2022年、中国河南省の複数の村鎮銀行(地方銀行)が突然破綻し、多くの預金者が今なお預金を引き出せない状況が続いています。最近、一人の河南村鎮銀行の預金者がSNSのグループチャットで「河南の警察官や役人を道連れにする」と投稿したことで、警察が自宅を訪れ、警告を受けました。しかし、この預金者はひるむことなく、「政府が私たちの資産を守れないなら、私たちが命をかけて戦うのは当然だ」と強く反論しました。
この出来事を記録した映像によると、浙江省杭州市の銭江世紀派出所(警察署)の警察官が自宅を訪問し、「過激な発言を控えるように」と警告したとのことですが、預金者の怒りは収まらず、「河南政府が私たちの預金を奪うのは極端ではないのか? なぜ警察はそれを取り締まらないのか?」と反論しました。警察は「過激な発言をしないように」と繰り返しましたが、預金者はさらに問い詰めました。「銀行に預けたお金が返ってこない。預金が凍結され、生活が破綻しそうだ。それなのに、なぜ私たちの抗議が問題になるのか? 銀行が私たちの資産を奪い取るのは違法ではないのか?」さらに彼は、「国民の安全を守ることができないなら、そんな職務を続けるべきではない」と批判しました。
河南村鎮銀行の事件は、中国全体の金融システムの問題を象徴する出来事にすぎません。近年、中国経済は急速に悪化し、多くの中小企業が倒産し、不動産市場は崩壊し、多くの投資家が資産を失いました。その一方で、地方政府の財政赤字は拡大し、経済危機が深刻化しています。これに対処するため、地方政府や銀行はさまざまな手段を用いて資金を確保しようとし、その一環として、個人預金の引き出しを制限したり、不透明な理由で口座を凍結したりするケースが増えています。このような状況の中、政府は「維持安定(社会の安定維持)」を名目に、預金者の抗議を弾圧し続けており、一般市民の財産は理不尽に奪われ続けています。
社会の不満が高まるにつれ、中国各地で抗議活動が頻発するようになりました。労働者のストライキ、教師の抗議、不動産投資者のデモ、銀行での預金引き出し騒動など、社会の混乱はもはや日常的なものになりつつあります。昨年11月には、「広州の社会革命者」と名乗る職業学校の学生がネット上で文章を公開し、人々に反抗を呼びかけました。彼は、「これまで国内のさまざまな抗議活動を見てきたが、中国社会はまるで高圧鍋のように、今にも爆発しそうな状況だ。共産党の支配下では、誰もこの苦しみから逃れることはできない。私たち職業学校の生徒は社会の最底辺に位置し、絶え間ない苦難を強いられている」と記しました。彼とその仲間たちは、寮内で組織を作り、手書きのビラを配布し、「共産党を倒し、新たな社会を築こう」と訴えました。このような公然たる抵抗はすぐに当局によって封じ込められましたが、中国の厳しい統制下においても、人々の反抗心は確実に広がりつつあります。
中国の社会不安は、もはや一般市民だけの問題ではありません。実は、中国共産党の体制内にも不満を抱く人々が増えており、変革の機会をうかがっています。独立評論家の杜政氏によると、中国国内には、実業家や中堅官僚、さらには警察官など、政府の方針に不満を抱く人々が秘密裏に情報を交換し、変革の方法を議論しているグループが存在するといいます。その中にはすでに国外へ脱出した人々もいますが、国内に留まり、体制の崩壊を待つ者も少なくありません。
昨年、中国公安部は「ネット上で武器の製造方法を共有する者がいる」と警告を発しました。これは、単なる犯罪行為の取り締まりというより、一部の人々が本気で武装蜂起を考え始めている可能性を示唆しています。政府はこうした動きを危険視し、強権的な取り締まりを強化していますが、その一方で、共産党体制の内部からも不穏な動きが見え隠れしています。
特に中国軍内部の動向は、外部からはなかなか見えにくいものの、ここ数年、大きな変化が起きています。軍高官の汚職が相次いで摘発され、火箭軍(ロケット軍)や南部戦区海軍など、複数の軍事部門で幹部が更迭される事態が続いています。昨年12月には、前陸軍副司令官の尤海涛氏や南部戦区海軍司令の李鵬程氏が解任され、その前任者も2023年末に罷免されました。こうした相次ぐ人事異動は、共産党内で軍の統制が揺らいでいることを示唆しているのではないかと見る向きもあります。
杜政氏によると、中国軍の一部では「武昌起義(1911年の辛亥革命のきっかけとなった反乱)を模倣し、混乱に乗じて蜂起することを検討している者がいる」とのことです。特に、台湾侵攻などの緊急事態が発生した際や、習近平国家主席に突発的な問題が生じた場合、軍内部の不満分子が動き出す可能性があるとされています。
こうした内部の不安定さを裏付けるように、共産党指導部は最近、軍に対して忠誠を誓わせるような発言を繰り返しています。今年1月10日には、中共軍委員会副主席の何衛東氏が軍の拡大会議で「党中央に対する忠誠を誓い、軍の規律を守り、汚職を一掃しなければならない」と発言しました。これらの発言は、軍内部に不穏な動きがあることを暗に示していると考えられます。
さらに、2023年12月23日、中国共産党の機関紙『解放軍報』は「軍内の管理が緩み、規律が乱れている」とする記事を掲載しました。その中では「軍人が不適切な交友関係を持つことへの対策強化」が必要だと述べられました。杜政氏によれば、これは単なるスキャンダルの問題ではなく、軍内で反政府的な動きを察知したため、それを封じ込めようとしているのではないかとのことです。
近年、中国では政権の安定性をめぐる議論が活発化しています。海外では、習近平国家主席が失脚する可能性や、台湾海峡での戦争勃発のリスクについて様々な憶測が飛び交っています。
いずれにせよ、中国の現状を見る限り、今後の動向には大きな不確実性が伴います。経済の悪化、社会不安の拡大、政府の弾圧強化、そして軍の内部動揺——これらの要因が絡み合い、中国の未来は大きく変動する可能性があります。河南村鎮銀行の預金者たちの抗議は、こうした変革の兆しの一部に過ぎません。今後、中国社会がどのような方向へ進むのか、誰にも予測することはできません。しかし、一つ確かなのは、国民の不満が消えることはなく、共産党体制の亀裂が徐々に拡大し続けているということです。そして、ある臨界点を超えた時、社会の大きな変革が訪れる可能性は十分にあるのです。
(翻訳・吉原木子)