「牡丹」清・惲 寿平(うん じゅへい、1633-1690)(イメージ:パブリック・ドメイン)

 世の中には因果応報の法則が存在し、その結果は過去世の原因によって左右されます。人は生まれ変わる中で、異なる役を演じて、そこから恩讐が交錯して、異なる縁を結びました。知らないうちに結ばれた悪縁は、どう解けばいいのでしょうか?

 僧侶が夢の中に現れ、告知して前世の恩讐を解決する物語

 宋の時代、湖州安吉県には、お経を唱えて20年の沈二公という人がいました。

 金軍が安吉県を攻撃する前に、沈二公は僧侶の夢を見ました、「お前は前世で人を殺して罪を犯したため、その報いがまもなく来ます。家族全員が他の場所に避難することはできますが、あなただけは家にいなければなりません。もし背の高い男が剣を持って家に侵入してきたら、怖がらず『燕山府の李立さんですか』と尋ねてご覧なさい。そして、首を伸ばして、相手に剣で斬り殺させるのです。彼が君を殺せば、あなたに対する彼の昔からの恨みは晴れることでしょう。」

 数日後、金軍がやって来て、沈氏の家族はみな遠くの山に避難しました。沈二公は一人で家にいたのですが、確かに夢の中で僧侶が言ったような光景が現れました。沈二公は僧侶の言ったとおり彼の名前を尋ねたのです。するとその人は剣を収めて尋ねました。「なぜ私の名前と出身地をそんなに詳しく知っているのか」。沈二公は、彼が夢の中で見たことを話しました。

 李立がため息をついて振り返ると、机の上にお経が置いてあるのが見えました。そして沈二公が20年も読経していたことを知りました。李立は経典の巻物を常に持っており、彼もよく読経していたのです。

 唐の時代の恩讐を、宋の時に解いた物語

 宋の時代、臨安には張という名の公子がいて、ある寺院を訪れた際、朽ち果てた部屋の中に手足のない古い仏像を発見しました。張公子は仏像を家に持ち帰り、恭しく供養しました。

 1年以上経ってから、この仏像はしばしば響きを発し始めました。吉凶や禍福をすべて事前に告知してくれたのです。このようにして二、三十年が過ぎました。

 南宋の建炎年間、金軍が臨安を侵攻してきたとき、張公子は涸れ井戸に避難しました。

 その時、夢のようで夢でない状態で、彼が供養していた仏像が別れを告げに来て、こう言ったのです。あなたに災害が起こり、必ず死にます。私もあなたを救うことはできません。この悪縁は、あなたの前世がもたらしたものです。あなたは唐の時代に「黄巣の乱(唐末の875年に起こった)」の時に人を殺したから、その人は生まれ変わり、丁小大という名で、明日ここに来て、お前を殺して復讐するつもりなのです。それを聞いて張公子は怯えてしまいました。

 翌日、確かに一人の男が突槍を持って涸れ井戸の前に来て、張公子に「出て来い」と叫びました。張公子が上がっていくと、その人は勢いをつけて彼を殺そうとしました。張公子は「あなたは丁小大ですか」と急に叫びました。その人はびっくりして、「なぜ私の名前を知っているのか」と聞きました。

 そして、張公子は仏像が告知した話をすべて語りました。それを聞いた丁小大は茫然として、武器を地面に投げつけて、「恩讐は晴すことができますが、結んではなりません。 あなたは過去に私を殺した、今また君を殺せば、来世にまた君が私を殺さなければならなくなる。このようにな恩讐は、いつになっても終わりがない。今日はあなたを逃がしてあげます。しかし、ここに残っていれば、必ず後の騎兵に殺されます。私と一緒に行った方がいいでしょう」

 丁小大は、危機を乗り切るため数日間一緒に過ごしてから、張公子を帰らせたのです。

(翻訳・林華)