香港立法会は3月19日、憲法に相当する香港基本法第23条「国家安全維持条例法案」を可決し、3月23日に正式に施行。これは明らかに、香港の自由と民主主義にさらなる打撃を与えるものです。我々は、中国問題専門家で国際人権協会理事の呉文昕(ご・ぶんせき)氏に話を伺いました。

第23条は致命的な第二撃

 近年、ビジネス環境の悪化に伴い、外資系銀行、投資会社、テクノロジー企業が香港から撤退しています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、一部の外国企業は香港と中国の境界線が曖昧になったと考えていると報じました。ラジオ・フリー・アジア(RFA)も、香港政府が2023年12月に発表したデータによると、香港に地域本部を置く外資系企業は減少の一途を辿っていると報じました。

 香港政府は基本法第23条法案をスピード可決しましたが、このことは今後、香港の経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

 国際人権協会理事で中国問題専門家の呉文昕氏は、「これは致命的な一撃だ。しかし、正確には致命的な第二撃というべきだろう。なぜなら、致命的な最初の一撃は2020年に施行された香港国家安全維持法(国安法)であり、国安法成立後に香港の経済が落ち込んでいることは周知の事実である。コロナ禍のせいだと言う人もいるが、コロナは要因の一部に過ぎず、主な原因は国安法である」と述べています。呉文昕氏は、「基本法第23条は傷口に塩を塗る法案であり、実際には国安法を補完するもので、どう転んでも(当局は)あなたを犯罪者にすることができる 」と指摘しています。

 第23条法案では、国家機密の定義を拡大し、「外国の干渉を招いた罪」なども盛り込まれています。外国の干渉を招いた罪とは、外国の勢力が計画した活動に参加した場合、あるいはそのような勢力に支配または指図されたり、資金提供を受けたり、協力したりした場合、さらに国家、香港政府、立法会、裁判所の職務遂行を妨害したり、選挙などの実施に影響を与える意図で不適切な手段を用いたりした場合、犯罪とみなし、最高で禁固14年の刑に処せられるというものです。

 第23条法案には、「国家機密の窃取およびスパイ行為」という罪も新たに盛り込まれています。「国家機密」には、国防情報や外交情報のほか、中国本土や香港の「経済・社会発展の秘密」「科学技術の発展または科学技術の秘密」も含まれています。

 しかし、呉文昕氏は、これらの規定ははっきりせず曖昧なものであると指摘します。例えば、規定にある「社会発展の秘密」という用語は非常に曖昧であり、実際、どんなものでも社会発展の秘密とみなすことができるのです。呉文昕氏は、「この法案が施行されれば、香港人が法律を破らないようにするのは非常に難しくなる。香港人にとって最大の頭痛の種は、第23条を破らないようにするためにはどうしたらいいのかわからないことだ。 このようにして、香港が繁栄するだろうか」と指摘しています。

日米企業 中国から最速で撤退

 国安法の施行後、香港では第二の海外移民ラッシュが引き起こされました。2020年に国安法が施行されると、同年末にはすでに10万人が海外に移住し、2024年現在、すでに70万人が香港から脱出しました。呉文昕氏は、「中国共産党は問題ないと考えている。中国本土には人がいくらでもいるのだから、70万人移住すれば、100万人の本土人を受け入れればいいと考えている。これは共産党の愚者の考え方で、人は数で比較するのではなく、質で比較しなければならない」と指摘します。 海外に移住したこの70万人の大半は金融業界、メディア界、文化界、ビジネス界や政界のエリートであり、いずれも非常に学識と能力のある人々であるのです。

 「国安法が施行されてからの4年間、香港は大量の人材の流出と大量の外国資本の撤退に直面している。そして今、また新たに第23条法案が成立した。悪法である国安法よりもさらに悪い法案であり、その結果がどうなるかは誰もが想像できる。 香港の移民ラッシュは弱まることはないだろうし、(逆に)海外に移住するエリートが増え、香港の外資の撤退も続くだろう」

 呉文昕氏は、米国と日本企業の撤退はかなり前から始まっており、今後はさらに加速するだろうと指摘し、「ヨーロッパ企業、私が知る限りではドイツの大企業の多くも今年から撤退を準備している。彼らは日米より2〜3年遅れている。彼らの中国共産党に対する理解は、日米にはるかに及ばない」と述べています。

 ボイス・オブ・アメリカによると、中国日本商会は1月15日にある調査結果を発表しました。 この調査は中国にある日本企業8000社を対象に行われたもので、有効回答数は1713件でした。調査によると、在中国日本企業の48%が2023年に中国への投資を減らした、またはまったく投資していないと回答しました。「その理由は、経済の停滞、先行きの不透明感、及び2023年7月に施行された反スパイ法であり、この法律は、中国共産党に外国企業を取り締まる余地を与えるものである」とされています。

自ら白状「一国二制度は嘘」

 第23条法案の施行で、政治と関係のないビジネス関係者であっても出国禁止や財産没収などに遭う可能性があることが懸念されています。

 呉文昕氏は「第23条は法治の暴力であり、将来の暴力のための法的根拠を作っている。今後、この法律を根拠に人々を騙し、残酷な独裁手段で香港人を弾圧する際にこの法律を適用させるだろう」と指摘しています。

 ある人が、香港の李家超(ジョン・リー)行政長官に、なぜ第23条法案の成立を急ぐのかと質問した際、彼は「急いではいない。我々は26年間待っていた」と答えました。実際、当局は26年前からこの法案の成立を考えており、一国二制度を50年間変えないとの約束は真っ赤な嘘だったということを自ら白状したのです。

中国共産党の終末 目前に

 呉文昕氏はまた、「共産党は香港に嫉妬している。彼らは返還後20数年が経っても、香港人は物質的にも文化的にも精神的にも、本土の人々よりずっと良い暮らしをしていることを知っている。香港には人権があり、自由があり、法の支配があるからだ。多くの本土の人々が香港に移住したがっているのに対し、本土に移住したがる香港人は多くない。だから彼ら(共産党)は嫉妬心を感じ、嫉妬心が出てくると、悪事をたくさん働くようになる」と述べています。

 「思いやりのある人は、他人が幸せに暮らしているのを見れば、それを喜ぶものだ。しかし、共産党の党文化には思いやりなどなく、闘争心と嫉妬心に満ちている。嫉妬心から闘争心が生まれ、最終的に殺戮に変わる。 しかし、心配することはない。彼らは実際には非常に弱く、共産党は実際にはサイコパス集団にすぎない」

 呉文昕氏は最後に、「共産党の滅亡はどんどん近づいている」と述べました。

(翻訳・銀河)