近ごろ、中国から外資系企業の撤退が相次ぐなか、中国で最も裕福な都市とされる深セン市と上海でも、深刻な経済危機の兆しが見え始めています。

深センでは企業の4割が赤字 公立学校も賃金未払い

 深セン市統計局のデータによると、今年1月から5月までの間に、深セン市内の企業の約4割が赤字に転落し、輸出額も8.6%減少しました。輸出と密接に関係する貨物輸送量も大きく落ち込み、特に鉄道貨物は18.9%の減少となっています。

 鉄道貨物量は、かつて中国の元首相・李克強(り・こっきょう)が重視していた経済指標「克強指数」を構成する三大指標の一つであり、中国共産党(以下、中共)の公表するGDPよりも実態をよく反映していると考えられています。

 中国経済の長期的な低迷に伴い、給与の引き下げが全国に広がっています。経済の象徴ともされる深セン市も、この嵐の直撃を受けており、影響は公立学校にまで及んでいます。

 あるネットユーザー「深セン湾小仙姐(シンセンワンシャオシェンジェ)」によると、深セン市羅湖(らこ)区のある高校では、教員の5月分の給料がわずか3分の1しか支払われていなかったといいます。安定した公務員職ですら、もはや安全とは言えない状況です。

 また、深センでは住宅ローンを抱える家庭の多くが給与減に苦しんでおり、深セン市民の1人あたり平均負債額は16.7万元(約350万円)に達し、北京や上海を大きく上回っています。その約60%が不動産関連のローンです。

 近年、深センではリストラや減給が相次ぎ、家庭の収入が急減しました。統計によると、深センの人口のうち90%以上が負債を抱えている状態です。
あるネットユーザーは、深センの現実について次のように語っています。

 「今の深センの実情を話すと、信じられないかもしれない。多くの中央企業や国有企業ですら、半年も給料が出ていないところがある。リストラも無秩序に進められている。南山(なんざん)科技園のオフィスビルが夜でも明るく光っているように見えるが、実は中は空っぽだらけ。あってもシェアオフィスばかり。スターバックスやマクドナルドには、仕事をしているふりをして時間を潰す中年がPCを抱えて一日中座っている。ショッピングモールの中には、丸ごと野菜スーパーに改装された場所もある。今はもう、とにかくお金を使わないこと。節約第一、現金こそ王様だ」

 さらに、別の市民は次のようにも語っています。
 「給料が8か月出ていない国有企業に、あなたはまだ勤めたいと思うか?そうだ、国有企業だぞ。かつては競争率の高い『一生安泰の職』だったのに、今や見る影もない。現在、一部の企業はまさに風前の灯火であり、とりわけ建設関連の企業が深刻である。思い返せば、十数年前にはこれらの企業がいかに栄華を誇っていたか、そして今いかに凋落しているかが分かる」

深センの街に失業者があふれ、路上で眠る人々も

 さらにショッキングなのは、街頭で寝泊まりする失業者が目に見えて増えていることです。ネットユーザー「996Rainmaker(きゅうきゅうろく・レインメーカー)」によると、深セン市の龍華(りゅうか)地区にある龍華バスターミナル、広場、公園などでは、失業者たちが路上で夜を明かしているといいます。「996」 は中国のIT業界などでよく知られるスラングで、朝9時から夜9時まで、週6日働く労働体制を意味します。

 福田(ふくでん)区のCBD(中央業務地区)の中心部ですら、高架橋の下、地下鉄の出入口、オフィスビルの裏通りなどで、ダンボールを敷いて眠る人の姿が見られるようになりました。中には、失業したプログラマーや建設作業員、フードデリバリーの配達員なども含まれています。

 企業の倒産が加速するなか、特に香港資本や台湾資本の企業の撤退が顕著です。米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が昨年9月に発表した報告書では、「台湾企業の57%以上がすでに撤退を検討中、もしくはすでに撤退を開始している」と指摘しています。その理由は、コストの上昇やサプライチェーンの不安定化、政策環境の悪化などによるもので、多くの経営者が、深夜に設備を密かに解体して撤退を図るほど、逼迫した状況に追い込まれているとされています。

上海も経済低迷 中産階級が「生きている意味がない」と絶望

 国際都市・上海も状況は芳しくありません。公式発表では、2025年第1四半期のGDP成長率は5.1%とされていますが、実際の市民生活との乖離は甚だしいものです。

 コロナ禍以降、上海の街は明らかに閑散とし、地下鉄はガラガラで、市中心部の人通りもまばらとなっています。オフィスビルの空室率も年々上昇しています。
2024年、上海における「地方からの常住人口(地方出身者で居住実績が長い者)」はついに1000万人を下回り、前年同期比で23万人の減少となりました。それに伴い賃貸市場も冷え込み、マンションの空室率は急上昇しています。

