(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 中国共産党(以下、中共)政府が、知られていない追跡システムを通して世界の荷動きに関するデータを把握する能力を拡大させている。米政府や業界関係者の間では、中共がこのデータを商業的、戦略的に利用し、優位に立ちかねないとの懸念が高まっている。 

 中国の貨物データシステムの最先端にあるのは「LOGINK」だ。正式名称は国家交通運輸物流公共信息平台(国家物流平台)である。LOGINKは世界の荷主を結ぶデジタルネットワークで、自らを「ワンストップの物流情報サービスプラットフォーム」と称している。公的データベースのほか、45万以上に上る中国国内および世界各地の巨大港湾のユーザーから入力された情報も併せて利用しているという。中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加している港湾や、同国政府による「デジタルシルクロード」構想の一部もデータの対象に入る。  

 中国に寄港することのない貨物でさえ、世界に広がる中国の物流ネットワークを通過するケースが多い。そうした物流システムには、中国から遠く離れた港を通過する貨物を追跡する高度なデータシステムも含まれる。中国政府は物流や情報の管理を通じ、世界の商取引に関する他国には分からない情報を得ることができるほか、それに影響を及ぼす手段も手にする可能性があると、貨物業界関係者は述べている。 

 米国防総省は世界中の商業港を経由して軍装備を手配している。その物流部門である輸送軍の報道官は、一帯一路を通じて「中国が米軍のロジスティクスを含む世界のサプライチェーン(供給網)の可視性を高めようとしている」と指摘した。

 先週、米国連邦議会の諮問委員会である米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は、LOGINKが米国にもたらすリスクについて調査を開始した。同会のマイケル・ウェッセル委員長は、中共がLOGINKを利用し、各国の国家安全保障や経済的利益に関する情報を分析する可能性があるとし、現在の国際情勢の中で、もっと注目されるべきだと指摘した。

(翻訳・徳永木里子)