中国では現在、台風8号の接近と、北部を中心とした記録的な集中豪雨が重なり、各地で自然災害が相次いで発生しています。広範囲にわたって強風・豪雨・洪水・土砂災害などの影響が出ており、防災体制の強化が求められています。
今回の台風8号は、その進路や発達の過程が非常に特殊でした。7月23日に発生したものの、同時期に発生した台風7号との相互作用により、この2つの台風はいったん勢力を弱め、番号が取り消されるという異例の経緯をたどりました。しかしその後、台風8号は再び発達し、現在は亜熱帯高気圧に導かれて北西に進みつつあります。
中国中央気象台の発表によると、勢力を増した台風8号は7月30日午前4時30分ごろ、浙江省舟山市朱家尖島の沿岸部に上陸しました。上陸時点では「熱帯暴風雨級」(風速23〜28メートル)とされ、日中にはさらに浙江省寧波から江蘇省啓東にかけて再び上陸し、その後は徐々に勢力を弱めながら中国内陸部に進むと予測されています。気象当局は、台風の影響による長期的な悪天候の可能性を指摘しており、今後も警戒が必要とされています。
台風8号に関連して、30日午前8時から31日午前8時までの間、黄海南部、東シナ海、台湾海峡北部、長江河口、上海・江蘇・浙江などの沿岸地域では風速6~8級、最大12級(風速約33メートル)の突風が観測される見込みです。また、浙江北部、江蘇南部、上海、安徽東部などでは広い範囲で豪雨が予想されており、局地的には「特大暴雨」とされる250ミリ以上の降水が見込まれています。
また、すでに各地では緊急措置が取られています。上海市では浦東国際空港と虹橋空港の両方で、30日だけで合計約640便が欠航し、全体の約3割に達しました。市民に対しては、不要不急の外出を避けるよう当局が呼びかけています。また、浙江省寧波市では小中学校、幼稚園、一時預かり保育、学習塾、サマーキャンプ、各種イベントなどが全面停止されました。
こうした中、中国北部ではすでに数日前から異常気象による大規模な被害が出ており、北京、河北、天津、山西、内モンゴル自治区を中心に甚大な影響が広がっています。
北京市では、7月23日から28日までの4日間で市全体の平均降水量が165.9ミリに達し、特に密雲区の一部では543.4ミリを記録しました。これは同市の年間降水量の9割以上に相当する異常値で、特に山間部では深刻な被害が出ました。中央政府は29日になってようやく「死者30人」と発表しました。しかし、市民の間では「事実より過小だ」とする不信感が広がっています。
密雲区では村全体が水没し、住宅の多くが床上まで浸水しました。高齢者施設では屋根に避難する事態となり、被害の深刻さが浮き彫りになりました。太師屯鎮では数分で水かさが膝を越え、葡萄園村では全域が浸水しました。高齢者や障がい者の避難は困難を極め、現地ではショベルカーを使って救助活動が行われました。房山区では拒馬河が氾濫し、仮設住宅が濁流に流される様子がSNS上で拡散されています。
河北省でも大規模な土砂災害が相次いでいます。張家口市、保定市、承徳市では特大降雨が観測され、保定市阜平県では532ミリの降水量が記録されました。山腹の崩壊や土石流により多くの住宅が倒壊し、死者や行方不明者が続出しました。承徳市滦平県では住民の証言として「木々が根こそぎ倒れ、車は水没し、橋も流された」との情報が報じられています。興隆県楊家台村では通信や道路が一時的に遮断されました。しかし、若者たちが山を越えて外部に情報を発信し、自発的な救援活動が展開されました。
天津市蓟州区では、70年ぶりとされる大規模な洪水が発生しました。28日までの降水量は平均92.7ミリ、局地では252.6ミリを記録し、13の村が冠水しました。一部住民は屋根裏に避難し、木にしがみついて救助を待つ姿も見られました。断水や停電も発生し、現地のインフラは大きな打撃を受けています。
山西省や内モンゴル自治区でも被害が広がっています。内モンゴルの善岱鎮では堤防が約40メートルにわたって決壊し、周辺の村に深刻な浸水被害をもたらしました。山西省大同市の天鎮県では村全体が広く水没し、体の不自由な人や高齢者はボートで避難しました。農地や家畜への影響も甚大です。現地では生活再建への支援が急務となっています。
このように、台風8号による強風と豪雨、さらに北部の記録的な集中豪雨が重なり、中国各地で自然災害が同時多発的に発生しています。各地では住民による自発的な支援や救助が行われている一方で、政府の対応の遅れや、情報公開のあり方にも批判の声が上がっており、引き続き厳重な警戒と迅速な対応が求められています。
(翻訳・吉原木子)
