実験から生じた破片は軌道上に残る(ウィリアム・ハーウッド氏ツイッターより)

 米国務省は15日、ロシアが人工衛星をミサイルで破壊する対衛星兵器の実験を行ったと発表した。ブリンケン国務長官は、大量のスペースデブリ(宇宙ごみ)が発生したとして、「危険で無責任な実験だ」と非難する声明を発表した。国際宇宙ステーション(ISS)の7人の宇宙飛行士が輸送機に退避した。

 ロシアで15日に行われた実験では、自国の人工衛星を破壊し、宇宙空間に1500個以上のスペースデブリが地球の軌道上に残った。そのスペースデブリがISSをはじめとする地球低軌道での宇宙飛行活動に脅威を与え、ISSに搭乗していた7人の宇宙飛行士が一時的避難を余儀なくされたという。ISSは現在、正常に稼働しており、搭乗している7名の宇宙飛行士も無事。

 ブリンケン氏は「無謀で無責任な行動により、宇宙空間の持続可能性を危険にさらし、すべての国による宇宙空間の調査と利用を危うくしようとしている」とロシアを非難し、各国に対応を呼びかけた。

 米国務省のネッド・プライス報道官は15日の記者会見で、「本日、ロシア連邦政府は、無謀にも同国の衛星の一つに対して対衛星ミサイルの発射実験を行った。この実験は国際宇宙ステーションの宇宙飛行士やその他の有人宇宙飛行活動に対するリスクを増加させた」とロシア政府を非難した。

 また英国防省も同日、ロシアによる実験を宇宙空間の安全を「完全に軽視」するものと非難するウォレス国防相の声明を発表した。声明は「実験から生じた破片は軌道上に残り、何年にもわたって人工衛星や有人宇宙飛行を危険にさらすことになる」と指摘した。

 宇宙評論家ウィリアム・ハーウッド氏は、「詳細は不明だが、本日未明、ISSに滞在する7人の宇宙飛行士が、衛星が爆発したときに発生する破片がステーションに接近することを恐れてソユーズMS-19とドラゴン・エンデュランス宇宙船に避難した」とツイートした。

(翻訳・吉原木子)