000元)。大学生がみなフードデリバリーに流れるのも無理はない」と訴えました。
また、貴州大学の退職学者・王氏は「強い国家の基盤は国民の生活が安定していることにある。仕事があり、医療が受けられることが不可欠だ。それすら保障できないなら、復興という言葉は国民を欺くものにすぎない」と批判しました。
複数の取材に応じた企業経営者や学者も、民間企業の国外移転はもはや一部の選択ではなく、広がりを見せる趨勢となっていると強調しています。製造業の海外移転は雇用機会の喪失を意味し、雇用こそが社会安定の根幹です。産業チェーンが海外に移る一方で、国内には操業停止した工場と職を失った労働者が取り残されます。企業にとっては生き残るための選択ですが、一般国民にとっては生活が一層厳しくなることを意味しています。
(翻訳・藍彧)
