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 「陽関三疊(ようかんさんじょう)」は「陽関曲」「渭城曲」とも呼ばれ、中国の古琴曲の一つである。この曲は王維の詩「送元二使安西(元二の安西に使いするを送る)」を題材としており、唐王朝の時代に作曲された。唐王朝の宮廷楽師たちは「陽関三疊」をよく歌っていたとされる。詩の第四句「西出陽關無故人(陽関から西に行けば旧友もいないだろう)」を三回繰り返して歌ったことが名前の由来である。

 王維(おう い、699年―759年)は、中国唐王朝の最盛期の高級官僚で、時代を代表する詩人。佛道に親しんでいたため「詩佛」とも呼ばれている。最晩年の官職が尚書右丞であったことから王右丞とも呼ばれていた。韋応物、孟浩然、柳宗元と並び、唐の時代を象徴する自然詩人である。

唐詩「送元二使安西」

渭城朝雨浥輕塵
客舍青青柳色新
勸君更盡一杯酒
西出陽關無故人

書き下し文:
元二の安西に使いするを送る
渭城の朝雨 軽塵を浥す
客舎青青 柳色新たなり
君に勧む更に尽くせ 一杯の酒
西のかた陽関を出ずれば 故人無からん

現代語訳:
渭城の朝の雨は軽い土ぼこりを落ち着かせ
宿屋の前の柳は雨に洗われて青々としている
さあお酒をもう一杯飲み干したまえ
陽関から西に行けば旧友もいないだろう

有名な古琴の演奏者管平湖(1897―1967)による古琴曲「陽関三疊」:

(文・黎宜明)