最近、中国人俳優の王星氏がタイで誘拐され、ミャンマーの特殊詐欺グループに強制的に関与させられる事件が大きな話題となっています。この事件をきっかけに、ミャンマーの特殊詐欺グループが日本を含む21カ国をターゲットにした国際的な詐欺活動を行っている実態が浮き彫りになっています。
日本人も巻き込まれたか
複数の日本メディアは報道のなかで、タイのNGO組織の報告書を引用し、タイと国境を接するミャンマー東部では、21カ国から来たおよそ6000人が中国系犯罪組織によって監禁され、特殊詐欺に加担することを強要されていると指摘しました。
これらの被害者は、SNSでの高収入求人広告に騙され、タイなどを経由してミャンマーに誘拐されたとのことです。被害者たちは特殊詐欺に従事させられるほか、身体的・精神的な虐待を受けているとみられています。
16日に確認された情報によれば、詐欺組織の拠点には20人以上の日本人が拘束されている可能性があるとされています。これに対し、日本政府は「事実確認を進めている」とコメントしています。
詐欺組織と中国当局の関係
1月14日、情報筋は『看中国』に対し、中国人俳優の王星氏が解放されるまでの詳細な経緯を明かしました。そのなかで、ミャンマー特殊詐欺グループの首謀者と中国共産党との驚くべき関係も垣間見ることができました。
王星氏が失踪してからわずか6時間後、彼の恋人は中国のSNS「微博(ウェイボー)」で救援を呼びかける投稿を行いました。多くの著名人がこれを拡散した結果、瞬く間に人気検索ワードで1位となり、大きな注目を集めました。
その後、ミャンマーの特殊詐欺拠点「東美園区」を経営する尹国駒(ワン・クオック・コイ)氏は、俳優の王星氏が自分の管轄する拠点に誘拐されていることに気づきます。尹国駒氏は東美グループのトップであり、ミャンマー北部の特殊詐欺グループの主要人物の一人とされています。尹国駒氏は、中国共産党とも深いつながりを持っています。ドイツメディア「ドイチェ・ヴェレ」の報道によれば、尹国駒氏は習近平が推進する「一帯一路」計画を支援する役割を担っています。
事態の収束を図る尹国駒氏は、この事件に関与した詐欺グループの責任者を捕まえ、罪をかぶせました。そして、「KK園区」という別の詐欺組織の拠点付近で王星氏を解放しました。そのため、一部では「KK園区」が王星氏を誘拐したという情報も確認されています。
一方、タイの首相が、「中国共産党が同意さえすれば、タイはすぐに軍を出動させて詐欺拠点内に拘束されている中国人を救出できる」と明言していたとの情報もあります。なぜタイが詐欺拠点の取り締まりに際して中国共産党の同意を得る必要があるのでしょうか。
2023年、国連安全保障理事会が採択したミャンマー問題に関する決議では、ミャンマー北部の詐欺組織と地元政府に対し、誘拐された中国人などを即時解放するよう求めましたが、なぜ中国とロシアが棄権票を投じたのでしょうか?これらの謎について、関係者からの証言が新たな事実を明らかにしています。
中国共産党上層部が大ボス
複数の情報筋によれば、ミャンマー東部のカレン州ミャワディには約30箇所の特殊詐欺拠点が存在し、なかでも特に規模が大きいのが「KK園区」です。中国共産党政府の情報機関は、ミャンマーの詐欺拠点を利用し、情報収集を行っているとされています。特に「KK園区」では、ハッカーが他人の個人情報を収集する専門的な活動を行っています。詐欺の対象は中国人だけでなく、外国の官僚や公務員、軍人なども標的とされており、詐欺や情報収集を通じて機密情報を盗み出しています。集められた情報は中国国家安全部に提供されているとのことです。
2022年にタイで逮捕された佘智江(しゃ・ちこう)氏は、「KK園区」の経営者とされる人物です。しかし、彼は自身の代理人を通じて、そのような言説を否定しています。
