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 「オーストラリア、アメリカ西部、南米西部、あるいは東南アジアの一部地域で、約14分間完全に覆い隠されたスーパー月食を見ることができます」
これは、インドのニューデリーに拠点を置く「ジー・ニュース(Zeenews)」というニュースサイトの3月の記事です。見出しは『2021年皆既月食(かいきげっしょく):3月26日のチャンドラ・グラハン(Chandra Grahan)、インドの”ブラッドムーン”の時刻についての調査』となっています。

 それから間もなく、今年のパンデミックを昨年予言していたインドの神童、アビギャ・アナンド氏は3月21日、この報道について非常に短い動画で、皆既月食の時間が3月26日というのは間違いだと指摘しました。「誤入力の可能性があり、すぐに修正してほしい。正しい時刻は5月26日で、同日に皆既月食についての動画を投稿する予定だ」」と述べました。

 3月25日、「ジー・ニュース」の編集者は、上記記事に書かれた皆既月食の日付を、3月26日から5月26日に修正しました。

 アナンド氏がわざわざ「皆既月食の時間を指摘する」動画を出したのはなぜでしょうか。なぜこの皆既月食の時間がこれほど重要なのか、そしてアナンド氏はなぜ重要視しているのでしょうか?

一、「ブラッドムーン」の噂

 「ジー・ニュース」が時刻を修正してからわずか4日後の3月30日、台湾メディアの「新頭殼(英語:Newtalk)」は、「昨夜(3月29日)、台北の多くの人々がブラッドムーンを目撃した。『月の色が変われば災いが起こる』という古からの言い伝えがあることから、多くの人は大災害の予兆だと心配しており、中央気象局、気象学者の彭啓明(ほうけいめい)氏はブラッドムーンを解説した」と報じました。
台湾気象局は、ブラッドムーンは地球の影が完全に月にかかるときに起こる現象で、災害とは関係ないとしています。また、彭氏はフェイスブックで、「ブラッドムーンは非常に一般的な天文現象であり、昨晩の晴天と、汚染物質の西半分が北に流れていくこと、北側での三重散乱現象が相まって、夜の月が赤く見えたのだ」と説明しました。

 台湾気象局や気象学者が「ブラッドムーン」は普通の天文現象だと説明していましたが、その後大惨事が台湾で起こりました。
4月2日、台湾花蓮の太魯閣(タロコ)電車が脱線し、多くの死傷者が出てしまいました。

 また、台湾聯合ニュース4月13日の報道によると、台湾は半世紀ぶりの大干ばつに見舞われます。

 2021年は、52年ぶりに台湾の降水量が最も少ない年であり、西部の5つ県や市では、貯水率は記録的に減少し、日月潭の水位は最低値を下回り続けています。100年間底を見せたことがなかった有名な観光地「赤山龍湖岩」も今年初めて干ばつに直面しており、台湾は水不足の危機に陥ってしまいました。
さらに不思議なのは、台湾メディアの報道によると、台湾はすでに2021年の元旦に「ブラッドムーン」現象が現れていたというのです。

 2021年1月1日午後8時頃、嘉義市のあるネットユーザーが、フェイスブックのコミュニティグループで、秀泰影城(ショータイム・シネマズ)の横で撮影した「2021年初のブラッドムーン」の写真を公開しました。

 当時、嘉義市は天気がよく、夜空に大きくて丸い、いつもと違った暗赤色の月がはっきりと見えました。 その後、高雄や台南の台湾人も相次いでブラッドムーンの写真をネットに投稿しました。新年ブラッドムーンのニュースは瞬く間に台湾中に広まりました。

 また、「ブラッドムーンは大気汚染による自然現象」という意見もありましたが、「ブラッドムーンは素敵だ」「ブラッドムーンの話は聞いたことがあるが、見たことがないので自分の目で見てみたい」というネットユーザーも多くいました。そして、何か悪いことが起こるのではないかと心配する人も増えています。何しろ、古代の東西文化では、ブラッドムーンは悪い前兆なのです。

二、科学者から見た 「ブラッドムーン」

 科学者は、ブラッドムーンは月食の一種に過ぎず、月食は地球の気候と生態環境に影響を与える天体運動の法則の表れに過ぎないと見ています。

 月食は、地球が太陽と月の間を通過するときに起こる現象です。地球が太陽と月の間に入ったとき、3つの惑星は一直線上に並び、太陽と月は地球に隔てられ、月は太陽の光を地球に反射できなくなるのです。

 しかし、地球が太陽からの光を遮っても、月が完全に暗くなるわけではありません。これは、太陽光が地球の大気によって散乱され、赤い光のみ大気を通過することで、月が暗赤色に見えるわけです。つまり、太陽光が地球の大気によって屈折し、月を照らしています。そのため、赤い月を見ることができます。
皆既月食はブラッドムーンと呼ばれることもありますが、月食の色が必ずしも赤いわけではありません。月の軌道は楕円形であるため、ブラッドムーンの色は3つの惑星の配置や地球と月の距離によって異なり、赤、オレンジ、銅、黄色などに見えることがあるというのです

 ブラッドムーンは通常、皆既月食の時に見られます。これは、厚い大気が紫、青、緑、黄色の光を吸収し、赤の光だけが透過できるためです。皆既月食の赤い月も同じく、大気が赤い光を月面で屈折させたために起こるものです。

