8月12日夕方、福建省厦門市海滄区の新陽工業区で大規模な火災と爆発が発生しました。現場では炎が空高く舞い上がり、黒い煙が立ちこめ、爆風で周辺の住宅の窓ガラスが割れました。刺すような異臭は、約3キロ離れた天心島の住宅街にも漂ったということです。地元当局は「有毒ガスは検出されなかった」と発表していますが、この説明に対して、インターネット上では疑問や批判の声が相次いでいます。
海滄区応急管理局によりますと、火災は12日午後5時20分ごろ、新陽工業区内にある厦門中坤生物科技有限公司で発生しました。関係者はすでに避難しており、負傷者はいないとしています。環境保護部門の測定では「有毒ガスは発生していない。環境汚染のリスクもない」としています。応急、消防、公安などの部門が現場で消火活動を行い、火災の原因は現在調査中です。海滄区政府の職員は中国紙「新京報」に対し、「出火場所は屋外の松節油の貯蔵タンクです。燃えたのは松節油と雑物でした。」と説明しました。
複数のメディアや目撃者によりますと、午後5時過ぎに露天の貯蔵タンクから黒い煙が上がり、その後、2階建てほどの高さの炎が噴き上がったということです。午後6時ごろには大きな爆発音が響き、これが最初の爆発とみられています。さらに午後8時ごろには再び複数回の爆発音があり、二次爆発の可能性が指摘されています。
ネット上の動画には、工場が炎に包まれ、火の光が夜空を赤く染め、黒い煙が一帯を覆う様子が映っています。隣接する高架橋も炎に照らされ、火の勢いの強さが際立っていました。火災は午後から深夜まで続き、爆発音とともに火の粉が四方に飛び散りました。
爆風は周辺の住宅にも及び、多くの住宅の窓ガラスが割れました。空気中には強い刺激臭が漂い、3キロ離れた天心島でも強い酸っぱい匂いを感じた住民が少なくありませんでした。多くの家庭が子どもを連れて避難したということです。SNS上では、「化学工場が爆発し、無毒とは信じられない」「黒い煙が出て、汚染されていない。という説明は納得できない」「わらを燃やしても汚染とされるのに、松節油が燃えたのに汚染がないとはあり得ない」など批判する投稿が相次ぎました。また、「有機物の火災は必ず汚染を伴う」と指摘する声もありました。
松節油は可燃性液体に分類されます。蒸気は空気と混ざると爆発性を持ち、燃焼や高温分解時には刺激性の煙霧を発生させる可能性があります。高濃度の蒸気を吸入すると呼吸器に刺激を与えることが知られています。福建省政府が2017年に公表した中央環境保護督察の報告では、中坤生物が製造する香料エッセンス・香料原料は濃度が低くても匂いが感じられやすく、工場周辺でも異臭が感じられると記録されています。こうした背景が、今回の住民の反応に影響を与えた可能性があります。
企業情報サイトによりますと、厦門中坤生物科技有限公司は2004年7月6日に設立されました。法定代表者は楊毅融氏、登録資本金は5,000万元です。事業内容は、生物技術の普及、化学原料薬の製造、香料や香料エッセンスの製造、その他の日用化学品の製造および関連する輸出入業務となっています。注目されるのは、8月7日に最高人民法院全国破産案件情報網が中坤生物と関連会社の中坤化学など、8社の実質的な、合併再建に関する公告を出しており、中坤化学はすでに2024年11月に破産再建手続きに入っていたことです。
インターネット上では、「今日は天津港爆発からちょうど10年だ(同じく8月12日)」「化学工場の爆発はこれで何度目か、被害を受けるのはいつも周辺住民だ」「こんな重大な出来事が検索ランキングにすら出てこないのか」「普段の訓練は形だけで、いざ火事になると対応が後手に回る。企業の安全対策には本気の投資が必要だ」などといった声も見られます。
現時点では、火災や爆発の詳細な原因や環境測定の原データは公表されていません。今後、関係当局による追加の発表が待たれるところです。
(翻訳・吉原木子)
