5月の大型連休が終わったばかりの中国では、多くの社会不安を引き起こす事件が発生し、社会全体で、大きな関心を集めました。その中でも、北京地下鉄が、連休後に突然、保安検査措置を強化したことが話題となっています。
5月8日、大量のソーシャルメディアでの投稿によると、連休終了後、北京地下鉄は保安検査の強化を実施しました。保安検査では、空の弁当箱や空のビニール袋、鍵などの物品も一つ一つ検査しなければならないということです。これに対し、あるブロガーは「北京地下鉄がまるで世界の終わりみたいだ」と嘆きました。抖音(Douyin)では、多くのブロガーが動画を投稿し、朝夕のラッシュ時間帯でも、すべての荷物に対しての保安検査を実施しなければならないことに不満を漏らしています。また、保安検査ゲートで長蛇の列を作り、検査通過までの時間がかかる為、多くの乗客が、会社に遅刻してしまっていると訴えています。
あるブロガーは「今の地下鉄車内では、もう足を地面から離さなくてもいいぐらいだ」と自嘲しました。また別のブロガーは、「帰宅時には、保安検査員から、空の弁当箱を保安検査に通すよう求められた。また、帰りは、豊台科技園駅が人であふれかえり、ぶつかりそうだった」と語っています。さらに、「遠くから列を成し、次々と荷物を保安検査に通す。最近の北京地下鉄は、まるで世界の終わりだ」と不満を示す声も上がっています。
多くの北京のネットユーザーがソーシャルメディアのコメント欄で不満を表明しました。「最近始まった新しい規定では、荷物の大小や、中身の有無に関係なく、すべて保安検査を通さなければならない。正直、意味がわからない。今朝、カラのバッグですら保安検査に通された。朝夕のラッシュ時には、どの路線も混雑して大変だ」といった声が寄せられています。
一部の市民は過剰な保安検査が通勤効率を損なうだけでなく、感染リスクも高める可能性があると疑問を呈しています。5月7日、ある抖音(Douyin)のブロガーは動画で疑問を呈しました。「北京はいったいどうしたんだ?空の袋でもすべて保安検査機を通さなければいけないのか?毎日弁当を持っていく度に、X線で検査されるなんて健康に悪い。」と多くのブロガーがコメントし、「昨日の朝から突然始まったんだ!帰宅時に、保安検査員が、弁当箱を取り出して検査しろと言った。中身は空だと説明しても、空でも検査が必要だと主張し、本当に腹が立った。帰宅時には、豊台科技園駅が大混雑していて、隣の人と、もう少しで喧嘩になりそうだった」と状況を詳しく語っています。
こうした状況に対して、北京地下鉄の職員と思われるネットユーザーが、「どうしようもないんだよ。毎日会議でこの問題が話し合われている。保安検査をしない荷物が見つかると、1回200元の罰金だからね」と事情を説明しました。また、ある保安検査員は「今日上司が、人手不足の為、働き手を募集している」とコメントしました。
一方、ネット上では、今回の保安検査強化の実施は、「5月大型連休中に発生した複数の社会事件を受けた一時的な安全対策ではないかという推測も広がっています。
実際、5月大型連休期間中、中国本土の各地で社会的事件が相次ぎ、議論を呼びました。
5月4日、山東省滕州市では高速走行中の乗用車が突然制御不能になり、バス停に突っ込み、多くの死傷者が出ました。警察の発表によれば、運転者は29歳の男性で飲酒運転が原因とされています。現場は大混乱に陥り、倒れた乗客や苦痛の表情を浮かべた人々が見られ、動画がSNS上で拡散されました。
5月3日、重慶市では54歳の男性が路上で突然暴れ、ナイフで通行人を刺し、複数の負傷者が出ました。
5月2日、福建省福州市では、交差点で自動車が信号を無視して突っ込み、複数の負傷者が出ました。警察発表では操作ミスが原因とされていますが、具体的な死傷者数は明らかにされていません。4月22日には、浙江省金華市の、鮮孟小学校の前で下校時に車が群衆に突っ込み、複数の児童や保護者が負傷しました。
北京地下鉄の保安検査強化をめぐる社会的議論は続いています。多くの市民が、過剰な保安検査が通勤に支障をきたし、感染リスクを高めるとして不安を訴えています。一部の市民は「保安検査強化がいつまで続くのか?当局の説明が欲しい」と望んでいます。また、「安全を確保しながらも、よりスマートな保安検査方法を導入すべきではないか?」との提案もあります。しかし、現時点では、北京地下鉄側からの公式説明はなく市民の間では不安と困惑が広がっています。
(翻訳・吉原木子)