2022年8月建設された中国海南省海口市の仮設病院(ネット写真)

 中国当局は、新型コロナウイルス(中国共産党ウイルス、SARS-CoV-2)が大流行している間、全国各地に大量の仮設病院を建設しました。しかし、多額の資金を費やした仮設病院は建設後に次々と廃棄され、資金と資源の膨大な無駄遣いになっています。

 仮設病院は、臨時病院や移動式野外病院とも呼ばれ、新型コロナウイルスの大流行中に中国で広く使われていました。中国当局はこれらの施設を使って、症状の重症度に関係なく、PCR検査で陽性となった人々を隔離していました。

 海外シンクタンクの「天鈞政経」はある評論記事で、中国共産党はゼロコロナ政策の経済的影響を計算する勇気がないと指摘しました。複数の経済専門家の計算によると、2022年の中国の年間財政支出は24兆元(約470兆円)を超え、防疫支出だけで財政支出全体の3分の1、つまり8兆元(約157兆円)を占めているといいます。主にPCR検査、PCR検査所や仮設病院の建設に使われ、残りは他の支出や役人に横領されました。このように、国家の富は中国共産党によって浪費されています。中国共産党のゼロコロナ政策により、政府の歳入を枯渇させ、健康保険基金が持続不可能になることを招いたのです。

 華創証券(北京)の報告書によると、仮設病院の建設資金は主に政府の財政支出と銀行ローンから来ているといいます。地方政府が開示した資金源によると、仮設病院の建設資金は主に地方政府が発行した特定債券、財政割り当て及び仮設病院の建設側による自己資金で賄われているといいます。

 これまで多くの省は防疫の財政支出を保証するために、公共交通機関の支出を削減したり、観光地や食堂の契約権を売却したりするなど、他の支出面を圧縮し続けてきました。景気低迷の中、地方財政支出は巨額であり、これも北京当局が直面している問題です。

 今では、各地で巨額の資金を投じて建設された仮設病院は次々と廃棄されています。

 例えば、広州市が2022年11月末に完成した仮設病院は、8万人を隔離することができ、敷地面積は約81万4600平方メートル、建築面積は54万7100平方メートル、2万1870室あり、隔離病床7万8000床以上という規模でした。しかし、完成直後の12月上旬、北京当局は「ゼロコロナ」の防疫政策を放棄したため、このプロジェクトは頓挫(とんざ)されました。

 また、かつて総合経済力が全国最貧の河南省政府は、2億5000万元(約50億円)を投じて、1万平方メートルの仮設病院を建設しました。1平方メートル当たり2万5000元(約50万円)でした。しかし、同様に当局の政策転換に伴い、昨年12月に廃棄されました。

 このような例は中国ではよく見られ、多くの仮設施設は地方政府の要請で昨年末に完了するよう建設されたが、まだ使用されていないうちに廃棄されました。

 中国のネット上では最近、山東省最大の仮設病院が解体され、「230億元(約4500億円)が一夜にして蒸発した」という話が広く流布されました。しかし、そのわずか3カ月前、山東省は230億元を追加投資し、20万人を収容できる119の仮設病院を建設すると大々的に発表しました。当時、関係者はこれら新築の仮設病院について、「人工呼吸器、オキシメーター、各種検査機器、空調、無線LANを備え、1床あたり11万5000元近くの投資になる 」とも主張していました。

 さらに、寸土寸金(すんどすんきん)の香港でも、同じ厄介な事態に見舞われています。新型コロナウイルスの流行が始まった後、香港は一時、中国本土の「ゼロコロナ」政策の防疫モデルに追随して、仮設病院などの集中隔離施設を建設し、中には美しい海の見える市内の高級住宅地に建設されたものもあります。しかし、ほとんどの施設は2ヶ月しか使用されておらず、落馬州(ロクマチャウ)の隔離施設はまったく使用されていなかったのです。そのため、香港政府が資源を浪費していることを疑問視する声が少なくありませんでした。

 今後、これらの土地や仮設施設の利用については、香港政府は改修案や工事総支出を「適時に公表する」と述べました。香港政府が隔離施設の一部を一時的なユースアパートに改築する方向であるとの報道もあるが、この計画には批判や反対の声が上がっています。

 そのほか、無駄遣いされるところもあります。例えば、蘇州市のある清掃業者は、かつての仮設病院が、今は空っぽで使われておらず、作業中の休憩所として使われることもあると明かしました。「掃除が終わったら、手袋や清掃道具をそこに置くのだ。雨が降ったら、そこで雨宿りするんだ」。蘇州駅前の臨時PCR検査所は、警察の昼食場所になっています。さらに少し行くと、空色のPCR検査所が「就職情報ステーション」になっています。また、昨年末のコロナが大流行時には、多くの仮設病院が解熱剤の販売所と化しました。

 中国の複数省はこのほど、2023年度財政予算報告書の中で、2022年に費やした防疫費用を発表しました。財新網の統計によると、中国の31の省・市のうち17の省・市が2022年の防疫費用を発表し、資金規模は10億元(約200億円)から数百億元(数千億円)であったといいます。中でも広東省は711億3900万元(約14兆円)でトップを占め、浙江省は435億900万元(約8500億円)、北京は300億元(約5800億円)近く、上海は167億7000万元(約3300億円)、陝西は19億元(約370億円を費やしました。

 米シンクタンク「民主主義防衛財団」の中国専門家、クレイグ・シングルトン氏は、中国共産党中央が長い間ゼロコロナ政策を維持するために、高額なコストがかかっており、それが中国経済に大きな打撃を与え、国の財政を混乱させていると見ています。同時に「地方債の高騰は中国経済の健全性に深刻な脅威を与え、地方政府のデフォルトのリスクを高めている」と述べました。

(翻訳・藍彧)