15年ガイドをしている王氏(仮名)が語ったインバウンド市場の真相

中国旅行業界の違法システム~日本国内にも流入
ガイド歴15年の王氏(仮名)が語ったインバウンド市場の真相

4種類のツアーの形態

王氏:中国からの団体旅行(ツアー)はおおむね下記の4種類に分けられます。

① 公務:共産党の官僚ツアー
② 商務:企業、展示会などのために組まれたビジネスツアー
③ 学生旅行:教育機関によるツアー
④ 一般:民間人のツアー

習近平政権が不正の取締りを厳しくした5年ほど前から、公務、次に商務のツアーが減少したため、現在では④のツアーが最も多くなっています。

ガイドは完全歩合制

王氏:在日中国人ガイドのほとんどがフリーです。④の場合、旅行会社から無料でツアーガイドを請け負います(「ツアー買う」とも言われる)。固定給のような決められた給料はありません。ですから、諸経費(交通費・宿泊費)は自己負担になります。

指定された免税店にガイドは旅行者を連れて行きます。

免税店での購入の際には、パスポート番号を記録するため、個人の購入履歴が保存されます。その記録をもとに、購入金額の数パーセントから最大で20パーセントがガイドへ割り戻されます。

記者:完全歩合制の場合、労働基準法(第27条)に抵触しますが、労働契約はどのようになっているのでしょうか。また、所得税などの税金の支払いはどうなっているのでしょうか。

王氏:書面による契約書はありません。源泉徴収はされていないと思います。

記者:ガイドは資格を持っているのでしょうか。

王氏:在日であったとしても中国人には遵法精神が欠けています。資格を持っていなくても自分ができると思えばやるのです。

「通訳案内士登録証を持たずに、外国人に付き添い、外国語を用いて、報酬を得て旅行に関する案内を行った者は、50万円以下の罰金に処する」と、通訳案内士法に規定されていますが、実際に処罰された例を耳にしたことはありません…。

ガイドは現地の該当する資格を持っている人でなければなりません。外国人が代行してしまったならば、彼らの立場や旅行協会に損失を与えることになります。このような状況は欧米のツアーでも現れています。

これに対し、台湾の旅行業界は規制を強化、旅行代金も水準を維持しています。今のところ、具体的な動きが日本では見られません。

白タクについて

王氏:ガイドがアルバイトで「白タク」を請け負うということもあります。当然ながら、緑色の営業ナンバーではありません。

記者:だれが斡旋しているのでしょうか。

王氏:中国や香港の旅行会社や日本の中国人旅行会社です。

中国系旅行会社による不当価格

記者:なぜ日本の旅行会社によるツアーが少ないのでしょうか。

王氏:免税店からの割り戻しは、旅行会社にも支払われます。例えば売上の5%を旅行会社、5%をガイドに支払うというようなシステムです。

ガイドの費用がないため、その分ツアー料金を下げることができます。このような不当な競争に日本の旅行会社は参入しないでしょう。

旅行者の行動は制限され、いかに免税店で買い物をさせるか、ということがツアーの主眼になります。「旅行会社―免税店―ガイド」というトライアングルによって、格安なツアーを組むことができるのです。

横行する賄賂

王氏:ガイドの心理は、ギャンブルをしている感覚に近いものがあります。「今回は儲からなかったが次は儲けてみせる…」という。これは本来のサービス業の姿ではないと思います。免税店に多くの時間が割かれますので、旅行者は見るべきものを見ることができません。

香港では、上客のツアー(富裕層が対象)を獲得するため、100万円もの賄賂を旅行会社の関係者に支払うガイドもいます。賄賂を渡さなければ上客を回してはもらえないのです。

中国国内では、他国のガイドも同じ方法をとっていると教えられてきました。このような手法が他の業界にも見られます。

中国人の消費が減った背景

王氏:かつて95%が団体旅行でしたが、現在は30%未満(観光庁統計)となりました。これは日本政府が観光ビザを緩和したことよってもたらされたものだと思います。個人旅行が大幅に増えたことで、免税店は収益が悪化し相次いで閉店しています。

観光庁の2016年の発表によると、中国の1人当たりの旅行支出が対前年比18%と減少し、調査対象国中最大の減少幅となりました。

記者:なぜ中国人の消費が減ったのでしょうか。

王氏:例えば免税店での購入額は年々減っていますが、富裕層の購買意欲が低下した訳ではなく、依然として意欲はあるのです。すでに一通り日本製品を購入、次に何を買うのが良いのかがわからない――という状況の現れであると思います。

不当な競争をする中国系旅行会社の影響が弱まれば、免税店に客を取られていた日本の企業にもチャンスが訪れると思います。しかし、中国人独特の心理や情勢を理解する必要があるでしょう。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」孫氏兵法

看中国では、このような不透明で悪質な市場に日本企業が巻き込まれることなく、インバウンド事業を成功していただくため、日本でインバウンドマーケティング事業部を設置いたしました。様々な角度から中国人の心理を分析し、企業の皆様にアドバイスを行っております。

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