2019年6月28日に大阪で開催されたG20サミット(Public Domain)

 習近平総書記は、これまで1年7カ月間、国外に一歩も出ていない。ブルームバーグは、これはG20リーダーとしては最長の記録であり、習氏が外国を訪問しないことは、中国と西側諸国との関係改善に障害になるのではないかと報じた。観察者によると、出国しなくても良いだが、当局は最近、外国人関係者の北京訪問を許可していないことを指摘した。このような「鎖国」は、多くの疑問を引き起こした。

 習氏が最後に訪れた国は2020年1月18日のミャンマーで、帰国の5日後に武漢市が新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)の感染拡大で封鎖された。ブルームバーグによると、習氏は今年、閉幕したばかりのBRICS首脳会議を含め、十数回の国際会議にいずれもオンラインで参加したという。ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領など、多くのグローバルリーダーと60件近くの電話会談を行った。

 習氏の最後の出国は、ちょうど武漢市の新型コロナウイルスがひどく蔓延し、都市が封鎖され、世界的な大騒ぎになった重要な時期と重なっており、習近平氏はその後、国際的に非難されたことへの対応に長い間追われていたようだと一部のアナリストが指摘している。昨年9月8日、習氏は新型コロナウイルスに対して大きな勝利を収めたが、「厳格な防御」の方針を継続すると発表した。

 関連報道によると、習氏のこのようなやり方は、重要な国際的イベントの際に首脳が直接顔を合わせる機会が減り、外交関係の改善にはあまりつながらない。そのため、外交上の悪影響が出始めるのではないかという。また、習氏は10月末にイタリア・ローマで開催されるG20サミットにも出席しなければ、バイデン大統領との初対面を逃すのではないかという懸念が高まっている。また、英国で開催される国連気候変動サミットもとても重要で、世界最大の汚染国である中国は、そのリーダーがサミット会議に参加しなければ、大きな進展は望めないだろう。そのため、外界は中国において、ネガティブな外交結果が発生し始める可能性への懸念も高まっている。

 新型コロナウイルスの流行は、中国と外界、特に西側諸国との関係が悪化していることと大きく関係しているのではないかとの見方もある。米国とはもちろん、貿易、人権、ハイテクなど様々な分野で行き詰まりが生じている。習氏が出国しなかったこの1年余りの間には、国際的な人権団体によって新疆ウイグル自治区の人権問題が大々的に暴露され、香港では一国二制度が徐々に失われていった時期とも重なっている。その結果、中国と米国の関係が見違えるほど悪化しただけでなく、欧州連合(EU)でさえも中国をシステム上の敵とみなし始めた。

 また、習氏は「国外に出ない」だけではなく、北京当局は外国の政府関係者が首都・北京を訪れることをも認めていない。例えば、王毅外相は3月に広西チワン族自治区でロシアのラブロフ外相との会談や、4月にはシンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、韓国の外相の訪中、北京側は王毅外相が福建省南平市で彼らと会談するよう手配した。同月、米気候変動問題担当大統領特使のジョン・ケリー氏が中国を訪問したが、上海に行って解振華氏(かい・しんか、中国気候変化事務所特使)と会うことしかできず、北京にいる韓 正(かん・せい)副首相はオンラインのビデオでケリー氏と会談した。7月には米国務省ナンバー2のシャーマン氏が訪中したが、天津でしか中国政府関係者と会うことができなかった。ケリー氏は9月初旬に再び訪中し、その時も北京ではなく天津で王毅外相と会うことが許された。

 中国共産党第20回全国代表大会が近づくにつれ、習氏は自身の後継者問題に追われ、内政問題が多すぎるため、対外的に手が回らなくなっているという分析もある。 時事評論家の林保華(りん・ほうか)氏によると、習氏の「鎖国」はウイルスを恐れているだけでなく、今年7月に習氏が中南海警衛局局長を交代させたことや、定年間際どころか司令官クラスの複数のトップ将官を交代させたこと、さらに西部戦区司令部のトップはわずか2か月で交代させたことからもわかるように、自分の安全が脅かされる可能性のある党内闘争が原因だという。

(翻訳・吉原木子)