中国の10月の大型連休は、本来であれば国民が観光や帰省を楽しむ黄金週間であるはずでした。しかし今年は、南の海岸線からチベット高原に至るまで、中国各地で災害が相次ぎ、観光どころではない「災害の連休」となりました。台風による高潮や竜巻、そしてエベレスト東側で発生した記録的な大雪など、極端な気象現象が同時多発し、各地の防災体制が厳しく試される結果となりました。

 10月5日午後2時50分ごろ、今年第21号台風が広東省湛江市の徐聞県東部沿岸に強い勢力で上陸しました。中国気象局によりますと、上陸時の中心付近の最大風速は秒速42メートル、中心気圧は965ヘクトパスカルに達し、近年でも上位に入る強さだったということです。

 この台風の影響で、広東省、海南省、広西チワン族自治区、雲南省などの南方各地では猛烈な風と雨に見舞われ、局地的には「特大暴雨」と呼ばれる大雨が観測されました。特に広東省の西南部では、同時期としてはまれなほど強い突風が吹き荒れました。

 台風の接近とともに、広東省の多くの地域で高潮による逆流現象が発生しました。海水が防波堤を越えて街中に流れ込み、商店や住宅が次々と浸水しました。

 広東省南西部の各地、たとえば陽江市の海陵島螺洲公園、湛江市呉川市の大山江街道良美村、覃巴鎮梅楼村、そして海南省文昌市鋪前鎮などでは道路が冠水し、低地では水深が膝上に達しました。

 現地の住民は「家具や家電がすべて水に浸かってしまった」と話しており、一部地域では電気や水道が途絶える被害も出ています。広東省では湛江、茂名、陽江、江門、珠海、恵州、中山の7都市と36の区県が防風緊急対応を発動しました。

 さらに、今回の台風では竜巻も多発しました。広東省気象台、仏山竜巻研究センター、湛江市気象局の合同調査によりますと、10月4日正午までに確認された竜巻は20件に上ったといいます。

 強風によって住宅の屋根が吹き飛ばされ、街路樹が根こそぎ倒れるなどの被害が確認されていますが、現時点では大きな人的被害は報告されていません。

 海南省でも深刻な被害が発生しました。10月5日午前、文昌市の鋪前鎮では暴風雨と高潮が同時に発生し、海水が街中に逆流しました。海堤を越えた海水が商店街や住宅地に流れ込み、最深部では水深が50センチを超えました。家具や電化製品が水没し、一部の地域では停電や断水が起きました。

 海岸に近い鋪前派出所の1階は完全に浸水し、警察官たちは2階に避難して業務を続けたということです。近くの漁港では、養殖用の網いけすが巨大な波に揺さぶられ、破損する被害も出ました。

 政府は「五つの停止措置」を実施し、すべての観光施設を閉鎖しました。低地の住民およそ25万人が緊急避難したと報告されています。

 一方、南部の沿岸が暴風雨に襲われるなか、対照的に西方のチベット高原でも異常気象が発生しました。

 10月4日、チベット自治区シガツェ市ディンリ県のエベレスト東側で、近年まれにみる猛烈な豪雨が発生しました。視界は1メートル未満まで悪化し、ウーラ峠などの重要な道路は厚い雪に完全に覆われました。現地政府はその夜、エベレスト観光エリアを全面閉鎖し、チケット販売を中止しました。道路は凍結し、車の通行は完全に不可能になりました。

 雪に閉ざされたのは観光客だけではありませんでした。多くの登山隊やトレッキングチームが、暁烏錯(シャオウツォ)、湯湘(タンシャン)、熱嘎(レガ)などのキャンプ地で孤立しました。テントは雪に押しつぶされ、積雪が1メートルを超える場所もあり、ヤクすら動けない状態になりました。
5日未明、救援隊に「キャンプが雪に埋まり、低体温症の人も出ている」との緊急通報が入りました。現場にはおよそ千人が取り残されているとみられ、救援隊は吹雪の中で必死の救助活動を行いました。

 5日午後、下山したばかりの登山客の孫さんは、「3日の夜から雪が降り始め、4日にはまったく止みませんでした。山の上にいた友人の話では、テントが次々に押しつぶされ、雪が腰の高さまで積もり、下山ルートが完全に塞がれてしまったそうです」と語りました。

 定日県の融媒体センターによりますと、5日時点で登山客350人が安全にツェタンに到着し、健康状態も良好で保護されているということです。残る200人あまりもすでに連絡が取れており、救援隊の誘導で順次下山する見通しです。

 このように、南シナ海からエベレストの峰々まで、わずか数日の間に中国各地で極端な気象災害が相次ぎました。沿岸部では高潮や竜巻が都市を襲い、高原では暴雪が人々の命を脅かしました。

 今年の「黄金週間」は、人間が自然の猛威の前ではいかに無力であるかを改めて示す結果となり、気候変動の影響が現実味を帯びていることを、人々に改めて認識させる連休となりました。

(翻訳・吉原木子)