中国・河南省の北部や中西部では、6月30日深夜から7月1日未明にかけて記録的な豪雨が降り、各地で鉄砲水が発生しました。南陽市西峡県や嵩県などでは川が急激に増水し、道路やインフラが大きな被害を受け、多くの住民や観光客が取り残されました。河南省応急管理庁によりますと、1日、午前の時点で死者は2人、行方不明者は6人となっており、救助活動が続いています。

 河南省気象台によりますと、6月30日午前6時から7月1日午前6時にかけて、北中部や西部で雷雨や集中豪雨が発生しました。嵩県の白雲山は226.9ミリ、西峡県の老界嶺では225.3ミリ、西峡県太平鎮でも189.6ミリの降水を記録しました。太平鎮では1時間に最大99.8ミリという激しい雨が降り、蛇尾河などの河川が急激に増水し、周辺の交通や人々の生活に大きな影響を及ぼしました。
 
 SNSには、山間部から鉄砲水が滝のように道路を流れ落ち、橋が崩れ、道路が寸断される様子を撮影した動画が多数投稿されています。夜の暗闇の中、赤いテールランプを点灯した白い乗用車が洪水に流され、道路脇で斜めに止まっている場面や、稲光が走る空の下で激しく雨が降り続いている様子も映っていました。夜が明けると、橋の上には流木や岩などのがれきが大量に積もり、道路は寸断され、複数の車が濁流に浸かっている状況が確認されました。
 
 現地からの映像では、場所によってはコンクリート舗装が盛り上がったり陥没したりしており、河川沿いの木々が根こそぎ倒れ、車両が洪水に流されて変形している様子も映っています。
 
 西峡県の老界嶺景勝地に滞在していた観光客の郭一さんは、一夜の恐怖を振り返っています。郭さんによりますと、6月30日午後7時ごろから雨が降り出し、9時ごろには急に雨脚が強まり、宿泊していた民宿が停電しました。携帯電話の電波も途切れがちになり、午後10時ごろには民宿周辺の道路が冠水し始めたそうです。郭さんは、外の車内から子どもの泣き声が聞こえるのを耳にし、友人と一緒にロープを使って車に近づき、乗っていた人々を救助しました。しかし、その後、水かさはさらに増し、車は結局濁流に流されてしまったとのことです。
 
 7月1日午前7時ごろ、郭さんたちは山を下りようとしました。しかし、主要な道路はすでに激流で寸断され、車でも徒歩でも通れない状況でした。老界嶺景勝地の出口付近では、100人以上の観光客が救援を待っていたそうです。付近の民宿の経営者によりますと、景勝地には上りと下りの二つの道路がありますが、下り側の道路は洪水で破壊され、上り側にある自身の民宿は被害が比較的少なかったと話しています。土石流で車両が流される被害も出ており、景勝地はその後、やむなく閉鎖されました。老界嶺景勝地は1日朝、SNSの公式アカウントを通じて臨時閉園を発表しました。強い雨による一部施設の破損を理由に挙げ、再開時期は改めて知らせるとしています。
 
 隣接する白雲山景勝地でも、同様に危険な状況が発生しました。河南省のSNS利用者の一人は、白雲山で土砂崩れに巻き込まれた体験を語っています。6月30日夜、この利用者は友人2人と車で嵩県へ向かっていましたが、道中は小雨が降り続いていたものの、山のふもとに着いたところで突然激しい豪雨に見舞われたそうです。道端では「今夜は泊まったほうがいい」と声をかける人もいましたが、3人はその忠告を振り切り、山道を進みました。
 
 しかし、わずか1キロも行かないうちに山から流れ落ちる雨水が小川のように道路を勢いよく流れ始め、恐ろしくなって車を降り、近くの民宿のロビーに避難しました。3時間以上待機したものの、雨はまったく弱まらず、宿泊を申し出ましたが満室で泊まれなかったそうです。深夜12時過ぎには通信も電気も途絶え、真っ暗で寒い中で過ごしたとのことです。やむを得ず再び山を登ろうとしましたが、わずか300メートル進んだところで水深が深すぎて進めなくなったとのことです。その時に、懐中電灯を手に道路を調べていた2人組に出会い、さらに先に民宿があると聞き、ようやく宿泊先を確保できたそうです。翌朝5時すぎに起きると、宿の脇の山肌がすでに崩れていたと話しています。
 
 7月1日朝には、洛陽市嵩県の白雲山景勝地も閉園を発表しました。豪雨の影響で6月30日から臨時閉園しており、再開時期は天候を見て決めるとしています。景勝地の職員は取材に対し、豪雨や土石流で景勝地内の道路が寸断され、観光客の車が山を下りられない状況だと述べました。しかし、取り残されている観光客の具体的な人数については明らかにしていません。
 
 今回の豪雨は、副熱帯高気圧の西への張り出しや南北の気流のぶつかり、さらに複雑な地形が重なった典型的な現象で、短時間に激しい雨をもたらしました。近年、中国では「百年に一度」と言われる豪雨が繰り返し発生しています。2021年の鄭州では、わずか1時間で200ミリを超える雨が降り、市街地が大規模に浸水しました。地球温暖化の影響で極端な気象が頻発する中、今回の河南省の被災状況は、インフラの耐災害性や緊急対応の強化が急務であることを改めて示しています。

(翻訳・吉原木子)