2月5日夜、南京地下鉄10号線で突発的な設備故障が発生し、多くの乗客が市内各所で立ち往生しました。南京地下鉄の公式発表によりますと、江心洲駅から臨江駅にかけて地下水が浸出し、列車の運行が不可能となったため、該当区間を緊急封鎖したとのことです。その結果、運行区間は安徳門駅から緑博園駅、および浦口万匯城駅から雨山路駅までの短縮運行に変更されました。 浦口万匯城駅から緑博園駅の区間ではバスによる代替輸送が実施されることになりました。また、急ぎの用がある乗客には、別の交通機関を利用するよう呼びかけました。しかし、実際の状況は発表とは大きく異なり、数百人の乗客が寒空の下で長時間バスを待ち続け、一部の人は数時間にわたって立ち往生する事態となり、現場は混乱に陥りました。

 現場にいた市民はメディアの取材に対し、「仕事帰りに地下鉄10号線を利用して帰宅しようとした。しかし、緑博園駅に到着したところで突然運行が停止し、長江を渡ることができなくなった。」と語りました。その後、駅を出て代替バスを利用する様、アナウンスが流れましたが、すでに駅の外には多くの人が押し寄せている状況でした。次第に人数が増えていきました。しかし、バスはなかなか到着せず、この市民は約30分間寒空の下で待ち続けたものの、結局、交通手段が見つからなかったそうです。周囲の人達も焦燥感を募らせており、混乱の度合いはますます強まっていったとのことです。

 SNS上では現場の様子を撮影した動画が拡散されました。動画では、地下鉄駅の外の道路に多数の乗客が密集し、バスを待っている様子が確認されました。中にはタクシーを捕まえようとする人もいましたが、大勢の人で溢れ返り、タクシーを確保するのはほぼ不可能な状況だったようです。一部の人はやむを得ず、通りがかった車を止めて、有料で乗せてもらおうとする場面も見られました。また、一刻も早く帰宅する為、徒歩で最寄りのバス停に向かう人もいましたが、沿線のバスもまた混雑しており、結局多くの人が寒空の下で身動きが取れなくなってしまったとのことです。

 2月6日未明、南京地下鉄は再び公式発表を行いました。2月5日16時33分に地下鉄10号線の江心洲駅から臨江駅の区間で設備故障が発生したと発表しました。初期調査の結果、浦口大道と横江大道の交差点付近で地下水が浸出し、列車の運行に支障をきたしたことが判明しました。これにより、該当区間を緊急封鎖し、修復作業を進めていますが、運行再開の目処は立ってとのことです。この発表に対し、市民の間では不満の声が相次ぎました。SNSでは「人が多すぎて、メッセージすら送れない状況だった」「緑博園駅には大勢の乗客がいたのに、バスの本数が少なすぎる」「復職初日に10号線がまさかの運休。現場には千人以上の人がいて、1時間待ってもバスには乗れなかった」などの投稿が相次ぎ、混乱の大きさがうかがえます。

 今回の地下鉄運休事故を受け、インフラの品質に関する議論も巻き起こりました。一部のネットユーザーは、南京地下鉄10号線の開業からそれほど長い年月が経っていないにもかかわらず、地下水の浸出による運行停止という事態に疑問を呈し、建設時の品質管理に問題があった可能性を指摘しています。

 実際、近年、中国本土では地下鉄に関する事故が相次いでおり、都市鉄道の安全性や保守管理の問題が注目を集めています。2024年12月22日には、上海地下鉄11号線の列車が建設工事中のクレーン車に衝突し、車両が大破、運行が一時停止するという事故が発生しました。事故の瞬間を捉えた映像では、列車が高速で走行中に衝突し、激しい衝撃音とともに破片が飛び散る様子が映し出され、乗客が恐怖に包まれてました。

 また、2024年12月21日には、広州南駅で乗客が高速鉄道のドアに挟まれたまま引きずられるという危険な事故が発生しました。しかし、 幸いにも列車の速度が遅かったため、大事には至りませんでした。公式発表によると、この乗客は指に軽傷を負ったものの、命に別状はなかったとされています。

 さらに2024年12月14日には、遼寧省の大連地下鉄3号線の大連駅近くで火災が発生し、現場には黒煙が立ち込めました。火勢が激しく、一時的に運行が停止されました。しかし、公式発表では負傷者は確認されなかったと報告されています。また 、これらの事例以上に衝撃を与えたのは、2023年12月14日に発生した北京地下鉄昌平線の追突事故でした。

 この事故では、西二旗駅から生命科学園駅の区間で2本の列車が衝突し、公式発表では130人が骨折、そのうち3人が重傷、70人が軽傷を負い、直接的な経済損失は約950万元(約2億円)に上ったと報じられました。しかし、事故の発生後、政府の公式発表の信憑性に疑問を呈する声が相次ぎ、負傷者のその後の状況についても公式メディアからの続報は見られませんでした。

 近年、相次ぐ地下鉄関連の事故を振り返ると、多くの都市の地下鉄システムには、 建設時の品質管理、日常的な維持管理、さらには緊急対応に関して依然として多くの課題が残されていることが明らかになりました。

(翻訳・吉原木子)