5月28日、マレーシアのマハティール首相は高速鉄道の建設に巨額の費用がかかる上、自国に利益がもたらされないと見て、電撃的に建設中止を表明した。このことによりマレーシア政府は、シンガポール政府に1.2億ドルの違約金を支払わなければならない。

マレーシアの首都クアラルンプールとシンガポール間の約350キロを(シンガポール側は15キロ)時速300キロで走る高速鉄道計画は、ナジブ前政権下で決定、進められてきた。

同日、マレーシア警察はナジブ前首相の家宅を捜査し、約72箱の現金(3000万ドル)、ジュエリー、時計、284箱に上る女性用のブランドカバン(20万ドル相当)を押収した。ナジブ前首相は中国主導の鉄道計画の中で、違法性のある不透明な受注契約に手を染めている疑惑が持たれている。

新しく任命された財務大臣・林冠英氏は国民に「前任のナジブ政府は国民を騙し、マレーシアの負債金額は約2.9兆円の巨額負債となった」と国民に宣告した。
マハティール首相は、「総工費1500億円は、融資を行う中国輸出入銀行から中国交通建設(CCCC)に直接支払われ、中国への債務額は約2700億円に膨れ上がった」と憤慨した。

この驚くべき事実はマレーシア国民を震撼させた。マハティール首相は、「これ以上マレーシアを中国に身売りできない」と中国主導の投資案件を全面的に見直す方針だ。

マハティール首相は、中国の大手不動産企業・碧桂圓がマレーシアの重要な港街ジョホールバルに「森林都市」を作ったが、高価なため現地の富裕層にも手が届かず、大量の外国人が「森林都市」に入ったことを批判した。

中国政府の貸付は地元の支持を得られることはなく、かえって反感を買うこととなった。マレーシア政府の負債額の急増に対し、自国の主権と独立性を失うのではないかと懸念されている。

マレーシア政府が高速鉄道プロジェクトを中止したため中国政府の投資計画は水の泡に帰し、数千万ドルの損失を計上したと見られている。これは中国の海外拡張戦略における挫折となった。

また、中国政府からの投資とそれに伴う借り入れにより中央アジア地域の国々が厳しい債務状況に直面している。キルギスは現在、中国からの貸付金と関係する汚職について調査している。

(原 光寛)