2025年8月初、広東省を中心に記録的な豪雨が続き、複数の都市で深刻な都市型水害が発生しました。北京市や河北省での洪水被害の記憶も冷めやらぬ中、南部でも被害が拡大しています。

 広州市では8月2日から6日にかけて、今年最強クラスの豪雨が観測されました。広州市生態・農業気象センターによれば、今回の雨は「特に深刻な影響レベル」に相当し、8月としては今世紀5番目の規模にあたるとのことです。6日午前8時13分には、越秀区と天河区に暴雨橙色警報が発令され、今後さらに上位の赤色警報に引き上げられる可能性も示唆されています。現在は白雲区、番禺区、従化区など複数地域でも橙色警報が継続しています。

 また、6日午前8時30分頃、白雲区大源街では連日の豪雨の影響で山体が崩壊し、黄荘エリアの住宅が巻き込まれました。この事故により14人が生き埋めとなり、正午までに7人が救出されました。いずれも容体は安定していると報じられていますが、残る行方不明者の捜索は今も続いています。周辺の住民はすでに全員避難を完了しており、これ以上の人的被害は免れたとみられています。

 広東省肇慶市でも同様の被害が広がっています。8月4日夜、市内は大雨に見舞われ、端州区や鼎湖区では複数の道路が冠水しました。水は沿道の商店にも流れ込み、市民が撮影した動画には、鼎湖区内で人が濁流に流される様子が映っていました。現場の映像では「この学校前の道は絶対に通らないでください」と叫ぶ住民の姿や、車両や人が濁流に飲まれていく緊迫した瞬間も記録されており、「ああっ、人が流された!」という目撃者の叫び声も残されています。行方不明者の有無について記者が区の関係者に問い合わせたところ、「上司への報告が必要なため答えられない」との回答がありました。

 5日早朝には、東莞市の黄江鎮でも激しい雨が降り、長江路一帯が冠水。まるで川のような状態となりました。華安ロンティン小区の2階に住む魏勇斌さんは、「朝5時頃、『助けて!』という声で目を覚まし、外を見ると腰まで水に浸かっていた」と語っています。「エレベーターは1階で停止し、建物全体が停電。もし気づくのが遅れていたら命に関わっていたかもしれない」と当時の緊迫した状況を振り返りました。

 「希望之声」によると、黄江鎮では4日午後5時に黄牛埔ダムが放流を開始し、それにより下流域の浸水被害がさらに悪化したとの指摘もあります。一部地域では水位が車の屋根を超えるほどに達し、現場では「政府はどこにいるんだ!助けてくれ!」と叫ぶ市民の声も上がっていました。

 同様の被害は深圳市や恵州市にも及んでおり、SNSに投稿された動画には、街路が川のように冠水し、住宅がまるで水上コテージのように見える光景が映し出されています。数多くの車両が「潜水車」と化し、交通機能の麻痺が広がっています。

 中国水利部の発表によると、8月5日午前8時から6日午前8時までの24時間で、広東省の東江支流・石馬河、北江支流・潖江、広西チワン族自治区の桂江支流・龍江、新疆ウイグル自治区のタリム川本流・新渠満河など、全国21本の河川が警戒水位を超える洪水となりました。このため、水利部は北京、天津、河北、江蘇、安徽、広東、広西、甘粛、青海、寧夏、新疆に対して四級の緊急対応を継続しています。

 さらに、8月6日午前6時には中央気象台が高温黄色警報、暴雨橙色警報、強対流天気青色警報を同時に発表。華北東部、陝西、黄淮南部、江漢、江淮、江南、四川などの地域では、気温が35~39℃に達し、四川盆地東部では40℃を超える地点もあると予測されています。

 暴雨橙色警報の対象地域には、広東、広西、湖南、雲南、四川盆地、河南などが含まれ、1時間あたり20~50ミリ、局地では70ミリ以上の激しい雨と雷雨、突風などの強対流現象が予想されています。また、強対流天気青色警報では、東北部中央、西北部中央、黄淮中部、西南部南部、華南中部などの地域で、8級以上の雷雨や雹の発生も懸念されています。

 2025年に入ってから、中国各地では極端な気象災害が相次いでいます。洪水や地震、雹、竜巻といった自然災害に加え、人災が重なるケースも目立っています。先日、北京市内の高齢者施設で発生した洪水では、77人中31人が命を落としました。調査の結果、この施設は当局が策定した避難対象エリアから除外されていたことが判明し、世論からの厳しい批判を浴びました。

 こうした中で、中国当局が発表する死者数の信頼性を疑問視する声も根強く、被災地では「公式発表と現場の実情がかけ離れている」との指摘が相次いでいます。広東省をはじめとする南部地域では、今後も警戒が必要な状況が続くとみられています。

(翻訳・吉原木子)