先日、新疆ウイグル自治区伊犁の観光地で、吊り橋のワイヤーロープが突然切断され、橋面が大きく傾いたことで、多くの観光客が転落し、5人が死亡、24人が負傷するという悲惨な事故が発生しました。現在、この観光地は一時的に閉鎖され、事故原因の調査が進められています。

 驚くべきことに、この吊り橋では昨年の夏にもワイヤーの断裂による事故が起きていました。当時は死傷者が出なかったため、簡易的な修理と形式的な再発防止策にとどまり、根本的な安全対策は講じられていなかったとみられています。

 中国公式メディアの新華社通信によれば、事故が起きたのは2025年8月6日午後6時18分、新疆伊犁ハサク自治州昭蘇県にある景勝地「夏塔景区」の人気吊り橋「将軍橋」で、片側の主ケーブルが突然切断され、橋面が一気に傾斜しました。橋の上には29人の観光客がいたものの、次々とバランスを崩して滑り落ち、そのうち5人が死亡、22人が軽傷、2人が重傷を負いました。

 事故発生時の監視カメラや観光客が撮影した映像には、橋が大きく揺れて傾き、人々が宙に放り出されるようにして、石の上や急流に落下する様子が生々しく映し出されています。現場に居合わせた観光客の一人は、「橋の上で、友人と笑いながら歩いていたところ、突然足元が崩れて、空中に飛ばされました。気づいた時には、岸にいて、川に流されていく人々の姿が今も目に焼き付いて離れません。思い出す度に手の震えが止まりません。」と語っています。

 また、別の目撃者は「数百メートル離れた場所で;遊んでいたところ、突然叫び声が聞こて振り返ると、橋が片側に崩れ、多くの人が次々と落ちていった。子どもや高齢者の姿もあり、石に叩きつけられる人も見えた。現場に駆けつけると、川に浮かぶ人、倒れて動かない人、泣きながら職員に、家族の安否を尋ねる親御さんなど、信じがたい光景だった」と話しています。

 さらに深刻なのは、今回の事故が、2024年6月にも同様に発生したワイヤー断裂事故と同じ場所――西側のワイヤーと橋塔の接続部で再び起きたという点です。前年の修理では構造的な問題が解消されていなかった疑いが強く、安全性が軽視されていた実態が浮き彫りになっています。

 この吊り橋は近年、SNSで話題を呼び、「雲の上の散歩道」として多くの観光客が訪れていました。しかし、橋の設計上の定員は50人とされているにもかかわらず、観光シーズンにはそれを大きく超える人数が乗っていたことがあったといいます。現地には人の流れを管理するスタッフもおらず、注意喚起の看板は広告に隠れて見えなくなっていたという証言もあります。「わざと橋を揺らす人はよく見かけた。でも、そういう行為を止める人はいなかった」との声もあり、観光地の安全管理体制が根本的に機能していなかったことがうかがえます。

 こうした安全軽視の実態は、新疆だけにとどまりません。2024年8月10日には、広西チワン族自治区の徳天瀑布景勝地で、登山用の自動搬送設備が突如として暴走し、多数の観光客が雪崩のように転倒・転落する事故が発生しました。1人が死亡、60人が負傷し、そのうち1人は重傷という重大な事故となりました。

 目撃者によれば、「上から人が滑り落ちてくるのが見え、まるで津波のようだった。悲鳴と衝突音が響き渡り、現場は地獄のようだった」と語っています。事故後の調査で、数ヶ月前から機械の異常を訴える苦情が寄せられていたにもかかわらず、運営側は必要な点検や修理を怠っていたことが明らかになりました。

 さらに、2023年10月27日には深圳の大型遊園地「歓楽谷」で、人気のジェットコースター「雪域雄鷹」が運行中に追突事故を起こし、28人が病院に搬送されました。途中で先頭の車両が停止し、後続の車両が高速で追突したことで、重傷者3人を含む多数が負傷しました。運行前から「急停止する」「安全バーが不安定」といった苦情が出ていたにもかかわらず、改善されることはなかったとされています。

 また、2016年2月には、河南省三門峡市の仰韶広場に設置された遊具「360度大回転」で、安全ベルトが断裂し、男性が高所から墜落して即死する事故も起きました。この遊具は年次点検を受けておらず、地元当局への登録もされていなかったとされ、運営は個人業者で、安全管理体制がまったく存在していなかったことが報じられています。事故後、運営関係者は一時的に現場から姿を消し、責任逃れを図ったとの情報もあります。

 新疆の吊り橋事故をはじめ、広西、広東、河南と相次いで発生しているこうした重大事故は、「観光収益の優先と安全軽視」という構造的な問題を浮かび上がらせています。本当に修復すべきなのは、壊れた設備だけではありません。形式化した検査制度、実効性を欠く運営体制、そして何よりも「人命より利益」を優先してきた社会構造そのものを見直さなければ、同じような悲劇は今後も繰り返されるおそれがあります。

(翻訳・吉原木子)