中国経済の減速が、消費を支えるクレジットカード業務にも影を落としています。最新の財務報告によれば、国有大手銀行や主要な商業銀行のクレジットカード残高や取引額、流通枚数はいずれも減少し、不良債権比率は上昇しました。金融機関の収益基盤に直結する分野での後退は、経済の下振れの深刻さを示しています。

クレジットカード債務残高と取引額の顕著な縮小

 中国メディア「第一財経」は9月1日、2025年中間業績の財務報告に基づき、中国の14の上場銀行(国有大手6行と主要な商業銀行8行)の2025年上半期のクレジットカード債務残高が合計で約155兆円(7.52兆元)に達し、年初から約4.1兆円(1975.72億元)減少、前年同期比で2.6%減少したと報じました。
 このうち、中国銀行の債務残高の減少幅が最も大きく、約11兆円(5224.99億元)と、年初から14%減少しました。平安銀行と興業銀行もそれぞれ9.2%、8.1%の減少を記録しました。
 14の銀行のうち、工商銀行、農業銀行、上海浦東発展銀行(略称・浦発銀行)のみが小幅な増加を実現しました。建設銀行は22兆円(1.5兆元)の債務残高で首位を維持しましたが、それでも年初から1.03%の微減となっています。
 債務残高の縮小だけでなく、取引額も大幅に減少しました。データを開示した12行の上半期におけるクレジットカード消費額は前年同期比で11%減少し、約29兆円(1.42兆元)減少しました。中国銀行と光大銀行の取引額の減少幅は18%を超え、建設銀行と農業銀行は約5%の減少にとどまりました。取引額が最も多い招商銀行でさえ、前年同期比で8.5%の減少となっています。

クレジットカード業務収入の減少と不良債権比率の上昇

 クレジットカード業務の収入も全般的に減少しました。招商銀行では、上半期の利息収入が前年同期比で5%減少し、非利息収入も16%減少しました。
 中信銀行、光大銀行、華夏銀行の業務収入は、いずれも前年同期比で10%を超える減少を記録しました。
 中信銀行は「市場全体でクレジットカード取引量が縮小した影響を受け、上半期の銀行カード手数料収入が前年同期比で12%減少した」と説明しました。招商銀行も、手数料収入が前年同期比で16%減少したと明らかにしました。
 収入減少の片方で、資産の質にかかるプレッシャーが高まり、延滞や未返済が増えています。中国人民銀行の最新統計によれば、半年以上延滞しているクレジットカード債務残高は、2008年の約700億円(33.77億元)から2024年末には約2.6兆円(1239.64億元)へ急増し、16年間で約36倍に拡大しました。2024年だけでも26%増加し、未返済債務残高の1.4%を占めています。
 2025年第1四半期には、個人不良貸出の一括譲渡における平均割引率が4.1%に低下し、本金回収率もわずか6.9%にとどまりました。
 7月30日、中国銀行は、9月14日以降の延滞請求に督促費用を上乗せすると発表しました。これは債権回収の難しさが増していることを示しています。
 不良資産関連業務に従事する関係者は「訴訟コストはますます高くなる一方で、回収額は減り続けている。従来の外部委託による回収モデルは大きな圧力に直面している」と『第一財経』に語りました。
 興業銀行の取締役副社長・陳信健(ちん・しんけん)氏は、上半期の新規クレジットカードの不良発生額は前年同期比で7.5%減少したと述べました。しかし全体として不良債権比率は上昇傾向にあり、上半期末時点で交通銀行の不良債権比率は年初より0.63%上昇しました。招商銀行は約1.8%、郵儲銀行と農業銀行はいずれも約1.5%の不良率となっています。

流通カード枚数が減少 提携カード発行停止と拠点閉鎖

 現在、銀行側でも利用者側でも、価値のないカードの解約が進んでいます。
 SNS上では、多くのネットユーザーが「今はクレジットカードの特典が以前ほどではないため、余分なカードを解約して、特典の手厚い1~2枚だけ残している」と投稿しています。ある利用者は「以前は7枚のカードを持っていたが、今年は余分を解約して、招商銀行の1枚だけ残した」と語りました。
 元・中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)と中国人民銀行が共同で発表した通知によれば、多くの銀行は同一顧客が保有できる正常状態のカードを6枚以内と規定しています。中国の消費者金融会社、MUCFCの首席研究員・董希淼(とう・きびょう)氏は「18か月以上連続で取引がなく、借入残高や余剰入金がゼロの『長期休眠』カードについて、各銀行が整理を進めている」と述べました。
 2025年6月末時点で、14行のうち10行がデータを開示し、流通総枚数は8.9億枚となり、前年同期比で391万枚減少しました。平安銀行の減少幅が最も大きく、1年間で626万枚の純減(12%減)となりました。工商銀行と交通銀行もそれぞれ約400万枚の減少を記録しました。一方、中信銀行と光大銀行はそれぞれ637万枚、330万枚の増加となりました。
 『2024年決済システム運行全体状況』によれば、2024年に全国でカードは4,000万枚減少し、減少率は5.1%に達しました。さらに2025年上半期には1,200万枚が減少し、国民一人当たりのカード保有数は0.54枚から0.52枚へと低下しました。
 また、2025年8月31日以降、中国銀行は企業と提携して発行していた24種類のカードの新規発行を停止しました。中信銀行も一部の企業提携カードの業務を終了し、浦発銀行や郵儲銀行などもこれに追随しました。
 提携カードの発行停止に加え、銀行は業務縮小に対応するため拠点閉鎖にも踏み切っています。
 中国の金融情報大手ウィンドのデータによると、今年に入ってすでに40を超えるクレジットカード業務センターが閉鎖を認可されました。そのうち、7月16日から21日にかけて、広東省金融監管局は交通銀行の珠海業務センターと民生銀行の華南業務センターの営業終了を承認しました。交通銀行は4月の1か月間だけで済南や瀋陽など10余りの業務センターを閉鎖しました。

クレジットカード金利の上下限撤廃 消費者は高金利リスクに直面か

 中国のシンクタンク「素喜智研」の研究員・蘇筱芮(そ・しょうずい)氏は「クレジットカードはいま、資産の質の悪化、収益余地の縮小、そしてインターネットによる信用決済の台頭という、内外の逆風に直面している」と述べました。
 こうした銀行業のリスクに対応するため、中国人民銀行は8月29日に公告を発表し、『電子決済ガイドライン(第一号)』などの規定を改正してクレジットカードに関する権益を調整しました。主な内容は三つあります。第一に、クレジットカード金利の上下限管理に関する規定を削除すること、第二に、業務に関する情報開示の規定を削除すること、第三に、利率報告に関する規定を削除することです。
 クレジットカード利率の上下限の設定は、2016年に中国人民銀行が定めたもので、利率の上限を設けることで発行機関による不合理な高利息の徴収を防ぎ、カード保有者の正当な権益を保護していました。
 しかし、『中国証券報』は論評で「現在の市場縮小の中で上下限を撤廃することは、銀行が外部環境の変化に対応する助けになる一方、消費者が高金利リスクに直面することを意味する」と指摘しました。

(翻訳・藍彧)