中国経済の低迷が続くなか、中国共産党当局は「国民が安心して生活し、楽しく祝日を過ごしている」という虚構を作り出そうとしています。最近では、全国各地で都市の美化や照明強化を指示し、旧正月期間中の祝祭ムードを演出しようとしています。しかし、この措置は商店に経済的な負担を強いるだけでなく、行政の乱用を引き起こしています。
最近、山西省大同市では、ある商店主が営業終了後に店内の照明を消したところ、都市管理当局によって深夜に店のドアを叩かれ、さらには鍵を壊されて強制的に店の照明を点灯されるという事件が発生しました。この出来事はインターネット上で大きな議論を巻き起こしています。
複数の中国メディアによると、大同市古城地区の複数の商店主が、旧正月前に政府から通知を受けたそうです。それによると、旧暦12月28日(1月27日)から正月15日(2月12日)までの間、毎晩すべての商店は屋内外の照明を一晩中点灯しなければならず、営業しているかどうかに関わらず、これを遵守するよう求められました。この規定に対し、多くの商店主が不満を抱き、政府の一方的な負担強要だと批判しました。しかし、商店主たちは、当局がここまで強制的な措置を取るとは想像していませんでした。事態はさらにエスカレートし、行政執行部門の職員が強引にドアを壊し、店内に侵入して照明を点灯するという信じがたい状況に発展しました。
2月3日の夜、大同市古城地区で商店を営む岳さんは、夜10時に営業を終了し、屋外の看板や装飾灯はそのまま点灯させていましたが、店内の照明は消して店を施錠し帰宅しました。しかし、その約1時間後の午後11時過ぎに、都市管理当局(城管)または管理会社から電話がかかってきたそうです。電話の相手は、「すぐに店に戻り、照明をつけ直すように」と要求しました。
岳さんは、生まれたばかりの子どもがまだ1か月にも満たず、ちょうど寝かしつけたところだったため、店に戻るのは難しいと説明しました。しかし、相手は極めて強硬な態度で、「照明を点けに来ないなら、警察を呼んで、店のドアを壊して開ける」と脅迫したそうです。
「私は、『そんなの法執行のやり方としておかしいのではないですか?』と問いただしました。しかし、彼らは『お前が開けないなら、すぐに警察を呼んで、店のドアを破壊してでも照明をつける。信じられないなら試してみろ』と言い放ちました。」と岳さんは語ります。
電話が終わってわずか10分後、岳さんは店内の監視カメラをチェックし、都市管理当局(城管)と消防隊員がすでに店のドアを破壊し、内部に侵入して電源を探し、すべての照明を点灯させたことを目の当たりにしました。
岳さんは「彼らは、まず第一のドアの鍵を切断し、さらに第二のドアの床ロックも破壊しました。その結果、ドアの板が変形し、閉めることさえできなくなりました。このせいで店の営業にも影響が出ることになりました」と述べました。
岳さんは怒りを隠せず、「都市管理当局が強制的にドアを壊して店内に侵入する行為は、完全に違法行為です」と非難しました。事件当夜、彼はすぐに110番(警察)に通報しましたが、警察の返答は「対応できません」という冷たいものでした。翌日、岳さんは派出所に出向き、正式な受理書類を要求しましたが、警察は受理を拒否しました。さらに、政府の苦情窓口にも通報しましたが、どこからも何の返答もなかったそうです。
しかし、このような強制照明政策は山西省大同市だけに限らず、中国各地で同様の取り組みが政府主導で行われています。例えば、広東省江門市では、市政府の公式サイトが1月24日に「市の副市長が直々に複数のエリアを視察し、旧正月期間の照明演出の状況をチェックした」と報じています。
また、貴州省安順市や湖南省湘潭市などでも、政府による強制的な照明装飾の実施が確認されています。安順市西秀区では、公園や広場に大量の提灯、中国結(装飾用の結び紐)、花火型ライト、福の字が書かれた提灯などが設置され、徹夜で点灯されるようになりました。湖南省湘潭市では、メインストリートに211基のLEDライトボックスが設置されました。このような状況を見ると、中国各地で政府がいかに「旧正月の賑やかな雰囲気」を無理やり演出しようとしているかがよく分かります。
このような政府の方針を支える形で、中国の公式メディアも一斉に「祝祭ムードの盛り上がり」を報じています。『経済日報』は、「旧正月期間の全国的な消費ブーム」を取り上げ、「映画の旧正月興行収入が連日記録を更新し、全国のネット通販の旧正月特別セールでは売上高が7000億元を突破した」と報じています。
しかし、公式メディアが描く「消費好調・祝祭ムード満載」の光景とは裏腹に、実際には全国的に消費低迷が続き、年末年始の買い控えが顕著になっています。北京市に住むある市民は、自由アジア放送(RFA)の取材に対し、「街の市場はガラガラで、いつもなら春節直前まで営業している八百屋ですら、今年は1週間前に閉店しました。大年初七(春節後7日目)になってようやく営業を再開した店も多い」と証言しました。また、「例年なら、街中で爆竹の音が絶えず響いていましたが、今年はほとんど聞こえません。商業施設の売り場も空いていて、どこも閑散としています」と語りました。
四川省の住民も、「今年は、大きな贈り物を持って親戚の家を訪ねる人がほとんどいません。みんな、以前よりも節約志向が強くなっています」と指摘しました。武漢市のある男性も、「今年の旧正月は、二番目の姉の家に行きましたが、持って行ったのは果物だけ。以前のような盛大な年越しの雰囲気は、もう感じられませんでした」と嘆きました。
結局のところ、いくら街の照明を一晩中点灯させたところで、人々の財布の中身を「明るくする」ことはできません。市場の活性化も、庶民の暮らしの安定も、単なる光の演出では解決しないのです。今、中国で起きていることは、単なる「見せかけの繁栄」ではなく、より深刻な経済的問題の現れなのです。
(翻訳・吉原木子)