中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)は3月28日、同社として初の電気自動車(EV)、「シャオミSU7」を発売しました。価格は21万5900元(約450万円)からとなっています。

 シャオミの共同創業者で最高経営責任者(CEO)の雷軍(レイ・ジュン)氏はウェイボー(SNS)の公式アカウントで、予約受け付け開始からわずか7分で2万台を突破したことを投稿しました。

 販売初日には多くの注文が殺到したが、数日後には注文をキャンセルする顧客が相次ぎました。

注文殺到後に顧客の注文取消しが大量発生

 「シャオミSU7」は正式販売されてから24時間後に、雷軍氏はウェイボーで、8万8898台も予約注文があったことを発表し、予約金の収入だけで約1億元(約21億円)に達したと述べました。

 中国の澎湃(ほうはい)新聞によると、上海の多くのシャオミの自動車販売店では3月末に長蛇の列ができ、1日の来客数がほぼ1万人に達していました。試乗待ちが深夜2時や3時まで続くことが普通だと話す店員もいました。

 しかし、注文が殺到した後、注文をキャンセルする顧客が相次ぎました。

 中国の証券時報によると、200人以上の顧客が、7日間の考慮期間内に注文をキャンセルしたにもかかわらず、5000元(約10万円)の予約金が返却されなかったことにネット上で不満を訴えました。

 一部の顧客は消費者の権益を擁護するグループを結成し、法的手段で予約金を取り戻す方法を模索しています。関連話題はウェイボーの検索ランキングに上がっています。

 シャオミのカスタマーサービスは、注文をロックされる前には考慮する期間を設けているが、一度ロック(確認)した後、車両は生産プロセスに入るため、7日間の考慮期間内でも返金はできないと述べました。

 しかし、一部の顧客はウェイボーで、「あなた(シャオミの販売員)はさきほど私に言ったことと違うじゃない?『注文設定をロックしても返金できる』といったではないか?」と投稿しました。対応した相手(販売員)は「申し訳ありませんが、こちらで混乱があったかもしれません」と返答しました。顧客は、この状況ではシャオミ側が責任を負うべきだと主張しています。

ポルシェのコピー疑惑

 また、シャオミSU7は、ポルシェのデザインをコピーしているではないかとの非難も浴びています。

 雷軍氏はシャオミ車の発表会で、SU7の性能においてポルシェのタイカンと同等になるように開発されていると述べました。しかし、ネットユーザーは、SU7の外観がポルシェのタイカン4Sモデルとほぼ同じであると指摘しました。

 ネットユーザーから揶揄するコメントが殺到しました。
 「シャオミ車の外観をポルシェと比較すると、色とホイールハブ以外はほとんど重なっている。これは、3000人の研究開発チームがポルシェの寸法を正確に把握するのに3年かかったということか?」
 「チップから車まで、盗みの限り」

 これまでにシャオミのコピー製品をまとめたネットユーザーは、「シャオミのスマートフォン2はメイズーMXを、シャオミのスマートフォン3はノキアを、シャオミのタブレットはiPhone5cやiPadを、シャオミのルーターminiはAppleのタッチパッドTrackpadをコピーした」と投稿しました。

テスト中に重大な品質事故が発生

 シャオミSU7のホットセール期間中、ACC(車間距離制御装置)テスト中に起きたブレーキ事故が暴露されました。

 シャオミSU7のACCテスト中、時速120キロで前方に停止している車に衝突しました。この予期せぬテスト事故に、オンラインでライブ解説をしていた2人のコメンテーターが悲鳴を上げました。

 ライブ放送を見たネットユーザーからのコメント。
 「ACCは新車の標準装備ではないか?技術は既に非常に成熟し、シャオミの車にはこのような問題はないはずだ」
 「ACCテストのライブ放送では、時速110キロでブレーキをかけることができた。時速120キロで3回テストのうち、2回は合格し、1回は減速したが、それでも衝突した。時速130キロでも減速したが、すべて衝突した!」
 「あのライブを見て、シャオミ SU7の価格は妥当だと気づいた。なぜなら、車を買うために節約したお金は、他人への補償に使わなければならないからだ!」

 シャオミのCEO雷軍氏は、「ある自動車メーカーの会長が私にこう言った。スマート電気自動車は大きなスマートフォンに4つの車輪を付けただけだ」と述べた動画をユーチューブに投稿したネットユーザーがいました。

中国EVの低価格競争の内幕

 これに先立ち、イーロン・マスク氏はテスラの価格を引き下げました。そのうち中国でのモデル3の販売開始価格は5.9%引き下げられ、24万5900元となりました。この動きにより、世界トップの販売台数を誇る電気自動車メーカー、BYDを含む中国国内の競合他社も値下げに乗り出しました。

 雷軍氏は価格戦略について次のように述べました。シャオミSU7はテスラ・モデル3より3万元(約60万円)安いと話し合いで決定し、最高構成のSU7の価格も35万元(約730万円)から29万9000元(約630万円)に引き下げました。

 雷軍氏は、「実際、35万元は赤字だが、誠意を示すために、直接29万9000元に設定した」と述べました。

 しかし、一部のネットユーザーは、シャオミが低価格で販売する理由が、単に顧客に「誠意を示す」ためだけではないと疑問視しました。

 北京日報の報道によると、雷軍氏はシャオミ自動車の発表会の後に、「シャオミが異業種での自動車製造を始めてから3年が経つが、この3年間、北京市政府の支援がなければ、自動車製造を達成することは考えられなかった」と述べました。

 同報道によると、シャオミは土地利用や工場建設などで北京政府の支援を受けただけでなく、自動車製造の資格も北京政府から特別に許可されたものであり、2017年末以来、国家発展改革委員会の承認を得た4番目の自動車プロジェクトです。

 これは、シャオミ自動車の価格引き下げの背後には、中国当局の強力な資金と「需要に応じた特別許可」の政策支援があることを意味します。

 2023年9月、習近平氏が黒竜江省を視察した際、「新質生産力(新たな質の生産力)」という造語を提唱した後、国営メディアはこの新スローガンを大々的に宣伝してきました。李強首相は「両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)」の政府工作報告で、「新たな生産力の発展を加速させる」ことを今年の政府活動任務のトップとして挙げました。

 中国経済時報は3月18日の記事で、「新エネルギー自動車産業は新たな質の生産力を育成する重要なエンジンである」と報じました。これは、新エネルギー自動車が中国当局の経済発展計画において重要な位置を占めていることを示しています。

 中国政府の資金支援などにより、中国のEVは、国内外のブランドと競争できるだけでなく、他の国々に低価格で販売することも可能になっています。

(翻訳・藍彧)