訪日した米国のジーナ・レモンド商務長官は15日、萩生田光一経済産業相と会談。双方は、米国通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税措置の問題解決に向けた協議を開始することに合意するとともに、日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)を設立した。

 会談の冒頭、萩生田氏は「サプライチェーン強靭(きょうじん)化を含む経済的戦略体制を強化することは不可欠。両国間の協力関係をさらに拡大させていきたい」と述べた。レモンド氏は「日本への関与は揺るぎないもの。協力関係を進めていきたい」と応じた。

 会談の中で、萩生田光一氏は、日本は関税問題を世界貿易機関(WTO)の原則に従い「完全に」解決してほしいと述べ、米国が日本からの鉄鋼およびアルミニウムの輸入に課している関税を「問題がある」と考えていることを明らかにした。これに対し、レモンド氏は、この問題を優先的に取り組むと述べた。

 今回の会談では、日米両国の産業競争力強化やサプライチェーン強靱化などを進める目的で、「日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)」を設立することでも合意した。

 商務省と経済産業省は、JUCIP を通じて両国経済の競争力や強靱性、安全保障を強化し、気候変動など地球規模の共通課題に対処し、繁栄を成し遂げて自由で公正な経済秩序を維持することを約束した。

 追加関税を導入する前の関税は鉄鋼がゼロ%、アルミはゼロ~6.5%だった。鉄鋼の対米輸出は関税をかける前の17年は約173万トンだった。上乗せ後の20年は約72万トンと量はおよそ6割減となった。日本鉄鋼連盟は2日、「鉄鋼業の公正な競争条件の確保のために今後ともしっかりと交渉いただくことを強く期待する」と政府に求めていた。

 バイデン米政権が日本と鉄鋼・アルミ関税の問題解決に着手したのは、同盟国との関係を修復して中国に対抗するためだ。米国単独では中国の過剰生産に対処できないと認識している。

 トランプ前政権は2018年3月から、日本を含む同盟国・地域も「安全保障上の脅威」とみなし、鉄鋼とアルミにそれぞれ25%、10%の関税を上乗せした。欧州連合(EU)は報復措置で対抗したが、双方は今年10月30日に紛争の解消で合意した。日本はこれまで米国への報復措置を取らず、措置は継続しており、追加関税の撤廃を求めていた。

 鉄鋼やアルミニウムの過剰生産能力は、生産量が劇的に増加したため、数十年にわたって悪化してきた。世界鉄鋼協会(WSA)によると、2020年の中国の粗鋼生産量は10億6,000万トン、第2位のインドは1億トン、日本は8,370万トン、米国はほぼ7,300万トンとなっている。

(翻訳・徳永木里子)