アメリカ・カリフォルニア州のロサンゼルスで、不法移民の取り締まりをめぐる抗議活動が過激化しています。抗議活動の参加者らは政府機関を襲撃したほか、道路沿いの車両などにも放火しています。現地の情報によると、参加者の一部は組織的な行動をしており、「何者かに動員されているのではないか」との憶測が広がっています。
不法移民の摘発への反発
アメリカ移民・関税執行局(ICE)は今月6日、ロサンゼルス市内で不法移民の摘発を実施し、ギャング関係者を含む100人以上を拘束しました。これに対して一部の団体や市民が反発し、数千人規模の抗議活動に発展しています。
参加者の一部は暴徒化し、公共施設や車両が破壊されるなどの被害が出ています。現地警察によりますと、ICE職員が投石を受けるなどして負傷する事案も報告されています。
こうした状況を受けて、トランプ大統領は9日、国民警備隊約2000人の派遣を発表しました。大統領はSNSで「ロサンゼルスは不法移民と犯罪者によって支配されている。秩序を回復し、違法行為には断固として対処する」と述べました。
一方、カリフォルニア州のニューサム知事とロサンゼルスのバス市長は、ICEの強硬な取締り方針を批判しており、連邦政府の対応に対しても反発しています。
組織的な動員?
抗議活動が過激化するにつれて、参加者の一部は何かしらの組織によって動員されたのではないかという指摘が出ています。
現地住民によると、同じデザインのプラカードを持った若者らが集団行動をする様子が目撃されている他、抗議者に盾や木材などを配布する車両の存在も確認されたとのことです。
米国メディア「Epoch Times」の記者ジョシュア・フィリップ氏によると、抗議活動の現場では参加者らが無線機を使って連絡を取り合っていたとのことです。「これは明らかにプロによる動員だ」とジョシュア・フィリップ氏は指摘しました。
自動運転車を呼び出し、放火する手口も横行しています。抗議参加者らは自動運転車「Waymo」を抗議活動の現場に呼び出し、放火し破壊しています。警察当局は、これらの破壊行為には極左暴力集団「Antifa」などの組織が関与しているとみて捜査を強化しています。
抗議活動の背後に「赤い影」
ロサンゼルスでの抗議活動については、複数のアメリカ国内メディアが、活動を主導した団体の背後に外国勢力がいる可能性を指摘しています。
極左系政治団体「社会主義解放党(PSL)」は、今回の抗議活動のプラカードを製作したとされています。「社会主義解放党(PSL)」は過去にも大学キャンパス内での激しい反イスラエル抗議活動を主導しており、一部の構成員がテロ関係者との関係を指摘された例も報告されています。
そして、「社会主義解放党(PSL)」をはじめとした一部の団体に対して資金提供をしているとされるのが、アメリカの実業家ネヴィル・シンガム氏です。アメリカの非営利シンクタンク「ネットワーク感染研究所」が2024年に発表した報告書によりますと、PSLはネヴィル・シンガム氏およびその妻ジュディ・エバンス氏から資金的な支援を受けているとのことです。
シンガム氏は、かつてソフトウェア企業を経営していた人物で、企業売却後は左派系の政治運動を支援しています。シンガム氏は過去に中国共産党主催の統一戦線工作関連イベントに出席した経歴があり、中国共産党との関係性を指摘する声が上がっています。
シンガム氏の妻で市民運動団体「コード・ピンク(Code Pink)」の共同創設者でもあるジュディ・エバンス氏は、台湾や新疆ウイグル自治区に関する問題において、中国共産党の立場を擁護する姿勢を示してきました。
トランプ氏「刑務所送りにすべき」
アメリカのドナルド・トランプ大統領は9日、ロサンゼルスで続く抗議活動について、記者団に対し、「問題を引き起こしているのは扇動を行う者たちで、反逆者だ。彼らは悪者であり、刑務所送りにすべきだ」と述べました。
抗議活動への対応をめぐって対立しているカリフォルニア州のニューサム知事については、「個人的には好きだが、著しく無能だ」と批判しました。
トランプ大統領は同日、自身のSNS上で「カリフォルニアに州兵を派遣した判断は正しかった。その対応がなければロサンゼルスの街は破壊されていただろう」と投稿しました。
別の投稿では、トランプ大統領は「覆面を着用する者を直ちに逮捕せよ」と書き込み、厳しい対応をしなければならないと強調しました。
(高瀬 陽一)