中国経済の減速に伴い、企業の倒産や給与の未払いといった問題が各地で頻発しています。こうした中、浙江省桐郷市(とうきょう-し)烏鎮鎮(うちんちん)にあるLED照明製造会社「生迪光電科技股份有限公司(サンディ・オプトエレクトロニクス)」が破産を発表し、給与の支払いを求める従業員らの抗議デモが発生しました。抗議デモは警察によって強制的に制圧され、複数の労働者が拘束されたとみられます。
ソーシャルメディア『X』には複数の動画が投稿され、5月1日に、生迪光電の従業員たちが工場の外や烏鎮鎮政府の庁舎前に集まり、「給料を返せ」「賃金を払え」といったスローガンを叫んでいる様子が映っています。これに対し、地元政府は大規模な警察官を動員し、抗議の阻止と参加者の拘束を試みました。
5月2日、ラジオ・フリー・アジアは同社の元従業員・馮(ふう)さんに取材を行いました。馮さんは、抗議デモが実際に発生していることを認めたうえで、同社が約半年前から給与の支払いを滞らせていたことを明かしました。工場は数日前まで稼働していたにもかかわらず、突然の破産発表とともに未払い賃金の支払いを拒否されたため、従業員たちは自発的に行動を起こしたといいます。
「今はどこも私たちのことを聞いてくれない。会社はとにかく給料を払おうとしない。私たちは毎日抗議に行くが、無駄である。半年も賃金が支払われていない。仕事を探すつもりだが、見つからなければ実家に戻って農業をするしかない」と馮さんは語りました。
現地では4月28日以降、約1000人の従業員が連日、工場敷地内に集まり、賃金の支払いを求めて抗議を続けています。現場に現れた企業の関係者によると、同社は取引先から訴えられた結果、銀行口座を凍結されており、支払い能力がない状態だと説明しました。
4月29日には多くの労働者が烏鎮鎮政府へと向かい、地元政府による介入と問題解決を要請しました。しかし、ある労働者は海外メディアに対し、「市や鎮の政府は一切対応しようとせず、逆に私たちを妨害してきた。十数人が警察に連行された。私たちは法を犯していない。ただ、汗と涙の結晶である給料を返してほしいと訴えているだけだ」と語りました。
公開されている情報によると、生迪光電は2000年に設立され、浙江省桐郷市烏鎮鎮の民合経済園区に所在しています。同社は照明器具、光源部品、装飾照明の製造・販売を主力としおり、かつては地元政府から「重点企業」として大々的な支援や宣伝を受けていた実績があります。
公式サイトによれば、生迪光電の総投資額は10億元(約200億円)を超え、従業員数は約3000人です。LEDランプの年間生産量はおよそ2億個に達し、欧米やオーストラリアなどに輸出しており、スマート照明市場では「世界第2位」を自称していました。
現在のところ、生迪光電および烏鎮鎮政府は本件について一切の公式な声明を出しておらず、従業員たちが未払い賃金を取り戻せたかどうかは不透明なままです。
全国に広がる「給料返せ」運動 各地で労働者の抗議相次ぐ
生迪光電の破産とそれに伴う労働者による未払い賃金の抗議は、決して特殊な事例ではありません。中国各地では、同様の賃金をめぐる抗議行動が相次いでおり、以下に紹介するのはその一部にすぎません。
4月25日、内モンゴル自治区通遼市の「金燦御園(きんさんぎょえん)」住宅建設現場では、賃金の支払いが滞ったことに抗議する建設労働者たちが、ビルの屋上に集まり、身を乗り出すなどの危険な行動で雇用主に強い抗議の意思を示しました。
4月26日から27日にかけては、重慶市の解放碑エリアにある「2077サイバーパンク都市プロジェクト」の改装工事に従事する作業員たちが、工事現場や警察署に出向いて賃金の支払いを求めました。
4月27日には四川省遂寧市の「上達電子」工場でストライキが発生しました。従業員らは2023年6月以降、社会保険料が支払われておらず、今年の給与も未払いだとして抗議に踏み切りました。
4月28日には陝西省西安市団結村の労働者十数人が、地元の建設プロジェクト事務所を訪れ、2月から滞っている給与の支払いを求めて交渉に臨みました。
こうした抗議デモの背景について、独立系評論家の季風(チーフォン)氏はラジオ・フリー・アジアの取材に応じ、中国経済はすでに米中貿易戦争が始まる前から深刻な構造的問題を抱えていたと指摘しました。企業の多くは資金繰りに苦しみ、運営が立ち行かなくなるケースが続出していたといいます。
「米中間の関税対立は、そうした企業への圧力にさらに拍車をかけた。その結果として、倒産や閉鎖に追い込まれる企業が急増している」と季氏は述べました。
また、中共当局は社会不安の拡大を防ぐために、治安維持体制を強化しており、抗議に参加した労働者のみならず、企業経営者にも圧力を加えるようになっているといいます。
「今回の生迪光電のように、大規模な抗議とそれに続く拘束が伴う事件は、今後さらに増えていくでしょう」と季氏は警鐘を鳴らしました。
米中貿易戦争の激化で 中国工場の「倒産ラッシュ」懸念高まる
韓国メディアは、米国が中国製品に対して高関税を課し続けた場合、中国では大規模な工場閉鎖の波が加速する可能性があると分析しています。
米中貿易戦争が本格化した2018年当時、中国の電子機器、家具、繊維業界をはじめとする多くの製造業者が、ベトナムなどへ生産拠点を移転し、関税を回避しようとしました。しかし現在、米国はベトナムからの輸入品にも最大46%という高関税を課しており、かつての「避難先」としての魅力は大きく損なわれています。
専門家らによれば、中国国内の中小企業は、価格を引き下げて関税のコストを吸収する余力が乏しく、すでに多くの企業が操業停止の瀬戸際に立たされています。業界全体として再編に向かうかどうかは、今後の情勢次第と見られています。
その一方で、トランプ米大統領が導入した「800ドル未満の商品に対する関税免除の撤廃」も、中国製品の輸出に打撃を与えています。この政策により、中国および香港における800ドル以下の商品の免税措置が廃止され、中国の越境EC(電子商取引)に大きな影響が及んでいます。
中国の大手越境ECプラットフォーム「外貿家(Waimaoja)」は、この措置が継続された場合、わずか3か月のうちに製造業のさらなる倒産ラッシュを引き起こし、世界的なサプライチェーンにも深刻な供給遅延を招くおそれがあると警告しています。
一部のアナリストは、トランプ大統領が2期目を開いて以来、対中関税が一部製品では最大145%にまで引き上げられており、多くの米企業が中国への発注をキャンセルし、これが短期間で注文数の急減につながり、輸出型製造業に深刻な影響を与えていると指摘しました。
「とくに広州地域に多くある小規模工場にとっては、壊滅的な打撃である」とある業界関係者は語ります。多くの米国バイヤーが直前で注文をキャンセルする例が相次ぎ、工場は大量の在庫を抱えることとなり、資金繰りの悪化に直面しています。
統計によると、米国が中国から輸入している商品のうち、約70%がリチウム電池、スマートフォン、ディスプレイ製品であり、ゲーム機は90%、オーブンや電気毛布、カルシウム錠、目覚まし時計などに至っては99%以上が中国製です。専門家は、高関税の影響により、これらの製品が米市場から姿を消す可能性があると指摘しています。
また、中国の製造業者がすぐに代替市場を見つけることができなければ、こうした企業は相次いで倒産に追い込まれるおそれがあるとみられています。
(翻訳・藍彧)