9月8日、浙江省温州市永嘉県碧蓮鎮澄田村で、水道管工事をめぐる激しい衝突が発生しました。村民は、地元政府と水道水会社が結託し、「水道管設置」の名目で約200人の警備員や特警を動員して村に侵入し、長年使い続けてきた山の湧き水の水源を断とうとしたと訴えています。この騒動で複数の村民が負傷しました。

 村民の李進さん(仮名)は当日の様子を次のように語りました。「午前8時ごろ、碧蓮鎮の副書記が数十人の警備員を率いて村の中心部に入り、山の湧き水の水源を切断しようとしました。これに対して、村民が駆けつけて阻止しようとしました。しかし、口論から殴り合いに発展しました。副書記は村民と取っ組み合いになり、高齢の村民の首をつかんで倒したとされ、さらに別の老婦人も押し倒されました。救急車が出動し、負傷した村民や副書記が病院に搬送されました。午後にはさらに約200人の特警が投入され、再び衝突が発生しました。夜には公安が村を封鎖し、警備のもとで工事が続けられました。」

 別の村民、呉燕さん(仮名)は、負傷した老人の一人が鎮の病院で受け入れを拒否され、市の病院に転送されたことを明らかにしました。また、別の負傷した村民は、子どもの送迎を何とか先に済ませた為、治療が遅れ、容体は不明だといいます。事件後、警察は村民に対し動画を削除するよう繰り返し電話で求め、ネットへの投稿を禁じたとも証言しました。

 澄田村では長年、住民が自費で建設した天然の山の湧き水の導水管を使い、1トン当たり約10円(0.5元)の水道料金で維持管理を行ってきました。しかし現在、水道水会社が強制的に管理し、料金は1トンあたり約52円(2.5元)〜約62円(3元)、場合によってはさらに高くなると見込まれています。李進さんは「生活が苦しい中で、水道料金が数倍に上がれば負担に耐えられない」と語り、村民の多くも「水道水は浄化の過程で薬剤が加えられ、天然の湧き水よりも質が落ちるのではないか」と懸念しています。

 村民が工事に反対するもう一つの理由は、政府が村民代表大会を開いた上での同意を得る手続きを踏んでいないことです。村民委員会組織法では、住民の利益に関わる重大な事項は村民会議で決定することが定められています。しかし、今回の工事では村民の意見がまったく無視されました。呉燕さんは、この衝突は単発的なものではなく、長年続いてきた水資源をめぐる対立の延長だと指摘します。数年前、碧蓮鎮政府は浄水施設の建設に際し農地を接収し、幹線道路を封鎖して村民に遠回りを強いたことがありました。工場完成後の2023年〜2024年には、山の湧き水を一括管理しようとする初の試みが行われました。しかし、全村民の強い抵抗で計画は中止されました。

 実際、永嘉県では「都市と農村のミズ供給一体化」事業が進められており、碧蓮水工場はその中核とされています。水務グループの資料によれば、この水工場は総投資約38億円(約1.84億元)、日量2万トンの処理能力を持ち、碧蓮、大若岩、巽宅の3鎮59の村、約4.9万人を対象にしています。用地は2022年に確保され、2023年着工、2025年竣工予定です。浙江省では2024年に「農村供水保障弁法」が施行され、農村の給水を都市と同質にし、県レベルで統一管理する方針が示されており、地方政府は小規模水源の統合を急いでいます。

 しかし、こうした政策の推進は村民の生活実感と激しく対立しています。村民は、政府と水道水会社が利害関係で結びついていると疑っています。山の脇き水は水質が良く、ほとんど浄化を必要としないため、企業は低コストで水をくみ上げ、高い料金で販売し、さらに政府から補助金も受けられる「両方から利益を得る仕組み」だと村民から指摘されています。呉燕さんによれば、「澄田村の水源は過去に少なくとも二度売却されたことがありました。しかし、約束された補助金も支払われず、村民に利益はもたらされませんでした。」とのことです。今回の強制工事は三度目に当たり、村民の怒りは一層強まっています。

 全国的にも水道料金は「公聴会で認定されたコストと適正な利益」に基づいて決められ、段階制の料金制度が導入されています。例えば2024年に広州で行われた公聴会では、第一段階の料金が1トン当たり約51円から約54円(2.46〜2.60元/トン)と示されており、都市部ではおおむね1トン当たり約41円から約62円(2〜3元/トン)が相場です。これと比べると、澄田村で長年続いてきた1トン当たり約10円(0.5元/トン)という料金は、事実上維持費の分担にすぎず、企業運営を前提とする水道料金との差は非常に大きいといえます。

 李進さんは「澄田村が突破口とされ、ここで水道管設置が成功すれば、他の村でも同じ手法で水資源が独占されるだろう」と危機感を示しました。呉燕さんも「村民は水道改善そのものに反対しているわけではありません。ただ、村民の意見を尊重し、適正な価格と透明な手続きのもとで進めるべきです。強制的に押し通されるのは到底受け入れられない」と訴えています。

(翻訳・吉原木子)