抗議活動中のモンゴル族の学生と保護者たち(ツイッター動画のスクリーンショット)

 近日、中国政府が内モンゴル自治区で推進したモンゴル語を中国語に置き換える教育政策が、反発を招いている。モンゴルの高校生らがハンガーストライキを行い、モンゴル人の民族権利を尊重して母語を維持するよう中国政府に求める学者もいるが、当局は「海外勢力による扇動」と決めつけた。

「モンゴルを愛する」文言の削除

 内モンゴル自治区の小中学生の新学期が9月1日に始まり、教育省は新学年に「バイリンガル教育」を導入し、中国語の授業内容を大幅に増やした。さらに、ラジオ・フリー・アジアによると、新しいモンゴル語の教科書には、モンゴル族の故郷、文化と母語に対する愛を表現した詩文の一部分が削除され、漢字を加えたという。これに対し、地元のモンゴル族の不満を引き起こし、モンゴル語の消滅を危惧して、大規模な抗議が発生した。

 通遼市の牧畜民によると、大多数の親が新しい教育政策にボイコットし、子供を学校に送らず、モンゴル族の学校が空っぽになっているという。ヒンガン(興安)盟やウランホト市などでは、地元警察がモンゴル族の学生を追い詰め、学校への復帰を強要している。

 最近、一部の地方政府は各郷・鎮に緊急通達を出し、9月2日の夕方までに子供を学校に連れてくるようモンゴル族の公務員に命じ、9月3日の正午までに学校に報告しなかった者は退学処分にするとしている。

 在日モンゴル人学者のクビス氏は、現在モンゴル族の高校生は、小学校一年生からのモンゴル語教育を中国語に置き換えることにハンガーストライキで抗議していることを明らかにした。内モンゴルラジオ局のモンゴル人スタッフ300人以上が新中国語教育政策に反対する集団抗議文に署名していた。

規制がエスカレート

 最近、大量の装甲車が連日のように市街地をパトロールしており、政府は抗議者を「海外勢力の扇動を受けた」と決めている。

 モンゴル族の牧畜民によると、9月2日以降、多くの道路が封鎖され、保護者と教師の連絡が切断され、保護者と警察の衝突が報告されているという。 また、WeChatではモンゴル語のグループ名が閉鎖され、保護者と先生の間はコミュニケーションが取れず、通話も禁止され、ツイッターでつぶやくすらできない。9月2日には、外地の警察が内モンゴル自治区に進駐し、通遼市では2人が「挑発行為」という罪で逮捕された。

 科左後旗警察署が9月2日に出した通達によると、9人の関係者に出頭を求めている。警察は上記9人が8月28日から30日まで、科左後旗の小中学校で不法に集まっていたという。

学者らは中国共産党のモンゴル語の扼殺(やくさつ)に抗議

 内モンゴル自治区での大規模な抗議行動に対して、ツァヒア・エルベグドルジ元モンゴル国大統領は声明を発表した。中国政府に対し、モンゴル人の母語を維持する民族権利を尊重するよう促し、世界中のモンゴル人に連携を呼びかけた。モンゴル語がなければモンゴル民族を語れない、言葉を失うことは頭と手を失うようなものだと強調した。

 モンゴル国の学者ケムグ氏は、3日にモンゴル国の首都ウランバートルで学者のグループが集まり、中国政府のモンゴル語への締め付けに抗議し、当局に小学1年生からのモンゴル語教育の再開を要求したという。

(看中国記者・黎小葵/翻訳・藍彧)