 科学者たちがブラッドムーンについて自然現象だと説明していますが、皆既月食やブラッドムーンはスペクタクルであることを認めています。しかし、彼らが説明できないのは、自然法則そのものが何であるかということです。

三、「ブラッドムーン」にまつわる伝説

 科学者の「ブラッドムーン」における説明はどうであれ、「ブラッドムーン」は、古来、東西の文明や宗教、民間伝説において、災害や戦争の予兆と捉えられてきました。

 古代中国では、『唐開元占経巻第十七』欽定四庫全集に、「月食で月が青で憂となす、赤で兵となす。 黄で財産となす。 白で喪となす。黒で、水となす」と記載されています。その意味は、月食の時に月の色が変わってしまうと災害が起きるということです。青色ならば飢饉、赤ならば戦争、黄ならば財産の喪失、白ならば干ばつと死亡、黒ならば疫病と洪水を意味します。ここでいう赤というのはブラッドムーンを指しており、戦争や反乱などの災いが起こることを意味します。

 『唐開元占経巻第十七』にある『帝覧嬉』には、「月蝕は上より始まり、これを失道と言い、国君に当たる。下より始まり、これを失法と言い、将軍に当たる。傍より始まり、これを失令と言い、宰相に当たる。」と書いてあります。つまり、月食が上から始まると、国の支配者が道を踏み外し、徳が地位に見合わなくなり、国を失う、下から始まると、国が法治を失い、反乱が起こる、横から始まると、気候が乱れ、天災が起こる、という意味です。

 民間伝説では、ブラッドムーンが現れると、国が衰え、正気が低下し、まるで地獄に堕ちる状態になるとのことです。ブラッドムーンに関する言い伝えは、歴史記録からして、まったく根拠がないわけではありません。

 西暦498年、南北朝時代の永泰元年4月にブラッドムーンが現れ、これが中国で記録された最も古い皆既月食です。その4日後、大書記であった王敬(おうけい)は反乱を企てていました。これは「月が赤くなればら兵となす」という説を実証しました。

 西暦1644年4月24日(明の崇禎17年)にもブラッドムーンが現れました。同日の夜、李自成が軍を率いて北京を突破しました。崇禎帝(すうていてい)は景山(けいざん)の曲がった木で首を吊り、明朝は滅亡しました。

 1863年5月23日にも、ブラッドムーンが現れました。当時の洪秀全(こう しゅうぜん)政権は危機に瀕していました。1900年5月15日にブラッドムーンが現れた頃には、庚子の国難が起きていました。

 日本では、2011年3月の地震の前にも、「スーパーピンクムーン」が現れていました。

 仏教の経典である『仁王護国般若波羅蜜多経』にも、ブラッドムーンのことが書かれています。釈迦牟尼はペルセポネ王に、閻浮提(えんぶだい)の七難について話しました。閻浮提はつまり地球を指しています。ペルシャ王は、七難について尋ねました。釈迦牟尼仏がお話になった最初の難は、ブラッドムーンでした。その時、釈迦牟尼仏の教えを聞いた16人の王様たちは、みんなとても怖くなりました。ペルシャ王は「なぜ天地にこのような災難がありますか」と聞きました。

 釈迦牟尼仏は「閻浮提大陸(地球)にある大、小国の人々は皆、親を恩義を感じず、教師に無礼な態度をとり、沙門、バラモン、国王、大臣は正法を実践せず、諸悪により、このような災難が起こる」と答えました。

 佛が当時言っていたことが、今日になっても当てはまるような気がします。

 西洋の聖書に出てくるブラッドムーンの記述は、「終末の大審判」と「終末の災難」に関連しているようです。聖書の第2章20節に「太陽は闇に変わり、月は血に変わる」と書かれています。

四、不吉な2021年

 2021年には3回のスーパームーンがあります。それぞれ、4月27日、5月26日、6月24日となっています。

 今回の5月26日は、アナンド氏の最新の動画でも紹介されており、とても特別な日になるでしょう。

 その理由はまず、この日にスーパームーンが形成されることです。月は地球に最も接近し、その距離はわずか35万7311mです。そのため、月は「スーパームーン」と呼ばれ、通常の満月よりもずっと大きく明るく見えます。

 次に、皆既月食の発生です。同日夜のスーパームーンに加え、19時14分には太陽と地球と月が一直線に並ぶ皆既月食が発生し、オセアニア、北米、南米、東アジアで見ることができます。ニュージーランドで、皆既月食の過程を観察することができます。

 最後に、スーパー・ブラッドムーンが現れることです。今年最大の満月が形成される19時14分には、「ブラッドムーン」も現れます。月が赤錆色に染まる「スーパー・ブラッドムーン」の光景が見られることです。

 古くから 「ブラッドムーン」は、邪悪や災いを象徴する不吉なサインとされてきました。このことから、イギリスの有名な超能力予言者クレイグ・ハミルトン・パーカー氏の2021年の予言を改めて思い出しました。彼は2021年の世界は、混乱、武力衝突、政治的変化に満ちており、それが2025年まで続くと予測しました。

 科学者たちが説明する「ブラッドムーン」の自然法則と、釈迦牟尼仏の「諸悪により、このような災難が起こる」という言葉との間には因果関係があるか、私たちにはわからないだけなのでしょうか。5月26日のスーパー・ブラッドムーンについては、アナンド氏の解説を楽しみにしています。