(イメージ:VOA)

 金融業者である中国の「 恒大財富(恒大集団の子会社)」は、払い戻し期限が来た金融商品を払い戻せなかったことが9日、ネット上で暴露されてから、大勢の投資者がその親会社である不動産開発大手「恒大集団」受付に押しかけ、金融商品の払い戻しを求めた。

 これと同時に、一部の投資者は警察に、恒大集団に払い戻しを求めてはいけないと警告された。

 不動産を購入した人やローンを組んだ人はすべてお金を払っており、請負業者は資金を立て替えており、恒大集団の職員もお金を出して同社の投資商品を買っているのに、恒大はなぜ払い戻せないのか。お金はいったいどこへいったのだろうか。

 実は、恒大集団の創業者・許家印氏はとっくにこの謎を明かしていた。彼はかつて「恒大のすべては党からもらった」と話した。

 中国共産党が恒大集団の肩を持っている以上、恒大集団のお金は中国共産党政権あるいは一部高官の手に渡った可能性が高い。投資者が投資した分の払い戻しを求めるのが当然であるにもかかわらず、警察が恒大集団の投資者に警告したわけがこれで解釈できる。

 1996年創業の恒大集団は、中国当局が借金や建設事業を自由気ままに許していた時代の申し子と言える。だが、現在では2兆元(3050億ドル)近くの負債を抱え、ここ数年の中国で最大級の破綻を起こす可能性が目の前に迫ってきた。

 また、恒大集団が発表した2020年の負債総額は1兆9500億元(約33.1兆円)に達した。そのうえ、恒大集団がこのほど発表した上半期の財務状況では、負債総額が1兆9700億元(約33.4兆円)となり、昨年より200億元(約3千億円)多くなった。

 香港株式での恒大集団の株価は8月16日の5.5香港ドル(約77円)から9月15日の2.81香港ドル(約39円)のほぼ半値に急落した。

 恒大集団は中国で800近くの未完成不動産プロジェクト、20万人の従業員を持ち、国内で3800万の雇用を提供しており、破綻すれば、銀行・金融システムに大きな打撃を与えるだけでなく、失業者がさらに増えることになる。恒大集団のサプライチェーンや投資者にも影響を及ぼす。

 億万長者のジョージ・ソロス氏はこのほど英紙フィナンシャル・タイムズでの記事で、恒大集団の債務不履行が中国経済の崩壊をもたらしかねないと警告した。

 ナティクシスのエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は、中国の不動産セクターという最も明白な「灰色のサイ(高い確率で大きな問題を引き起こすと考えられながら軽視されているリスク)」を巡り、緊張が高まりつつあるとの見方を示した。現在の中国で最大の三つの「灰色のサイ」はそれぞれ不動産バブル、平価切下げと資本流出である。果たして恒大集団の債務不履行が中国経済危機の最初の「灰色のサイ」になるだろうか。

(文・黎宜明/翻訳・北条)