2023年8月、世界中の多くの都市で洪水が発生しました。しかし、中国ではそれはまるで終末の危機のようでした。

 ここは河北省涿州市(たくしゅうし)で、人口は100万人で、中国の出版業の重要な拠点でもあります。この都市の上流には北京が位置しています。北京が7月末に大規模な洪水に見舞われた後、首都の都市部を守るために20以上のダムが同時に放水し、多くの堤防も開放されました。涿州市は洪水の排水地域となり、わずか一夜のうちに洪水に飲み込まれました。最初の放水は7月31日に行われ、その後8月4日には2度目の放水が行われました。これらの放水を経験した多くの人々は、少しでも放水の兆候を聞くとすぐに避難するようにしました。

 数回にわたるダムの放水の後、涿州市のほぼ全域で、洪水の水位はほぼ家屋の屋根までに上昇しています。広がるばかりの水域を見る限り、未だに建物に閉じ込められている人々が何人いるのか誰も分かりません。洪水が迫り来る中、どれほどの人々が避難できなかったのかも分かりません。

 北京を守るために、隣の天津市も同様に犠牲を払いました。ダムの放水により、多くの住宅地や村が浸水してしまいました。

 中国国内からの情報によると、北京を守るために、河北省内の複数の都市に洪水を放水する必要があり、その後、天津市の静海区と西青区を通って海に流れ込み、放水された総面積が379平方キロメートルに達するとされています。

 北京の近くには少なくとも20の中・大型のダムがゲートを開き、洪水を放水していました。しかし、これほど大量の水を放水する際、政府は事前に通知を出さず、通知があっても避難対策がまったく取られないことがあります。一部の場合では周辺住民に避難勧告の通知を出しても、簡単なテキストメッセージを送るだけで、その数時間後に壮絶な洪水が襲いかかることがあります。

 近年、中国当局は通常、洪水を放水する前に事前通知をまったく行わないか、放水を開始してからしばらくして象徴的な通知を出すことが多いのです。しかし、そのような通知は一般市民にとってほとんど意味がありません。

 法的には、政府の放水によって市民の生命や財産に損害が生じた場合、市民は政府に対して補償を求めることができます。そのため、多くの場合、中国当局は通知を行わず、放水した事実すら認めず、すべての責任を自然災害に転嫁しています。

 こうした犠牲になった都市は、北京だけでなく、河北省内に位置する雄安新区も守ることに成功しました。白洋淀(はくようてい)地域に位置する雄安新区は、現在の習近平氏の大きな夢の一環です。白洋淀は低地に位置し、歴史上に何度も水害に見舞われてきました。しかし、今回は洪水は白洋淀を避けて流れています。

(翻訳・藍彧)