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 米国の貿易業界をカバーするオンラインニュースサイト「インサイドUSトレード」は11月8日付の報道において、米国通商代表部(The Office of the U.S. Trade Representative, USTR)は中国に対する貿易制裁の一環として、同国の労働慣行に対し調査権限の発動を検討していると報じた。

 USTRは以前もスーパー301条項を発動し中国による知的財産権侵害を調査した。この結果を受け、トランプ政権は今年初め頃、中国からの輸入品総額2,500億ドル相当に対して懲罰的関税を科すよう促した。そしてUSTRは中国の労働慣行に関し、新たに301条項の発動を検討しているという。

 米国の中間選挙の結果を受け、ある関係者は「インサイドUSトレード」に対し次のように語っている。
「USTR所属で共和党議員のボブ・ライトハイザー(Bob Lighthizer)氏は、下院で民主党が多数派になった今こそ、貿易業界からの支援を得るために画期的な政策を打ちたいと考えているようだ」

 米国最大の労働組合コンソーシアムである米国労働協議会(AFL-CIO)は、2004年と2006年、USTRに対し中国が労働者の権利を侵害して不公平な貿易優位を獲得したかどうかを調査するよう申請を提出した。しかし当時、USTRはこの申立てを拒否している。

 2004年と異なり、近年の米国は世界各国の労働慣行に焦点を当てた協定の締結を進めている。最近ではカナダとメキシコを相手とした貿易協定(「米国 – メキシコ – カナダ合意」、又はUSMCAとも呼ばれる)でも同様の流れがみられる。こうした協定の締結こそが、不公正な貿易慣行を是正するための米国政府の新戦術であると考えられている。

 例えば北米自由貿易協定(NAFTA)においては、仮にNAFTA加盟国が中国と自由貿易協定を締結した場合、残りの加盟国は6カ月以内にNAFTAを解散させ、互いに二国間の貿易協定を結ぶことができる条項が含まれている。

 アメリカンエンタープライズ研究所の中国専門家デレク・シザーズ氏は、ロイター通信とのインタビューで「トランプ政権にとって、こうした規定はカナダやメキシコが中国と貿易協定を締結することに対する効果的な拒否権になるだろう」と説明した。

 米国は同様の協定をEUや日本との間でも締結することによって、世界貿易体制から中国の排除を目指しているとの指摘もなされている。

(翻訳・今野秀樹)