米国が中国製品に対して新たに課した145%の追加関税が今週正式に施行され、中国の対米輸出体制に激しい衝撃をもたらしています。
複数のメディアによると、145%の関税政策を決定されて以来、米中間の貨物輸送量は激減し、これに伴い、多くの航空便や貨物船の運航が相次いでキャンセルされ、中国の輸出業者は次々と出荷を停止しています。

 これまで活況を呈していた上海港の輸出風景も、わずか数日のうちに一変し、にわかに静まり返りました。ネット上では不安や不満の声が急速に広がり、民間の間では深刻な懸念が高まっています。

米中貿易戦争が激化 海運・空運市場にも深刻な打撃

 トランプ政権による対中関税の発表以来、米中間の貿易摩擦はさらに激しさを増しています。外貨獲得の柱となっている浙江省や広東省といった中国の主要輸出地域では、工場の操業が停止状態に陥り、本来は国外に出荷される予定だった大量の製品が倉庫に山積みとなっています。

 中国の経済メディア「財新網」の報道によると、4月10日時点で、上海の主要港である洋山港と外高橋港では、米向けの貨物船の姿はほとんど見られませんでした。数日前までは、これらの港では新関税が発効する前に出荷を終えようと、多くのコンテナ船が入れ替わり立ち替わり接岸し、積み込み作業に追われていたといいます。

 しかし、最終便に間に合わなかったコンテナの多くが、現在は港の貨物ヤードに積み上げられたままとなっており、多くの荷主がすでに通関の取り消し手続きを進めています。

 上海にいる広東省の輸出業者・錢(せん)さんは11日、ラジオ・フリー・アジアに対し、現地の様子をこう語っています。
 「昨日、友人に連れられてレストランに行った。ここは上海の中でも特ににぎやかな通りにある店だったが、ウェイターは十数人もいたのに、客は私と友人の二人だけだった。私は『なぜこんなに空いているのか?』と尋ねた。すると友人は『以前はこの店、一階も二階も常に満席だった。しかし昨日は2階が閉鎖されていて、1階も私たちだけだった』と言っていた」

 錢さんは続けてこう嘆きました。「上海は1843年の開港から1949年までの100年以上、戦争すら発展を止められなかったのに、今は見る影もない。よく知る広東省の塩田港でも、上海港と同様の現象が起きている。港にはコンテナが山のように積み上げられており、出港する貨物船の数は極めて少ない状態だ」

米中間の海運便が大幅削減へ 航空市場も深刻な影響

 今後1カ月、米中間を結ぶ海上輸送便が大幅に減少する見通しです。中国の証券会社・ホワタイ・セキュリティズ(華泰証券股分有限公司)の統計によると、4月14日から5月11日にかけて、中国から米西海岸と東海岸への航路で、合計26便の運航がキャンセルされる予定です。この間のコンテナ輸送能力はおよそ40%削減される見込みです。

 5月11日までには、米中航路全体の輸送能力は23万TEU(20フィートコンテナ換算)まで落ち込むと見られています。

 航空貨物市場にも打撃が及んでいます。「財新網」によると、中国南部のある貨物輸送代理業者は「来週から米国向けの一般貿易貨物は9割減となる見通しだ。主要航空会社も貨物便を大幅に減便している」と語っています。

 突然の高関税の導入によって、輸出業者と取引先との間で新たなコスト分担交渉が必要となっており、この影響で多くの貨物が出荷停止に追い込まれているのが現状です。

米国向け貨物船の予約が半減 中国企業にかつてない打撃

 香港の『明報』によると、米中間の海上物流に携わる関係者の話として、4月10日、中国各地の港湾から米国に向けて出航するコンテナ船の予約量が、平常時と比べて5割以上落ち込んでいることが明らかになりました。この関係者は「同業者らと情報交換した結果、複数の港で一斉に予約数が激減している」とし、「関税戦争は先行きが読めず、米国に到着した貨物の一部は、買い手が受け取りを拒否することにより、最終的に中国に返品される可能性もある」と指摘しています。

