中国で最近、農業部門の法執行機関である「農管(農業総合執法隊)」が注目を集めており、中国の国内メディアでも、農管に対する疑問や批判が相次いでいます。その理由は、農管が最近、農村に大規模に現れてから、中国では数千年来見られなかったような異変が、農村で多く見られるようになったからです。

 ツイッターユーザーの高伐林(ガオ・ファリン)氏が証言するところによると、4月16日に山東省濱州市(ひんしゅうし)で、複数の村の村長が同行する中で田舎を視察に来た農管は、道路脇に植えられた樹木を一律に伐倒(ばっとう)し、これは基礎農地のレッドライン保護のためだと説明したといいます。

 農管は、街での鶏やアヒルの放し飼いを禁止し、既に放し飼いしているものは全て捕獲、没収すると主張しました。

 湖南省の農管は、牛や羊の放牧畜産を禁止し、公告が発表された翌日から、農管によって発見された場合、全部没収すると発表しました。

 中国東北部のある地域の農管は、ある農家に入り、冷蔵庫が漏電して危険だと言い、没収しました。しかも、冷蔵庫に保存していた紅茶飲料までも全て没収しました。

 上記は農管の取り締まりの一部です。農管は、農村部の住民に対して、これからいくつかの新しい規則を実施することを決定したと、中国のネットユーザーが伝えています。

 まず第一に、農村では「物業管理費」または「ごみ処理費」が徴収されるようになりました。中国における物業管理費は、建物やエレベーターの保守管理費用、緑地保護や清掃のコストなどに利用される費用で、日本の建物管理費に似ています。ネットユーザーによると、標準的な「物業管理費」は1人1日5セント、1年につき1人あたり18元(約350円)で、都会で出稼ぎに行った人でも世帯の人数に応じて徴収されるそうです。大した金額ではないが、多くの農民は、この「物業管理費」が毎年上がるのではないかと心配しています。

 第二に、農家の電動バイクやトラクターなどの農業機械を運転するのに、免許が必要です。農村に残っている人のほとんどは高齢者で、免許証の取り方など分からないのです。農民が電動バイクを運転するのは、ただ農地に行くためであり、数十年もの間、免許証は必要ありませんでした。あるネットユーザーは、自分の母親が免許証を持っていないため、仕方なく電動バイクを売却したと述べました。

 第三に、農家が自宅で何を栽培し、何を飼育し、どこに洗濯物を干すかなど、すべてにおいて、農管が介入しています。黒竜江省のあるネットユーザーは、兄の養魚池(ようぎょいけ)に、農管が3回訪れ、「見苦しい」という理由で、養魚池の周りの柵でトウモロコシや豆を栽培してはいけないが、キュウリは植えてもよいという要求があったと明かしました。兄は、自分が植えている作物がすべて合法的なものであり、家族が食べるためのものだと主張しました。しかし、農管は「植えてはいけないと言ったら、植えていけないのだ」とはっきり言いました。また、江蘇省では、農管が農家の家に行って掛け布団の干し方を確認し、「違法に干されている」衣類や掛け布団はすべて持ち去り、処分しました。

 第四に、農民には就労のための免許が必要です。中国メディアの報道によると、「農民証」の発行に関するニュースが最近、ネット上で話題となり、注目を集めています。これらの証明書は通常、「農民証」と呼ばれます。現地の農民が試験を受ける様子が、あるネットユーザーによって公開されました。試験会場は畑で、主に農薬散布、耕起(こうき)、草刈りなどです。受験に落ちた場合は、追試を行うことができ、これにより当局は収入を得ることができます。あるネットユーザーは、祖父が数十年もの間、畑で働いているにもかかわらず、試験に合格せず、「農民証」を取得できなかったと暴露しました。

 また、都会で働く人の中には、農村戸籍で農民層に属しているが、畑の作り方も田植えのやり方も知らず、農民証も取得できない人がいます。このような農民証を持っていない人々は、今後、農民でも労働者でもなくなり、どのように呼ばれるのかと疑問視する報道がありました。そして、このような農民は、中国には少なくとも数億人いると言われています。

 中国の農業農村部は最近、農管の任務は、主に偽造・規格外種、農薬、動物用医薬品などの違法行為を打撃することであり、「農民の通常な生産生活を妨害することはない」と明らかにしました。

 しかし、吉林省のある市の農管の装備購入リストを見ると、農管が実際に何をしているかがわかります。そのリストには、シグナルジャマー、防刃ベスト、電撃棒、ハイパワーフラッシュライト、暗視装置、救命ロープなどが含まれています。ネットユーザーは、「これはまるで戦争用の装備だ。ウクライナやロシアの戦場に置いても、全く遜色(そんしょく)ない」と揶揄しています。

 では、これらの装備は、どのような敵に対処するために用意されているのでしょうか?