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 中国・遼寧省の高級人民法院(高裁に相当)は10日、麻薬密輸罪に問われたカナダ人ロバート・ロイド・シェレンバーグ被告の上訴を棄却し、死刑判決を維持したと発表した。これに対し、欧州連合(EU)の欧州対外行動局は同日の声明で、被告を赦免し、死刑判決を終身刑に変更するよう北京政府に要請した。

 複数のメディアによると、遼寧省高級人民法院は同日、カナダ人のシェレンバーグ被告の上訴を棄却し、麻薬密輸罪で地裁の死刑判決を維持した。

 フランス通信社(AFP)によると、シェレンバーグ氏は2018年に中国から麻薬密輸罪で告発され、懲役15年の実刑判決を言い渡された。しかし、同年12月1日に中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)幹部、孟晩舟最高財務責任者(CFO)の身柄引き渡し事件が発生した後、裁判所は2019年1月に死刑判決に変更した。この時点で彼の案件が政治問題になっているという強いサインを示したと見られている。

 EUの報道官は10日、中国裁判の適正性と「恣意(しい)性」について懸念を表明した。欧州対外行動局は声明の中で、同被告の死刑を終身刑に変更するよう求めた。

 カナダ外務大臣は、政府のウェブサイトに掲載された声明の中で次のように述べた。「カナダは、シェレンバーグ氏に対する死刑判決を維持したという中国(共産党)の決定を強く非難する。この残酷で非人道的な刑罰に強く抗議し、同氏の赦免を求め、中国(共産党)と交渉し続けていくことを繰り返し表明した」

 近年、孟晩舟事件を含め、カナダと北京は一連の対立で緊張している。北京当局はまた、カナダ人の元外交官マイケル・コブリグ氏と実業家マイケル・スペーバー氏両氏を逮捕して拘束し、スパイ行為に関わった疑いで起訴した。この動きは、カナダで孟晩舟氏が逮捕されたことに対する中国共産党の報復と見なされ、「人質外交」と呼ばれた。現在、「人質外交」は「死亡外交」にエスカレートした。

(翻訳・徳永木里子)