中国経済をめぐって、再び複数の企業に関する経営破綻が報じられ、各方面から注目が集まっています。ニューヨーク市場に上場している中国のクラシファイド広告サービスを提供する「58同城(ウーバン)」では最近、大規模なリストラが行われたとの衝撃的な情報が広がっており、新エネルギー車産業の代表格と見なされていた「哪吒(ナータ)汽車」についても、破産申請が提出されたと報じられています。

58同城」の大量解雇が波紋 不動産崩壊の影響が広がる

 「58同城」は、中国本土で広く知られる生活情報サービスプラットフォームで、住居探し、求人、家事代行など多岐にわたるサービスを提供してきました。報道によると、同社は最近、事前通告もないまま突然リストラを実施し、従業員のおよそ20〜30%、最大で1万人近くが対象になる可能性があるとされています。特に技術部門と地域サービス部門が中心です。

 このニュースは瞬く間に中国の主要なネットプラットフォームで話題となりました。影響を受けた従業員の中には、SNS上で「何の予兆もなく突然解雇通知を受けた」と明かす者も多く、将来の生活に不安を抱えている様子がうかがえます。

 台湾の南華大学の孫国祥(そん・こくしょう)准教授は、58同城の困難は中国全体の経済低迷による消費需要の落ち込みを反映していると指摘しています。彼は「企業が採用規模を縮小し、個人の消費意欲も減退している現在、採用情報や生活サービスに依存する58同城のようなプラットフォームが苦境に陥るのは当然の流れである」と分析しています。

 一方、不動産市場の長期低迷も、サービス業プラットフォームに大きな打撃を与えているとみられます。米国の財拡不動産投資会社の代表である蔣品超(しょう・ひんちょう)氏はこう指摘します。かつて都市部に大量に流入していた農民工(地方出身労働者)は、58同城の主要ユーザー層でした。彼らはこのプラットフォームを通じて、賃貸住宅や仕事の情報を得ていたのです。しかし、相次ぐ不動産企業の破綻や建設プロジェクトの停止により、多くの農民工が失業し、故郷へ戻らざるを得なくなっています。これが賃貸や生活サービスの需要激減を招いているのです。

 「つまり、58同城は『賃貸部隊』を失ったことになる。また、都市の住民も生活に余裕がなくなり、引っ越しや住宅のグレードアップに消極的になっている。全体として市場は冷え込んでいる」と蔣氏は述べ、不動産経済の停滞が他業種にも波及していると分析しています。

哪吒汽車も破産申請 民間企業同志の競争で国営企業に敗北

 さらに衝撃的だったのは、新エネルギー車産業のスター企業とも言われた哪吒汽車(現・「合衆新エネルギー自動車股份有限公司」)が、危機的状況に陥ったことです。6月19日の中国メディアによると、債務問題により破産申請が提出され、総額約10億元(約220億円)相当の株式が凍結されたといいます。

 哪吒汽車は、かつて高いコストパフォーマンスの電気自動車で市場に参入し、一時は注目を集めていました。しかし、現在の中国自動車業界は競争が激化し、価格競争も頻発しています。そのような中で、核心技術や資金力に欠ける企業は生き残るのが難しくなっていまです。

 蔣品超氏は次のように述べています。「哪吒汽車は典型的な例だ。低価格で市場を奪おうとしたが、比亜迪(BYD)のような大手メーカーが次々と値下げ販売を行えば、彼らは持ちこたえられない。さらに重要なのは、中国の政策が国有企業を優遇し、民間企業への支援が乏しいことだ。民間企業は、政策の冷遇・資金調達の困難・市場での圧迫という三重苦に直面している」

これはまだ「大不況」の入り口にすぎない

 多くの分析では、中国共産党政権がここ数年強調している「国有企業主導」路線が、「国進民退」(国営企業の台頭と民間企業の衰退)を加速させ、民間企業の生存空間をさらに圧迫していると指摘されています。蔣品超氏は、「習近平政権は政策面で国有企業を優遇しており、結果として多くの民間企業が資金や制度的支援を得られず、倒産に追い込まれている」と述べています。

 また、孫国祥氏は、現在中国が直面しているのは単一の企業や産業の問題ではなく、経済構造全体の歪みに起因する危機だと指摘しています。「不動産と自動車は中国経済の二本柱であり、不動産はかつてGDPの約30%を占めていた。現在、不動産市場は崩壊し、自動車市場も苦境にある。両方の柱が同時に崩れれば、経済全体が深刻な景気後退に陥るのは避けられない」

 こうした状況を受けて、複数の経済学者が「現在の中国経済は『減速』の段階をすでに超えており、本格的な大不況に突入しつつある」との見方を示しています。

 蔣氏は「新エネルギー車業界は、今まさに破綻が始まったばかりで、今後さらに多くのメーカーが倒産し、業界内での大規模な淘汰が進むだろう。現在すでに不況状態にあるが、まだ底が見えない。今後さらに悪化する可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。

 米国サウスカロライナ大学の謝田(しゃ・でん)教授も、「中国経済は持続的な厳冬に突入しつつある」と述べました。「不動産企業や自動車企業の破綻が相次ぎ、大型のサービス系プラットフォームも次々と倒れている。この冬はまだ終わっておらず、今後もっと冷え込むことになる」

連鎖する打撃 社会全体に失業の嵐が吹き荒れる

 不動産と自動車という二大産業の衰退は、中国全体の雇用市場にも甚大な影響を及ぼしています。孫氏によると、これらの産業はもともと雇用吸収力が高く、建築、建材、自動車部品、生産設備、広告、人材サービスなど、関連する多数の上下流産業も動かしているため、いったん中核産業が崩壊すれば、サプライチェーン全体に壊滅的な打撃が及び、悪循環が生じるとのことです。

 「企業の業績悪化がリストラを生み、失業者の増加が消費低迷を招き、その消費の落ち込みがさらに企業の経営を圧迫する。これはまさに典型的な経済下降スパイラルである」とも述べ、現在の中国経済はすでに「深刻な景気後退段階」に突入していると指摘しました。

 蔣氏は最後に、「もしこの経済危機が農村部や社会の最下層へ拡大すれば、社会的な不安や混乱に発展する可能性がある」と警告します。
 「中国には数多くの農民工がいるが、彼らには土地もなく、都市における安定した雇用の機会もない。もし生活手段を完全に失えば、大規模な社会運動が起こりうる。最悪の場合、かつての李自成(明末の農民反乱の指導者)による農民反乱のような事態にまで発展する可能性もある」とまで語りました。

 58同城での大規模リストラ、哪吒汽車の破産、そして民間企業の相次ぐ崩壊。こうした現象は、中国が現在、構造的な経済危機のただ中にあることを浮き彫りにしています。企業倒産の波が拡大し、失業率が上昇し、内需が低迷する中で、中国共産党政権が社会不安の拡大をどう防ぐかが、今後の最大の課題となるでしょう。

(翻訳・藍彧)