中国の李克強首相、鄭州市視察(ツイッターより)

 中国共産党(以下、中共)の李克強首相は18日と19日、河南省の水害の事後処理を視察した。鄭州市の地下鉄5号線での政府関係者の責任を追及する可能性に言及した。しかし、同視察の報道は、李氏の管理下にある国務院の公式サイトにのみに掲載され、他の主要なポータルサイトには転載されなかったため、権力闘争の疑いが持たれている。

 「中国政府網(中国政府のウェブサイト)」が19日に掲載した動画によると、李氏は鄭州市地下鉄5号線を視察した。また、京広路トンネルの避難場所の棚を叩いてから、現場の関係者に経験と教訓を学び、都市の「下水処理工程」をしっかり行うべきだと指摘した。「安全を第一に、極端な緊急事態が発生した場合には、状況によって停止や閉鎖が必要であればそうしなさい。国務院は調査チームを設立し、職務怠慢の可能性がある場合には責任を追求する」

 中共の公式メディアは通常、高官の視察を当日に報道する。しかし今回、李氏が管理する「中国政府網」は2日間連続で動画レポートを掲載したが、中国中央テレビ(CCTV)、新華社通信、人民日報の3大公式メディアは報道しなかった。

 近年、李氏と習近平氏の対立が公になったと言われている。公式メディアの報道が李氏の被災地訪問を軽視するか遅らせて報道することが常態化している。

 昨年8月、習氏が安徽省の災害を視察していた時、中共の公式メディアは数日間にわたって大々的に報じたが、李氏の視察ニュースは、中国政府網と一部の公式メディアで報じられただけで、CCTV、新華社通信、人民日報などの主要な公式メディアからは何も報じられなかった。

 情報筋によると、中共の政治局常務委員で宣伝を主管する王滬寧(おうこねい)氏が、李氏のニュースを公式メディアのトップに載せてはならないと命じたことがあるという。

(翻訳・徳永木里子)