2025年9月29日未明から朝にかけて、広東省湛江市は一晩中の豪雨に見舞われ、夜が明けた頃には街の景色が一変していました。多くの住民が玄関を開けると、道路はすでに雨水に覆われ、最も深い場所では膝上まで水に浸かり、一階に住む家庭の室内にも大量の水が流れ込んでいました。ある市民は「今回の雨はあまりにも激しく、先日の台風18号よりも今回の台風20号の影響の方が大きい」と嘆いていました。これは台風20号の外側に広がる雨雲と冷たい空気の流れが重なり、極端な気象現象を引き起こした結果でした。

 この日の朝、湛江市内の複数の場所で竜巻が発生しました。海から巻き上がった巨大な風柱はまるで映画の終末シーンのようで、その破壊力は甚大でした。現地で撮影された動画や写真では、太い木が根こそぎ倒れ、百年を超える古木までもがなぎ倒されていました。住宅の屋根は吹き飛ばされ、窓枠やガラスは粉々に砕け散り、コンクリート製の電柱までが折れて倒れました。鉄製の工場や作業小屋、ビニールハウスも次々と崩壊し、軽量建築物はほとんど耐えられませんでした。湛江気象台は午前8時45分に竜巻警報を発表し、麻章区、霞山区、東海島などでは1〜2時間以内に竜巻が発生する可能性があると警告しました。その後、雷州や廉江の気象台も相次いで警報を出し、住民に鉄製の建物や仮設小屋から速やかに避難するよう呼びかけました。

 湛江市の管轄下にある廉江市は特に深刻な被害を受けました。市街地の道路はほぼ川のようになり、多くの車両が浸水、住民の家屋にも水が入り込み、膝まで水位が上がったところもありました。安鋪開発区の低地は一面が水に覆われ、安鋪広場付近の道路も冠水しました。ネット上では「遂渓県の多くの道路や農地、橋梁がすべて水に浸かり、今年もまた収穫は期待できない。農民にとって本当に厳しい」との声も上がっています。徐聞県南山では雨が止んだ後も広範囲に水が残り、低地では車が水に浸かってエンジン停止したまま放置されていました。今回の豪雨は短時間の集中型ではなく、長時間降り続いたことも被害を拡大させた要因でした。

 SNS上には、被災した市民の声が次々と投稿されました。「最も深い所では腰の高さまで水がきて、私の店は完全に浸水しました。本当に心が痛いです」と嘆く商店主。「車を買った時に車両税の中に『車船使用税』を払えと言われた時は不思議に思った。車なのに船の税を払うのかと思っていたが、今こうして冠水した道で本当に船のように扱う日が来るとは」と皮肉を込めて話す市民もいました。万達広場付近では「午後4時頃には電動バイクのステップの位置まで水が上がり、走れなくなったので押して歩くしかなかった」という声も聞かれました。

 公式の発表によれば、現時点では湛江で発生した竜巻や豪雨による人的被害の報告は出ていません。しかし、住宅や商店の浸水、農地の冠水による農作物の損失は避けられず、沿海部の漁船や作業もすべて港に避難したため、漁業や近海の工事は一時的に停止。さらに道路冠水や車両のエンジントラブルにより交通にも深刻な影響が出ており、都市の機能が大きく阻害されました。広東省はすでに防風Ⅳ級の緊急対応を発動し、江門以西の海域に出ていた全ての漁船に帰港避難を命じ、瓊州海峡や粤西近海では風速が秒速14〜24メートル、瞬間的には30メートル前後に達しました。省内では一時13件の台風関連警報が同時に発表されました。

 気象専門家によると、台風20号は29日未明にベトナム・河静省へ上陸後すぐに弱まったものの、その外側の雨雲と華南地域の冷たい空気が重なり合い、極端な対流活動を引き起こし、湛江各地で竜巻や豪雨災害を誘発したと分析されています。つまり、台風自体が直接広東に上陸したわけではないにもかかわらず、その影響だけでこれほどの甚大な被害が出たのです。

 今回の台風20号による災害は、粤西地域の都市排水能力や防災システムの脆弱さを改めて浮き彫りにしました。9月だけで4度目の台風に直撃された湛江・雷州・廉江などの住民は、自然災害そのものの破壊だけでなく、生活の不安や今後への懸念を強く感じています。農民たちは「収穫の見通しが立たない」と絶望的な声を上げ、商店主は「店が水没して生活が成り立たない」と訴え、一般市民も「交通や仕事が麻痺してどうしようもない」と嘆いています。今回の台風20号は、被害そのもの以上に、人々の生活と心に深い爪痕を残しました。

(翻訳・吉原木子)