2025年の旧正月は、観光地の管理問題、経済的なプレッシャーによる人々の早期帰還、さらには寒波による交通事故の頻発が重なり、例年とは異なる様相を呈しました。
2025年1月30日(旧正月2日)、海南省三亜市の西島観光地では、大勢の観光客が殺到し、桟橋での滞留が発生しました。この混乱の様子がインターネット上で拡散され、多くの観光客が桟橋で「チケットを払い戻せ!」と声を上げました。一部の観光客によると、スタッフは「15隻の船が運航している」と説明していましたが、実際には長時間待っても、1、2隻しか見えなかったとのことです。この点について、観光地のスタッフは「船が不足しているわけではなく、観光客が多すぎるために乗船が集中し、特に午後4時から6時の間に出発を希望する人が多かったことが原因だ」と説明しました。
こうした状況に対し、観光地の運営側は1月31日に公式発表を行い、「旧正月期間中、予想を大幅に超える観光客が訪れたため、桟橋での混雑が発生した」と説明しました。ただし、同日の午後9時22分までには全ての観光客が無事に島を離れたと報告しています。しかし、多くの観光客は観光地の管理体制に不満を抱き、運営のずさんさを指摘しました。ある観光客は「大晦日にも船に乗るために2時間も並ばなければならず、せっかくの旅行気分が台無しになった」と話し、SNSには「もう二度と来ない」といった投稿が相次ぎました。
西島は三亜市中心部から約15km離れた小さな島で、面積はわずか2.8平方キロメートルしかありません。それにもかかわらず、海南省の人気観光地の一つとなっています。しかし、近年の旧正月期間中は、管理体制の不備が原因で、観光客にとって快適とは言えない状況が続いています。
実際、2024年の旧正月の長期休暇中にも、同様の観光客の滞留問題が発生しました。当時は、島を離れるための交通が混雑し、多くの観光客が海南島に足止めされ、高額な消費を強いられました。航空券の価格は1万元(約20万円)以上にまで高騰し、さらに自家用車で訪れた人々は「車をフェリーで本土に運ぶ」手続きが滞り、海南島から出られないという事態に陥りました。
旧正月の休暇が半ばを迎えると、2月1日(旧正月4日)から全国的に大規模なUターンラッシュが始まり、鉄道や高速道路は帰省客で混雑しました。特に、珠江デルタ地域の出稼ぎ労働者の多くが例年より早く帰路につきました。彼らの多くは、「混雑を避けるために早めに戻るだけでなく、景気の低迷により一刻も早く仕事を再開したい」という事情を抱えていました。
中国の経済メディア「第一財経」によると、湖北省黄岡市羅田県出身の27歳の曾燕さんとその夫は、深セン市坪山地区で働いています。彼らは旧正月のUターンラッシュを避けるため、旧正月4日に帰路につくことを決めました。このような状況は珠江デルタ地域全体で見られました。30代の肖さんは、姉とともに広東省中山市で自動車販売の仕事をしていますが、彼らも旧正月5日に仕事に戻ることを決めました。「気候がまだ暖かいうちに出発し、仕事の準備を整えたかった」と話しています。また、広東省仏山市で家具デザインの仕事をしている陳小光さんは、2月1日に電動バイクで仏山へ戻る予定でした。彼は「旧正月前に大きな注文を受けたので、家族と過ごした後、早めに戻って仕事を仕上げる必要があった」と説明しました。
広州市のある経済評論家は、「今年の旧正月は異例の現象が見られた」と指摘しました。通常は旧正月6日頃からUターンラッシュが本格化しますが、今年は旧正月3日から国道や高速道路がすでに混雑していたとのことです。彼は「出稼ぎ労働者の早期帰還は、単なる混雑回避のためではなく、経済的な理由が大きい。お金がないので、一日でも早く仕事を再開しなければならないのだろう」と分析しました。
SNSでも、「旧正月2日からすでに花火の音がほとんど聞こえなくなり、旧正月3日には多くの店が営業を再開していた」「以前は旧正月6日まで店が閉まっていたが、今年は旧正月3日から開いているところが多い」といった声が上がりました。中国鉄道武漢局の発表によると、2月1日から出稼ぎ労働者の移動が急増し、2月4日(旧正月休暇の最終日)までに、一日当たりの鉄道利用者数が10万人単位で増加する見込みです。すでに武漢から北京、上海、広州などの主要都市行きの列車のチケットはほぼ売り切れています。
同時に、広州鉄道局も1月31日(旧正月3日)以降、帰省・旅行・出稼ぎなどの移動需要が急増し、2月2日からUターンラッシュが本格化、2月4日にピークを迎えると予測しました。国家鉄道グループの発表によれば、2月1日の全国鉄道利用者数は1,330万人に達する見込みであり、これに対応するため791本の臨時列車を増発する予定です。
旧正月のUターンラッシュが本格化する中、中国各地では寒波の影響により道路が凍結し、深刻な交通事故が相次ぎました。特に2月1日(旧正月4日)午前、河南省の台輝高速道路の濮陽市台前県黄河大橋付近では、多重衝突事故が発生し、100台以上の車両が巻き込まれました。この事故により、道路は完全に麻痺し、大規模な渋滞が発生しました。
事故発生当時、濃霧により視界が悪く、前方の状況を確認するのが難しい状況でした。最初に衝突した車両は路上で停止しましたが、後続車がブレーキをかける間もなく、次々と追突し、多重事故へと発展しました。動画では、運転手たちが車から降りて後続車に手を振り、注意を促している様子が映し出されています。しかし、路面の凍結によりブレーキがほとんど効かず、車両がスリップしながら次々と事故車両に突っ込んでいく様子が確認されました。わずか数十秒の間に、さらに数十台の車両が追突し、現場は大混乱に陥りました。
1月31日夜9時ごろには、河南省でも、降雪による路面凍結と視界不良が原因で、多重追突事故が発生しました。目撃者によると、複数の車両が絡む事故が相次ぎ、一部の車両は大破。動画では、フロント部分が激しく損傷し、原型を留めないほどの車両や、道路一面に散乱するガラスの破片や金属片が映し出されています。事故が夜間に発生したため、もともと3車線あった高速道路は1車線のみ通行可能となり、後続の車両は長時間にわたり渋滞に巻き込まれました。
中国気象局の予報によると、2月2日から3日にかけて、寒波が引き続き中国中東部に影響を及ぼし、各地で気温が大幅に低下する見込みです。大部分の地域では気温が4〜6℃低下し、特に西北地域東南部、華北北部、東北地方、江南東部、華南地方では6〜8℃の気温低下が予測されています。さらに、北方地域では風速4〜5級の強風が吹き、最大で7〜8級の突風が発生する可能性もあります。
2025年の旧正月期間に起きた一連の出来事は、中国社会のさまざまな課題を浮き彫りにしました。今後、これらの問題にどのように対応していくのかが注目されます。
(翻訳・吉原木子)