佘智江氏の代理人は『看中国』に対し、「東南アジアにおける特殊詐欺活動は、習近平の『一帯一路』政策の付随産業であり、中国共産党が巨額の利益を得ている」と述べました。これらの詐欺組織は中国共産党と現地勢力が共同で運営しており、中国共産党こそが詐欺ネットワークの真の支配者であるとのことです。
さらに、中国系インフルエンサーの唐靖遠氏は、「中国共産党の国家安全部がミャンマー特殊詐欺グループの実質的な管理者であり、詐欺から得られた利益は仮想通貨を通じて洗浄され、最終的に中国財務部や中央銀行によって正当化される」との情報を明らかにしました。詐欺利益は中国の国家財政に直接組み込まれ、関与する官僚や詐欺組織のメンバーにも分配される仕組みがあるとされています。
唐靖遠氏は、これらの活動は中国の軍事情報機関が主導しているため、中国の中央軍事委員会も実情を把握しているはずだと考えています。中央軍事委員会のトップは習近平であり、このような大規模な国外活動を習近平の許可なしに行うことは通常考えられないと指摘しています。
「詐欺団地」が国家プロジェクト
中国メディアの報道によると、ミャンマーの「KK園区」は2018年に正式的に稼働を開始しました。2020年11月には、中国の駐ミャンマー大使館が主催する「KK園区推薦会」が開催され、「KK園区」の投資環境や発展可能性が紹介されました。
「KK園区」の主な投資者には、中国北方重工業グループや中国冶金グループなどが含まれています。また、電力は中国国家電網が提供し、通信ネットワークは中国電信(チャイナ・テレコム)や中国移動通信(チャイナモバイル)、そして中国聯合通信(チャイナ・ユニコム)が担っています。さらに、物流サービスは中国政府機関と同様に中国郵政(チャイナ・ポスト)による指定サービスとなっています。
著名ジャーナリストである趙蘭健(ちょう・らんけん)氏は、自身の体験を語りました。趙蘭健氏によると、2017年に中国国際経済交流センターが主催する会議に参加した際、ミャンマーにおける「一帯一路」の計画について知ることができました。計画によると、ミャンマーの物流や商流、情報サービス、さらには経済発展のフレームワーク全体が、中国国際経済交流センターによって設計され、中国当局の国家発展改革委員会や商務部に引き継がれるとのことです。中国共産党は莫大な資金をミャンマーに投入し、政治的な背景を持つ経営者や中国国有企業が利益を享受するというスキームとなっています。中国国際経済交流センターは中国のトップシンクタンクであり、中国共産党の統一戦線工作部や国家安全部と直接的な業務関係を持っているとも指摘されています。
詐欺が下手なら臓器摘出
ミャンマーの特殊詐欺団地では、利用価値がないと判断されたり、強く抵抗したりした被害者が、最終的に臓器強制摘出の犠牲者になるケースも報告されています。こうした被害者たちは、「恐怖の医療船」と呼ばれる公海上の船に送り込まれ、そこで生きたまま臓器を摘出されます。
このような医療船では、摘出された器官が非常に高い値段で取引されているとされ、年間約3500人が臓器提供者として連れ込まれていると報じられています。
過去に誘拐され、身代金を支払うことで救出された中国人俳優、許博淳(きょ・はくじゅん)氏はメディアのインタビューに対し、現地での実態を語りました。許博淳氏によると、(人身売買の)被害者たちは1人ずつ「タグ」を付けられ、30日以内に買い手が現れないと臓器摘出の対象となります。許博淳氏は現地で目撃した恐ろしい光景についても証言し、「4人の被害者が詐欺活動への協力を拒んだため、目の前で銃殺された。その瞬間、ここが完全な無法地帯であり、反抗は死を意味すると悟った」と述べています。
(翻訳・唐木 衛)
