最近、中国で「若者たちが集団で物乞いをしている」とされる動画がインターネット上で拡散され、大きな話題となっています。映像には、複数の若者がボール紙やスマートフォンを手に、「要飯(食べ物ください)」と書かれた文字を掲げながら、街中の歩道に座り込む様子が映し出されています。この異様な光景は、多くの人の関心を集め、議論を呼んでいます。

 中国メディアの報道によると、この現象は最近、雲南省大理市の古城区で確認されました。若者たちは「要飯」と書かれたボール紙を前に置き、道端で会話を交わしていました。これに対し、一部の人々は興味を示し、「一種の新しい自己表現の形ではないか」と捉える一方で、多くの人々が「理解できない」と困惑しています。
 
 参加者の一人である楊さんによれば、彼が所属する「要飯グループ」は約80人規模であるとの事です。彼が最初に参加したとき、現場には5、6人しかいませんでしたが、通りがかった観光客までもが加わり、わずか10分後には20人以上に増えたそうです。彼は、「この行動は一種の挑戦です。 伝統的な価値観からすれば、非常識と思われるかもしれません。しかし、私たちは固定観念に疑問を投げかけたいのです」と語っています。彼らは他人に迷惑をかけたり、詐欺行為をしたりするわけではなく、むしろ観光客からタバコや酒、飲み物、お菓子などを差し入れられることがあるといいます。
 
 このような若者たちの行動について、インターネット上では理解できないという意見も少なくありません。しかし、一方で、「これは高い失業率のもとで生きる現代の若者たちが、生活への抗争や不満を表現する一つの手段なのではないか」と共感を示す声も上がっています。
 
 イギリスの公共放送BBCによると、中国教育部は、2025年の春から夏にかけて1,222万人の大学卒業生が社会に出ると予測しています。2024年にはすでに1,179万人が卒業し、専門家の間では「史上最も厳しい就職難の年」と呼ばれました。2023年の中国国内の大学卒業生の就職率は55.7%にとどまりました。 2024年に発表された民間の求人プラットフォームの報告では、その割合がさらに55.5%にまで低下していることが明らかになりました。また、2023年末に中国国家統計局は「統計調査の精度向上」を理由に、2023年8月以降、若年層の失業率を公表しないと発表しました。
 
 この決定は、国内外で大きな疑問を呼んでいます。実際、BBCの取材を受けた複数の新卒者と既卒者は、「就職市場の競争が極めて激しく、求職のプレッシャーが非常に大きい」と語り、何度も給与の希望額を引き下げているにもかかわらず、仕事を見つけるのが困難だと述べています。
 
 さらに、外資系企業の雇用機会も大幅に減少しています。中国の第4回全国経済センサスと最新の第5回全国経済センサスのデータによると、外資系企業での雇用者数は、この5年間で783.3万人減少しました。国内企業の経営環境も厳しさを増しています。上海市財政局のデータによると、2022年上半期だけで46万社が倒産し、約310万件の個人事業が廃業しました。
 
 一方、中国政府は失業者の定義を変更し、公式の統計データに影響を与えています。例えば、週に1時間以上働いている人は失業者に含まれないとされ、在学中の大学生や、農村部の農民、長期間、職を探していない失業者も統計の対象外となっています。こうした統計基準の変更により、政府発表の失業率が実態を正確に反映しているのかどうか、多くの疑問の声が上がっています。
 
 中国の前首相である李克強氏はかつて、「GDPが1%増えるごとに、約100万人の雇用を創出できる」と述べていました。その後、産業の統合が進んだことで、現在では1%のGDPが伸びると130万人から150万人の雇用を生み出せるとされています。しかし、中国経済の成長率が鈍化している現在、政府、企業の雇用維持のための経済的なプレッシャーは依然として非常に大きいのが実情です。
 
 今回の雲南省大理市での「集団物乞い」の出来事は、現在の中国社会における深刻な雇用問題を象徴していると言えます。新卒者の就職難、企業の倒産数の増加、統計方法の変更など、若者の雇用環境は悪化の一途をたどっています。政府は雇用対策の強化を進めています。しかし、こうした取り組みが実際にどれほどの効果をもたらすのか、多くの疑問が残ります。若者の生存基盤を支えるための実効性のある政策が、今こそ求められているのではないでしょうか。

(翻訳・吉原木子)