 こうした中で、上海の中産階級も破産の危機に直面しています。ネットユーザー「上海人」は、自身の体験をこう語っています。
 「私はかつて典型的な中産だった。コロナ前に高額ローンで住宅を購入し、飲食業に無謀な投資をした。だがコロナでレストランが潰れ、住宅ローンを返すために高利貸しから借金を重ね、ついには多重債務に陥って破産寸前にまで追い込まれた」

 中国で最も経済が発展している都市・上海は、今いったいどれほど悲惨な状況にあるのでしょうか。その実情は、にわかには信じがたいほどです。今回の番組では、上海の「今」の最もリアルな姿をご紹介します。

 「起きろよ、兄弟たち。俺は今、上海でフードデリバリーと日雇いをやっている。もうデリバリー配達じゃろくに稼げないから、今はほぼ日雇いがメインだ。ここには水も電気もあるし、ラーフーとワンツァイ(愛称の犬か猫)も一緒にいる。橋の下にはいろんな人が集まっている。フードデリバリーの兄ちゃんもいれば、日雇いの兄ちゃんもいるし、大学生もいる。弱電工事の職人もいれば、高圧電気の技術者もいて、トラック運転手もいるのだ」

 「皆に上海の実体経済の現状を見せたい。姉妹たち、ここは上海の七浦路である。かつては一つの店舗を借りるのも困難なほどの人気ぶりだったが、今では見向きもされない。市場全体がテナント募集中で、家賃すらいらない、入居してくれさえすれば管理費を払うだけで使わせてくれる。それでも誰も借りようとしない。見ての通り、市場全体の入居率は10%にも満たない状態である」

 「今年の上海における労働者の実情がどうなっているか、知っているだろうか。たとえば、上海のある住宅団地では、全体で約120世帯のうち56世帯が失業または就業待機の状態にあり、失業率は政府が公表する4.2%をはるかに上回っている。

 がらんどうのオフィスビル、閑古鳥の鳴くショッピングモール、そして『985大学(名門大学)』の修士卒業生ですら配車アプリで運転している。大手IT企業の元プログラマーがフードデリバリーをしている――そんな話ももはや珍しくはない。

 2025年の現在、多くの失業者が失業手当すら受け取れていない。地方から北京や上海に出てきた若者たちの行き着く先は、結局のところ故郷の農村に戻ることなのだろうか」

 ある上海出身の中産階級の人物が、海外のネット番組に投稿し、次のように語っています。
 「ここ数年、中国経済が下降するなかで、私の勤める会社はまず年末賞与を廃止し、次に昇給を止め、最終的には給与そのものが削減された。2025年の今、私の月給は9年前よりも4割少なくなっている。

 かつて描いていた中産階級としての夢は完全に崩れ、今では食べていくことさえ難しい。歯を食いしばって(高級住宅区)陸家嘴(りくかし)を出て、老朽化した閔行区(びんこうく)の小さな古いアパートに引っ越した。毎日満員電車に揺られて通勤し、倹約に努めても生活は赤字だ。毎月、家賃と車のローンを払えば、銀行口座に残るのはわずか数百元(約1万円程度)。食事は出前アプリの割引クーポンに頼り、服も2年間一枚も買っていない。

 かつては自分が『勝ち組』だと思っていたが、今では生きていること自体が恥ずかしいと感じるようになった。私の境遇は、上海における最下層の民衆のほんの一例にすぎない。この都市には、かつて雲の上にいた人々が谷底へと落ちていく姿が、あまりにも多く見られるようになっている」

 ネット上では、こんな声も見られます。
 「上海の崩壊は、単なる経済の崩落ではない。希望そのものの崩壊だ。その根源は何か?それはコロナ禍でもなければ、国際情勢の悪化でもない。この国の上から下まで貫かれた独裁体制が、あらゆる希望の芽を摘んでしまったのだ」

 深センから上海へ、かつて「成功の象徴」「豊かさのモデル」とされた大都市が、今では重苦しい空気に覆われています。これは経済の一時的な調整にすぎないのか、それとも中国経済の長期的な衰退の始まりなのか。あの栄華を誇った都市に、未来はあるのでしょうか。

(翻訳・藍彧)