 深セン市の越境EC協会の王馨会長は、「これは前例のない衝撃であり、高関税は輸出商品のコスト構造を根本から変えてしまい、物流コストの高騰も重なって、中国の販売業者がアメリカ市場で生き残るのは非常に困難になる」と述べ、「この関税戦争は特に中小企業への打撃が大きく、中国国内の失業率を急激に押し上げる恐れがある」とも警鐘を鳴らしています。

 アマゾンを通じて越境EC事業を展開している深センの事業者・馮戴維氏は、「すでに販売価格を30%引き上げ、取り扱う商品のカテゴリーや広告を減らした。そのぶんのリソースを米国以外の国へと振り向けている」と現状を明かしました。

 また、広東省汕頭市で玩具工場を営むあるメーカーは、「今年はアメリカからの注文が一件も入っていない」と述べました。

民間に広がる沈滞ムード ネット上には悲観の空気

 経済的な圧力の高まりとともに、中国の民間社会では沈滞した空気が一層色濃くなっています。最近、ネット上では「木の皮の食べ方」という皮肉めいた話題が注目を集め、多くのユーザーが「乾燥させ、粉にして、ふるいにかけ、蒸して食べる」といった手順を冗談交じりに共有しています。

 また、ネット上では1980年代から1990年代の生活を懐かしむ声も目立っており、「これからは質素に生きるしかない」といった無力感が漂っています。

 1959年から1961年にかけて中国を襲った「3年大飢饉」の時期、多くの人がニレの木の皮を剥いで食糧代わりにしていたという歴史があります。そのため、中国には「ニレの皮の食べ方」に関する知識が今なお語り継がれています。

 1980年代から1990年代にかけては、中国共産党が「改革開放」政策を進めたことで、人々の生活は大きく改善されました。現在、再びこうした過去を持ち出すネットユーザーたちの多くは、現政権の一連の誤った政策が、現在の窮状を招いたのだと、皮肉と批判を込めて訴えているのです。

 外需の急速な落ち込みと国内消費の疲弊により、中国経済はかつてない困難な局面に立たされています。ある中国のブロガーは、「2025年は厳しい年だとは思っていたが、これほどとは想像していなかった」と投稿し、多くの共感を集めています。

 江蘇省のネットユーザーである洪さんは、ラジオ・フリー・アジアの取材に対し、「社会全体に広がる悲観的な空気が、今まさに発酵しつつある。高齢の方だけでなく、若者にも深刻な不安が広がっている」と語りました。

 また、山東省青島市の張さんは、現在の経済状況について次のように話しています。「今はどの業界も不況の影響を受けており、輸出関連のビジネスは全体的に苦境に立たされている。特に関税戦争の影響を最も受けているのが広東省と浙江省であり、経済やテクノロジー分野の活動もほぼ停止状態にある。浙江省は欧米向けの軽工業製品、たとえば日用品などを主に輸出してきたが、我々山東では重工業、たとえば工作機械などを主にアフリカの貧困国向けに出荷している。先進国が我々の機械を購入しない。先進国では経済が失敗すればせいぜい大統領が弾劾される程度で済むかもしれない。しかし、こちらで失敗すれば、国家全体が崩壊しかねないのである」

米中関税戦争の余波 世界経済への影響も不可避に

 昨年、米中両国の貿易総額はおよそ5850億ドルに達しました。このうち、米国が中国から輸入した商品は4400億ドルと、輸出額の1450億ドルを大きく上回っており、その結果、米国の対中貿易赤字は2950億ドルに達しました。これは米国の経済規模の約1%に相当します。

 このため、米国が中国製品に高い関税を課したことは、中国の輸出企業や物流業界に大きな衝撃を与えました。今後、米中貿易関係がどう推移するかは、世界経済全体にも深い影響を及ぼすことになるでしょう。

 刻一刻と変化するこの状況の中、国際社会の注目は、中国当局が新たな経済対策を打ち出すかどうか、そして米中間の対立が緩和される余地が残されているのか、という点に集まっています。

 しかし、多くの国民にとって、今もっとも切実な問いは、「この嵐は、あとどれほど続くのか」という現実的な問題なのです。

(翻訳・藍彧)