火焔山の一部。高さ500メートル、長さ98キロメートルの丘陵である(ウィキペディア、CC BY-SA 2.5 es

 新疆ウィグル自治区トルファン市にある有名な観光スポット火焔山(かえんざん)は中国では最も暑い場所と呼ばれている。先日、火焔山の地表温度が83℃を記録し、まさに文字通り「火焔山」となった。

 中国四大奇書の1つである「西遊記」には、三蔵法師一行が西へ向かう途中に火焔山を経由し、燃え盛る炎に行く手を遮られる話がある。火を消すことができる芭蕉扇を求めるため、悟空は牛魔王の妻羅刹女(鉄扇公主)と戦った話は有名だ。実は、火焔山は単なる小説の中に登場する架空の地名ではなく、新疆トルファン盆地の北中央部に位置する実在の場所であり、古代では「赤石山」と呼ばれていた。天山山脈の東部・ボグダ山中には、鄯善県闌幹(ぜんぜんけん・らんかん)の流砂川からトルファン桃児溝(とうあるごう)まで伸びる長さ約100キロメートル、幅約9キロメートル、高さ500メートルの褶曲山脈があり、ゴビ砂漠の中で燃え上がっている炎の屏風のようだ。これが伝説の火焔山の名前の由来である。

 火焔山はウィグル語では「クズロダゴ」といい、「赤い山」という意味だ。唐王朝時代ではその暑さから「火山」の名を付けられていた。火焔山は不毛の地であり、飛鳥の跡も見えない。真夏になると赤褐色の山脈が強い日差しにさらされ、砂岩が光を反射し、熱風が巻き起こる。それはまるで燃え盛る炎のように空高くまで吹き上げていることから、「火焔山」とも呼ばれる。

 現在、火焔山は人気のある観光スポットとなり、エリア内には金箍棒(きんこぼう)を模した温度計を設置されている。この高さ12メートル、直径65センチの巨大な温度計は地表温度を正確に測定でき、100℃以内であれば、測定誤差は±0.5℃以下となる。

 6月25日、「金箍棒」が今年の最高地表温度となる83℃を観測した。地元観光管理局の副局長は、「去年、金箍棒の観測した最高温度は7月11日の89℃だった。今年6月に入ってから、金箍棒での表示温度は80℃を3回超えた。7月になると、地表温度はきっと去年の記録を超えるだろう」と述べた。

 火焔山の高温は恐ろしいが、「砂穴焼き卵」が大人気となった。火焔山ならではの「砂穴焼き卵」は鉄鍋をゴビ砂漠の砂穴に置き、生卵を1つ1つ並べて鍋に入れ、蓋をかぶせ、熱い砂で蒸し焼きにする。

 83℃の地表温度により所要時間はたったの10分程度。おまけに焼き色付きで見るからにおいしそう。卵黄は8割熟でトロッとした食感が楽しめ、観光客からの評判も上々のようだ

(翻訳・清水小桐)