中国財政部が1月24日に発表したデータによると、2024年の政府財政収入は前年同期比1.3%の増にとどまり、2023年の6.4%増を大きく下回りました。不動産市場の長期低迷や内需の縮小が財政を圧迫したことが要因とみられます。一方で、税外収入の増加幅は予想を大きく上回り、政府が税収以外の手段に依存して財源を確保しようとしている実態が浮き彫りになりました。
急増する税外収入
ボイス・オブ・アメリカによると、中国の公式データでは、2024年の財政収入総額は22兆元(約472兆円)で、そのうち、税収は17.5兆元(約376兆円)となり、前年同期比3.4%減となっています。一方で、税外収入は急増し、総額は4.5兆元(約97兆円)、増加率は25.4%に達しました。
中国の「税外収入」は複数の財源で構成されており、特定収入、国有資源や公共施設などの有料利用収入、行政手数料、罰則金・没収金、政府系住宅基金収入などが含まれます。
台湾の中央通信社の報道によると、2024年、中国では税収の減少を補うため、多くの省・市政府が警察や裁判所を通じた罰則金などの手段で資金を獲得しました。その結果、罰則金や没収金の収入が急増しています。
全国的に、2018年以降、罰則金や没収金の収入は税外収入全体の約10%を占めているとされています。省ごとに比率は異なり、2023年には罰則金収入の比率が最も高い3つの省で約20%に達しました。
西南財経大学財政税務学院の楊良松准教授は、各地の罰則金収入への依存度には大きな差があると指摘しています。特に、罰則金収入への依存度が高いのは中西部の財政状況が厳しい地域が多く、これらの地域では債務返済の負担が大きいため、罰則金収入が重要な財源となっているとみられます。
警察による「大規模な資金搾取」が横行
ラジオ・フリー・アジアの報道によると、有名ブロガー「李老師不是你老師(李先生はあなたの先生ではない)」が1月23日に公開した動画で、中国の警察による組織的な資金搾取が常態化している実態が明らかになりました。動画には、湖南省邵陽県(しょうようけん)公安局の副局長と大隊長が、罪に問うことをほのめかしながら企業家に対し1億元(約21億円)を脅し取ろうとする様子が映っています。
この動画の撮影日時は2024年2月6日午後3時過ぎとされており、ホテルの客室内に設置された隠しカメラによって撮影されたものと見られます。
動画には、企業家とみられる男性が布団をかぶり、体と頭の大部分を隠しながらベッドに横たわる様子が映っています。もう一方のベッドには、警察官とみられる男性が制服を着用せず、斜めに座りながら脅迫を加えています。さらに、そばには制服姿の別の警察官がスマートフォンを確認している様子が映っています。
私服の警察官は、威圧と懐柔を使い分けながら、男性に金を差し出すよう要求し、「罪を構成しても起訴しない」と持ちかけています。同警察官は、「地元の財政難を解決するためにこの事件に取り組んでいるのであって、個人的な利益のためではない。以前はこのようなケースはほとんどなかったが、今では多くの地域で行われている」と述べました。
ラジオ・フリー・アジアが邵陽県のある企業主に取材したところ、彼は次のように語りました。「この動画を見たことがある。邵陽県公安局が他地域の人を連行し、恐喝しているものだ。会話で使っている方言は、間違いなく私たち邵陽県の地元の方言だ。これは確実だ。この動画は、個人から秘密裏に流出したものだろう。こうした資金搾取は今や常態化しているはずだ」
海外に住む中国人ネットユーザーの間では、罰金を財政収入の補填に利用する中国当局のやり方に激怒しています。ネット上では批判が相次いでいます。
「このやり方は、まるで暴力団が互いの縄張りに乗り込み、もう一度『みかじめ料』を奪い合うもので、すっかり暗黙の了解になっている」
「もう隠しもしない。庶民の生活費まで奪うとは。庶民が金を稼ぐのがどれほど大変か分かっているのか?」
税外収入増加の社会的背景
昨年、中国経済は悪化の一途をたどり、不動産価格の下落がとどまらず、それに伴い、不動産企業の債務危機もさらに深刻化しました。かつて業界のトップ企業とされていた碧桂園(カントリー・ガーデン)や万科(バンカ)でさえ、財務状況が悪化の一途をたどり、両社ともに債務再編に追い込まれています。
2024年を通じて、万科の販売面積は前年同期比27%減少し、販売額も35%の大幅減となりました。万科の取締役兼最高経営責任者(CEO)である祝九勝氏が、1月15日に警察に連行され、市場に衝撃が走りました。
経済の低迷と債務の膨張により、多くの地方政府は深刻な財政難に直面しています。ここ1年、中国の各メディアには、地方政府が運営維持のためにさまざまな名目で罰金を課しているという報道が相次ぎました。
中には、「30年前まで遡って調査し、民間企業に追加納税を強要する」ケースや、「警察を派遣し、他地域で企業家を拘束し、資金を差し出すよう圧力をかける」といった事例もあります。場合によっては、債権者が警察に要請し、債務者を拘束させることで、借金を返済させる代わりに釈放するという手法も用いられています。
また、地方政府がより一般的に行っている手法として、各種公共サービスの料金引き上げが挙げられます。こうした手段を通じて、地方政府は資金を確保しようとしているのです。
こうしたやり方は地方政府の収入を増やす一方で、企業家や投資家の政府に対する信頼を大きく損ない、その結果、経済のさらなる低迷を招いています。
中国政府の上層部もこの状況を十分に認識しています。昨年12月、中国国務院の李強首相は、法執行の監督を強化し、罰則金や没収金の異常な増加に注視するよう指示を出し、ビジネス環境の改善や市場の信頼回復に向けた対応を約束しました。
しかし、こうした警告はほとんど効果を発揮しておらず、現場では依然として地方政府による資金調達のための強引な取り立てが続いているのが実情です。
地方政府が財政難に陥っている主な原因は、長年にわたりその運営を支えてきた「土地財政」が、不動産市場の衰退によって大きな打撃を受けたことにあります。
2024年、中国の地方政府による土地売却収入は前年より16%減少し、不動産業界の低迷を改めて浮き彫りにしました。
ロイター通信によると、これまで土地売却収入は地方経済の主要な原動力でしたが、その大幅な減少が商業活動全体の足かせとなっています。
中国共産党は政権を掌握する前、旧ソ連共産党から資金援助を受けるだけでなく、江西省、湖南省、陝西省延安市など、中国軍が支配する地域で地主や富農を拉致し、脅迫によって金品を巻き上げていたと、一部のアナリストが指摘しています。
1949年に政権を掌握した後は、農村では「土地改革」の名目で地主層から土地を奪い、都市部では「公私合営」の形で企業家の資産を接収しました。そして現在、中国経済が崩壊の危機に直面し、地方政府の債務が膨れ上がる中、法執行機関が商人や企業家に対し、理不尽な理由で罰金を課したり資産を没収したりすることで、経済不振の負担を国民に押し付けているのが実情です。
(翻訳・藍彧)
