大学入試試験会場の様子 (Image: YouTube Screenshot)

 10月下旬から11月初旬にかけて、中国の高校生は進学を希望する大学に願書を提出する。こうした中国の入試システムは「高考(ガオカオ)」と呼ばれている。近日、中国南西部の重慶市の教育当局は「高考」に政治思想審査を導入するとの発表があった。まるで「文化大革命」時代を想起させるような出来事は大きな波紋を呼んだ。

 11月6日、重慶の地元メディアに「高考」の出願資格に関する方法が掲載されたが、そこには「政審(政治思想審査)」という言葉が記載されていた。つまり、大学を受験するには思想調査に合格しなければならないということだ。

 「政審」という用語は、文化大革命の際、調査対象(その家族や親族含む)が中国共産党のイデオロギーと一致しているかどうかを調べる調査を指す用語であった。本人またはその家族が、共産党が適切と認める政治的思想を持っていないと判断されると、子供たちは大学に通う機会を失う仕組みになっている。

 この「重慶教育機関」による発表は、文革時代の残酷な迫害を想起させるとしてネットユーザーたちは騒然となった。こうした手法は近年、宗教や信条を曲げない者に対する迫害の一環としても実施されてきた。

 あるネットユーザーは、「党を愛していなければ教育の権利が剥奪される。私たちには権利というものが一切無いというのか?」と書き込んだ

 それから数日後の11月9日、福建省の教育当局も「イデオロギー、政治、道徳的性格評価」が事前審査の対象になると学生に公表していたことが判明した。

 福建省側によれば、「中国憲法の基本原則に反する思想を有し、または実際に行動を起こした者、あるいは異端宗教の活動に参加した者、その他深刻な状況を抱える者は『高考』の受験を許可されない」との内容を通知したという。

 一方の重慶市教育当局は、11月8日、声明文は失敗だったと認め「誤った言葉を選んだ」と釈明した。また、これは思想調査ではなく、学生の日常的な評価を参考にすることを意味すると述べた。しかし、中国の時事週刊誌とのインタビューで、重慶市側は自身の過失を否定し、地元のジャーナリストによる誤った解釈をメディアが報道したのだと釈明した。

 しかしこれらの報道と前後して、あるネットユーザーが投稿した実際の願書の写真が大きな反響を呼んだ。なんと願書には公式に「政審フォーム」というタイトルが付けられていたのだ。

暗黒の歴史

 多くの中国の知識人は、「政審」がいまだに一般的に行われていると考えている。

 「1990年代、中国共産党政権は『政審』を多少緩和したが、廃止はしなかった。のちに共産党政権が気功集団の『法輪功』を迫害し始めたのと同時期に、学生に対する『政審』も復活・強化された」と、評論家の横河氏は指摘する。

 中国語新聞・大紀元の独自調査によると、中国教育部は過去20年間にわたって「高考」受験生に対して「イデオロギー、政治、道徳的性格評価」を求めてきたことが明らかになった。これまで、こうした調査は一般的ではなかった。

 1999年7月に中国共産党総書記江沢民が法輪功の迫害を開始して以来、「高考」には「異端の宗教団体」は参加できないという条項が含まれるようになった。

法輪功とは真・善・忍を提唱する修煉方法である。1990年代後半には7,000万〜1億人の学習者を擁するようになったが、共産主義の思想に合致しないとみなされ、江沢民は法輪功を迫害する決定を下した。

注:
文化大革命:文化大革命(ぶんかだいかくめい)は、中華人民共和国で1966年から1976年まで続き、1977年に終結宣言がなされた毛沢東主導による革命運動である。全称は無産階級文化大革命、略称は文革(ぶんかく)。(ウィキペディア)

政审(政審)
(略語) ‘政治审查’;(共産党・軍隊・大学・国家機関などの組織が入党・入隊・入学・幹部採用に当たって個人の経歴・社会関係・政治態度などについて行なう)政治的審査。

(翻訳・今野秀樹)