(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 カナダのティム・ドゥーセット(Tim Doucette)さんは、法的に盲目な人であり、両目の視力は健常者の10分の1しかありません。しかし、彼はアマチュア天文家であるのです。彼の視力は普通の人ほどではありませんが、夜になると私たちには見えない夜の美しさを見ることができます。

 出生時に先天性白内障と診断されたティムさんは、ほぼ何も見ることができませんでした。視力を向上させるために、幼い頃に目の手術を受け、水晶体の一部を除去して瞳孔を拡張させました。手術を受けたにもかかわらず、ティムさんは相変わらず法的に盲目で、両目とも通常の10分の1の視力しか持っていません。しかも手術の副作用により、彼は何を見ても眩しいと感じるのです。

 瞳孔は通常であれば、両眼で受ける光の強さに応じて自動的に拡張したり縮んだりします。しかし、手術後のティムさんの瞳孔は永久的に拡張された状態にあり、目に入ってくる光の量を調整できないのです。

 日中、ティムさんが見るものはすべてあまりに明るすぎて、目を守るためにメガネをかけても同じでした。しかし、夜になると、すべてが違ってきます。

 ティムさんは最初に目の包帯を外した時にこの奇妙な現象に気づいたといいます。家の裏庭で横になったまま空を見上げると、キラキラと光る白い点がたくさん見えました。最初は飛蚊症かと疑いましたが、しばらくすると、夜に見た白い点々が、実は無数のきらめく星であることに気づきました。

 ティムさんの瞳孔は常に拡張しており、通常よりもはるかに光の感度が高いことが判明しました。カメラを例えにすると、他人の目のISO(光感度)は400ですが、彼のISOは6400にも上ります。

 だからこそ、彼の目に映る星空は、他の人よりも美しくなります。一般の人には望遠鏡で見たオリオン座大星雲はぼんやりとした白い雲にしか見えませんが、ティムさんは高度な機器の助けを借りずに、オリオン星雲を囲むラベンダー色の光を見ることができました。

 そこでティムさんは、幼い頃からの夢を叶えるために、永年の貯金を使ってカナダのノバスコシア州ヤーマス郡に天文観測所を建設して天体観測に没頭しました。その願いが叶った今、彼は天文台を開放し、興味のある人は誰でも星空を楽しめるようになっています。これは、「神扉閉じ給う時、窓開け給う」ということわざの証でもあります。

(翻訳・玉竹)